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些稚絃羽

旅人よ

目が覚めて途端に俯いたのは
始まった今日への溜息?
それとも鏡に映る隈のせい?
カルキ臭い水に顔を浸して
逆流する熱が証明なら
生きるとはなんて容易いことだ

気怠い身体を引きずって
低い段差につまづいて
空を見上げることも忘れて
降りだした雨が頬濡らすのも
かけられた泥の前では意味もない

長い前髪の隙間から
誰かの笑う唇を追う
未練がましく目を逸らせずに
応えるための唇をつくる
使わないまま今日が終わる

変わりたい、変われないと泣いた夜が
遠ざかりながらも鮮明に
胸の奥を叩くのでしょう?
そうしてただ過ぎる日々に
“生きる”を問うてまた眠るのでしょう

嗚呼、どうして君は
部屋の隅に丸まって
くすむ床を見つめているの?
歩けば何処かに繋がる道も
見つめているだけでは進まないのに

旅人が持つのは少しの勇気だ
一歩踏み出す勇気があれば
積み重なるそれが旅になる

立ち上がれ、憂う旅人よ
門出には祝福の花が舞う
飛び上がれ、苦悶の若人よ
追い風が願いの地へと導くから

伏せた顔を押し上げて
その足で地面を踏み鳴らせ
曲がりなく見据える視線の先に
桃源郷が見えるだろう?

  

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