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些稚絃羽

咲き誇れ、君よ

秋の風と夕暮れの色が混じる頃
庭の片隅 控えめに立つ金木犀
開いた窓から香るから
今日の君の幸を願う


舌の上で転がしては噛み砕いた類の文字が
その笑みに触れる度 甘く苦い蜜になる
いっそ背を向けてと理不尽な願い
呼び止められずに儚く散って

手を繋いだ帰り道 
小さく柔い感触が 今もまだ残ってる 
君の手の中にもあるそれは
上書きされてしまったけれど

愛だの恋だの唱えても 所詮届かぬ想いだって
それでも止められないのは
理屈なんかじゃないからだ
心が震えてしまったから


秋の色と夕暮れの風が混じる頃
庭の片隅 背を伸ばす金木犀
閉じた窓に隠れるから
明日の君の幸を祈る

 

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