Opening Is Empty

些稚絃羽

虹を見ていた

ぼくらは虹を見ていた
降り続く雨粒の中に
波紋する水たまりの中に
誰にも優しい虹のある景色を
きっと見ていたんだよ

ぼくもきみも泥まみれで
壊れた傘は捨ててきて
びしょ濡れなんて構わずに
公園まで走ったね

きみは擦りむいた膝が痛かったし
ぼくはぶたれた肩が痛かったけれど
きみがありがとうって言ったから
痛いのなんか飛んでったよ

笑われても貶されても
ぼくはきみの手を放したくなくて
他の誰かがみんないなくなっても
本当の独りにはならないから
だからぼくはきみのそばを
離れたりはしないんだ

すべり台の下でふたり 雨やどり
遠くの空を見上げてた

雨は少し寂しいけれど
ふたりだから寂しくないね
太陽も青空も見えないけれど
ぼくらは見えない虹を見ていた
泣かなかったぼくらを褒めるような
優しい虹をきっと見ていた
ぼくらはずっと手を繋いでいた

  

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