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些稚絃羽

なつのひ

日照りの縁側 そよぐ風鈴
誰かが落とした笑い声が入道雲を駆け上がる
昨日見た夢に似た
のぼせそうな夏の景色

みつの赤さ いちごの匂い
頭を走る痛みさえ風物詩だと笑ってる
いつか残した記憶に似た
ただれそうな夏の味

滴る汗が土に沈んで
乾かすような風が吹いて
伸びた草は水面に見えて
海が 見たくなった

噎せ返る車内 効かない冷房
スピーカーから零れる声を窓の外へ流してく
今飲み干した炭酸に似た
さざめくような夏の音色

海の紺碧 混じる空
丸ごとひとつであるような錯覚も等しく覚えてく
嬉しくて流す涙に似た
震えるような夏の時

軋む砂浜に足を取られて
転んだ先も痛くはなくて
波立つ音は吐息のようで
君が 恋しくなった

沸き立つような夏の日に
君が 恋しくなった

  

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