《異世界の主人公共へ》

怠惰のあるま

《最強生物vs戦闘狂》終局

俺は大鎌を軽く振るうと空間に亀裂が生じ、中から溢れ出すように赤黒いツヤを見せる手腕が飛び出した。しかし、それは不安定な状態のようにも見え、少しでも攻撃を加えればボロ炭のように崩れてしまいそうに脆いように見える。

ーー《亡者の誘い手インベーション・ゴースト》ーー

そう心の中で呟くと亡者の腕達は主を守るように四天王を囲んだ。
彼はペットを可愛がるような仕草をしていた。

「こいつらは寂しがり屋でな、お前を冥界に連れて行きたいそうだぜ?」
「.........連れて行けるのならなぁぁぁあぁぁ!!」

バッグルは大きく息を吸い込んだ。
隙を見せた獲物を刈り取るために一直線に彼の首に掴みかかろうとした......その刹那、大気を震わす咆哮が放たれた。
彼の獣のような咆哮は黒腕をいとも簡単に霧散させ、四天王は耳を塞ぐが間に合わず、超音波パルスのような声は鼓膜を破り脳を潰した。耳から血を流し、一時的に脳が壊れ四天王の意識は闇に堕ちた。
だが、相手が回復を待ってくれるわけもなく彼が意識を失っているうちにバッグルは畳み掛けるように斬撃を雨のように振るった。右腕が斬り落とされ、左肩を抉られ、右足を真っ二つに裂かれ、最後に右頭部を斬り落とされた。その光景は家畜の肉を解体している時と似ていた。
しかし、皮肉にも彼の引いてはいけないトリガーに触れてしまった。意識を取り戻した彼の顔は気が狂ったような歪んだ笑顔になり、彼の体は一秒もかからずに再生した。

「楽しぃねぇ......」
「なんだ、貴様も戦闘狂ではないか」
「あはっ!ばれた?」

頭のネジが抜けたようにトチ狂った笑い声を上げる姿は、狂気に等しい何かを感じる。脳を一度潰されることにより彼の精神は狂っていた。
その姿、まさに狂人。
その笑い声は広範囲に広がるように響き渡り下に捕まっていたバッグルの手下達は声による影響で狂ったように笑い始めた。

ーー《蝕む狂人の声パニクリズミカル》ーー

しかし、その声はバッグルに影響はしない。戦闘狂という元から狂った存在には効かないようだ。

「その声も異法か?」
「そうだよ、いい声だろ?」
「どこぞの吟遊詩人よりはいい声だ」
「お褒めに預かり光栄......です!」

大鎌を回転させながら切り裂き辺り一帯の空間を穴だらけにさせた。
しかし、今度の裂け目からは幽霊の手は現れず空中に漂っている。バッグルは不思議そうに裂け目も見ると突然、剣の刃が飛び出した。
紙一重でかわすが頬を掠ってしまい傷口が赤く染まる。

「今度は冥界の入り口じゃない、ここら一帯の空間をつなぎ合わせた。所謂、ワープホールさ」
「と言うことはだ、俺も使えるわけだよなぁ?」

ニタッと笑い裂け目に腕を突っ込もうとする彼に四天王は忠告をした。

「やめた方がいい、穴の行く先はランダムだ。どこに繋がるかは運しだーーーーー!!」

彼が言い終える前に近くを飛んでいたスキマからバッグルの手が飛び出し、胸を貫き心臓を握ろうとした彼だったが残念なことにそれがあるべき場所はポッカリと空間ができていた。
驚いたのは実際に手を突き刺した本人だった。

「なぜ......ない!?」
「ばぁか!何を見てた?俺の心臓は......これだよ!」

彼は大鎌を振り回しながら笑っていた。

「心臓ごとくりぬかれるのか......どうやって戻すというんだ?」
「だから言ったろ?秘術だってよ!!」

狂乱的に笑うと狂人は裂け目の中に入り、また出てくると違う裂け目に入った。それを何度も繰り返しバッグルを錯乱するようにワープをし続けた。
しかし、彼はものすごく冷静だった。両手に魔力を集中させ刀を抜くと、柄の結晶が炎のように煌めき刀身が焔に包まれる。
狂乱の最強生物は裂け目から飛び出し大鎌を振りかぶった。

「刈り取らせろぉぉぉ!!」
「久々だな......居合抜きは......」

四天王の大鎌が振り下ろされるが、刈り取ったのは獲物ではなく地面であった。衝撃が地面に走りコロッセオが真っ二つに割れた。
すぐさま後ろを見ると背中がガラ空きの獲物が刀を握りかがんでいた。それに気づきニヤリと笑いもう一度斬りかかる。
後ろから死神が襲いかかる中、バッグルは冷静な顔で刀を鞘にしまった。キィ...ンとしまった音が響くと異質な音が聞こえた。
その音が出た理由を知ると四天王は力無く笑い膝をついた。

「は...はは...まじか......」

なんと四天王の大鎌にヒビが入り、血が吹き出した。血は止まらず流れ続け刃が腐った肉のように血だまりの上にビチャビチャと崩れ落ちた。
大鎌が完全に崩壊すると最強生物は胸を押さえつけもがき苦しみ痙攣を始めた。だが、周りのコロッセオの石材が彼の胸に集まると傷を全て再生させた。

「あぁぁ.......苦しかった」
「何事もなく復活しやがって......腹立たしいやつだ」

機嫌が悪そうな彼を見て四天王は大きく笑った。

「いいねぇ......お前さ、今日から四天王になれよ!」
「.........はぁぁ!?何を言ってるんだ貴様わぁぁ!?俺は人間だぞぉ!!」

急に取り乱すバッグルの反応に対し、四天王は真逆の反応であった。

「魔王も人間だぞ?」
「ぐ、ぐぬぬぬ.........くっははははは!よく考えれば断る理由はないな!!いいだろう!なってやろうじゃぁぁないか!」
「そうこなくっちゃ!よろしく頼むぜ?相棒!」

今日ここに魔物の戦闘狂と人間の戦闘狂が繰り広げた狂乱の闘いは死闘の末に狂乱の友情を結んだ。
のだが.........

「さて、今回は俺の勝ちでいいな」
「.........は?負けてねえよ」
「どう考えてもお前が劣勢だったろう!」

その言葉に謎の火蓋が切った。

「あぁん!?俺は本気を出してねえよ!!」
「本気を出すと言っておったろうが!」
「なら今見せてやろうか!?」
「よかろう!見せてもらおうかぁぁ!?」

その後、数日に及んで喧嘩が続いたという。





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