続 他称改造人間になった俺

チョーカー

屋上にて、その2

 「教師をしてると、こういうことに出くわすことは1度や2度じゃないんですよ」
 こんな表情もできるのか。何だか、俺の中にある篠川先生のイメージとかけ離れていた。
 「私は生徒が好きですからねぇ。こういうのが許せないんですよ。事故なら事故の原因が、自殺なら自殺の原因が、殺人なら犯人が」
 一度、言葉を切り、こちらを向き直して言った。
 「ゆるせないんですよ。そういうのが」あまりにも怒気を含んだ声に威圧される。
 「あなた、なにかご存知ですよね?教えれくださらないのですかね?」
 俺は知らず知らずのうちに距離を取っていた。何か篠川の雰囲気に常軌を逸するものを感じたのだ。
 「逃げたということは、何か知っていると考えていいのですね」
 ゆらり、ゆらりと普通に近づいてくる。どう判断するか迷ったが、不意に篠川の動きが変化する。
 腕の振りが素早く跳ね上がってきた。歩く時の腕を振りが、そのまま攻撃のモーションに変化して手刀が俺の顎に向かって伸びてくる。
 なんとか、上半身を反らせ回避した。
 しかし、篠川の攻撃は終わらない。そのまま、体を反転させ背を向けたまま飛び込んでくる。
 体当たり!?
 上半身を反らせ体が膠着状態に俺は、それを受けるしかない。
 体が接触した瞬間、凄まじい衝撃を腹部に受けた。体当たりが決まるタイミングに篠川の肘が腹部を襲ったのだ。想像以上のダメージに地面に片膝をつき、動きを止める。
 「へぇ、意外と鍛えてますね。普通なら悶絶だけじゃ済まないのですがね」
 俺はなんとか立ち上がり、距離を取ろうとするがうまくいかない。 それ以上に篠川が前に出るスピードが速いからだ。
 「本当に一言もしゃべらないんですね。構いません。後からゆっくりと体に聞けば良いのです」
 篠川は腕を振り上げる。俺は覚悟を決め、目を瞑る。

 ・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・

 しかし、いくら待っても何も起こらなかった。
 顔を上げると篠川は無表情のまま立っていて、やがて、ゆっくりと
 前のめりに倒れた。

 何があったのか?
 篠川の背後に少女がいた。島崎美鈴が立っていたのだ。
 どこから持ってきたのか、花瓶を手にしていた。
 たぶん、あれで背後から篠原を殴ったのだろう。
 

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