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些稚絃羽

星は叶えぬ君の声

君の願いをすべて叶えるには
見える星の数は少なすぎて
あの内の幾つが流れるのだろう
その時を待ってはいられない


整えられた白いベッドが
気づけば君の特等席
週に一回  木曜日
君と僕の約束の時間

晴れたなら悲しくて
雨であれば嬉しくて
君の表情かおと空模様は
まるで反発する磁石だね
街に色が増えるから、って
使わなくなった傘に思いを馳せる
その横顔が妙に切ない


突然  会えなくなる
たった一枚  扉の前で
くぐもる君の声を聞いた
ベッドに咳を隠すこと
本当はずっと知ってたよ
ほら  また会話が途切れる

一度でも手を伸ばして
抱き締めなかったこと  後悔してる
小さく笑う声を聞きながら
触れた扉は冷たかった
今すぐ君に触れたいよ

何でも半分こにして分け合ってきたのに
どうして時間だけは分け合えないのだろう
短くていいのに
永くは求めないのに
ただ微笑む時間の先で
共に消えられたらいいのに

君の願いを聞いてあげる
何でも叶えてみせるから
今の僕なら何だって
叶えられる自信があるよ
きっと数知れずあるはずなのに
ひとつだけ、って君が言う


泣かないで、泣かないでね
わたしを思って、泣いたりしないでね


絶対叶える、って答えた声が
声にならずに吐息に変わる
絶対泣かないから  今だけは
今だけは泣いてもいいかな
流れる雫はあまりに熱くて
この温度を分けてあげたかった


僕はいつも少しだけ
タイミングを間違える


君の願いを叶えるには
見える星の数は関係なくて
三回唱えるよりも難しい
だから今日も君の特等席で
薄れる君の香りを抱いて
流れない星を眺めてる
     

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