続 他称改造人間になった俺

チョーカー

序章

 校舎の屋上、月夜を背に少女が立っている。
 少女の手にしている武器はスリングショット。パチンコというゴムで玉を飛ばす玩具を同じ原理の武器だ。しかし、狩猟目的で作られたそれは、強力なゴムで小さな鉄球を飛ばすため威力は別物だ。
 一撃でも受ければ戦闘不能。いや、戦闘不能にならないでもあまりの痛みにのたうち回り次弾を避けることは不可能だろう。しかし、スリングショットは連射が効かない。初弾さえ避け、間合いを詰めれば勝てる。
 そう判断した俺は少女の周りを走りだした。彼女の僅かな動作に注目し、集中力を高める。昼間ならともかく、夜では目で見て判断するのは難しい。ほとんど、感に頼らざる得ない。
 来る・・・
 俺は止まると同時に強引に体を捻りながらしゃがみ込む。 両手が地面につき、四足獣のような格好から前に突き進む。 途中、頬に風圧を感じると耳端に鋭い痛みが走った。 弾丸が耳をかすめていったのだろう。
 勝ちを確信し、俺は少女を見る。彼女の手からスリングショットは落ちていた。
 彼女は空中に左手を振るうと、素手に見えた彼女の手から何かが伸びて行く。
 特殊警棒。 
 俺は体を急停止し、間合いを広げようと後ろに飛ぶ。 
 しかし、彼女はそれを読んでたのか、大きく踏み込み前蹴りを放ってきた。
 後ろに飛ぶ俺より、前に踏み込む彼女の方が速く、彼女の靴が俺の腹筋にめり込む。
 後ろに飛んでいたこともあり、派手に吹き飛ばされた。地面に足をつけ、着地するも前蹴りのダメージで片膝をついてしまった。彼女の前蹴りは俺のみぞうちをとらえており、呼吸ができない。
 息を吐くのも吸うのもできず、動きが止まってしまった。
 まだ幼さの残る少女と蹴りとは思えないダメージだ。 たぶん、靴の先端が鉄板でできた安全靴のようなものなのだろう。
 正直、甘く見ていた。 相手はごく普通の女子高生だったはずだ。
 ここまで苦戦するとは思いもよらなかった。

 
  

 

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