《異世界の主人公共へ》

怠惰のあるま

《病を操るエルフ》



魔王の候補を見つけ即採用。とりあえず、昨日は城を建ててゆっくりと休んだ。
そして、次の日の今日は今後のことを考えている。
しかし、この状況になるのは想像していなかった。
なにが言いたいのかと言うと、誰か助けてくださいってとこかな。
魔王になった少女に懐かれて仕事ができない。
状況的には、腕に引っ付いた魔王様を引き剥がして欲しい。

「離れてくれ」
「やだ!」

優しく言っても言うことを聞いてくれない。俺は忙しいんだよ?
今回の四天王はどんな個性的なメンバーにしようかとか、どんなふざけた軍隊を作ろうかとか、いろいろと悩んでるんです。
え?ふざけてるのかって?真面目ですが何か?
それよりも、この子にはもう少し魔王という自覚だけでも持っていただきたい。
近くにいたゾンさんはただ見ているだけで一切助けてくれない。
一応部下だろ?助けてくれよ。

「懐かれてますね」
「いや助けろ」

なぜだ。なぜこんなことに理由は絶対あれだよな......
それは昨日のことだ。





△▼△






魔王を見つけた俺たちは街から少し離れたところに移動していた。
なぜかと言うと「まあ拠点でも作るか」って思ったからです。安直?好きなだけ言え。
拠点を作るために広い敷地で土が多い場所が必要だったんだよ。
それによく考えてみて、人間の街に近い魔王城って...もはやなんですか?
そんなこんなで、山ひとつ超えた先にあった平原に移動。
ちょうど、草が一本も生えていないハゲ野原。もちろん資源である木もない。
じゃあ、どうするのか?
資源なら足元にいっぱいあるではないか。それは何か?《土》だよ。
軽く詠唱をすると心臓から黒い輝きが放たれ右足に向け走ると黒い輝きが右足に纏う。トントンと右足で地面を軽く踏む。
すると電流が伝わるように黒い光が走り抜け、自分の立っている周りの地面がせり上がる。
せり上がった土は徐々に形作られ、数分経つ頃には立派なお城ができあがりました。
強度は俺の変質の呪文で土の性質を要所要所で分けて変化。
これで見た目バッチリ。強度も抜け目無し。完璧なお城の完成。

「す、すごい!」

少女はキラキラした目で俺を見つめて来た。ちょっと恥ずかしい。
ゾンさん氏は何年も一緒にいるのに規格外の俺の力には慣れてません。

「......チートだ」
「すげーだろ?だからもっと敬え」
「嫌です」
「そんなキッパリ...お前もそう思わないか?なぁ......あ」

そうだよ。なんで気づかなかった。
いままで気にしてもいなかった。自分も同じようなものだからな。
感覚的に気づけなかったんだろう。俺はきょとんとしている少女に問いかけた。

「おいお前......名前何ていうんだ?」

名前聞いていなかったんだよね。
名前無いとやっぱり不便じゃん?俺も人のこと言えないけど。

「名前...?ないよ」
「は?いや、ないってわけが......」
「ないもん。ずっと名前がなかったから」

名前がなかった?そういえば、そもそもこいつ何歳だ?

「お前いくつだ?」
「16歳」
『16!?』

めちゃくちゃ幼女じゃ無いじゃん!いやそこじゃない。
まさか、この娘捨て子だったのか?16歳まで、ずっと一人......どれだけ辛かったんだ。腹が立つところもあるが親がわからない以上報復しようがないから後回しにしよう。
しかし、名前が無いと不便だ。魔王としても威厳が無い。俺?俺はいいんです。

「名前がないなら俺が決める」
「え?」
「散々名前が!って言ってたくせに」
「こいつの場合、名前そのものがないからしょうがないだろ」
「名前つけてくれるの?」

あからさまに喜んじゃって、顔キラキラしてるし、これはいい名前つけてやらないといけないな。
と言ってもな。いい名前あるか?
魔王っぽい名前、王様、強い、強いと言えば謎のもの、謎の箱、ん?ああ、これがいいじゃん。

「決めたんすか?」
「おう。いい名だぜ?」
「どんな名前!」
「慌てるなって......」

期待満点の少女のおでこに指を当て名前を教えた。

「お前の名前はパンドラだ」

そう、謎の箱。すなわちパンドラの箱から名を取った。
パンドラの箱って言うのは、《謎の箱》または《世界の箱》と呼ばれる《神話エンソロジー級》の宝箱。開けるためにはその箱の番人を倒さないといけないとか、生贄を捧げるとか、解錠方法はいろいろ言われてるがどれも確証がない。
中身に関しても色々と噂されている。
開けた者の願いを叶える箱。
全知全能の力を与える箱。
尽きることなくお金を出す箱。
しかし、誘惑の箱のように見えて、中身を見たものを喰らう箱とも言われている。
パンドラの箱を開けたものは生きて帰ってこないからだ。まあ、本当かは知らない。

「ぱんどら?」
「結構いい名前っすね」
「だろ?どうだ!気に入ったか?」
「うん!」





△▼△





そして、今に戻るわけで名前を付けてもらえたのが嬉しかったのか。名前を付けてから俺のそばを離れようとしない。
16歳なんだからもうちょっと...ねぇ?俺だって男の子なんだよ?年齢はあれだけど、あれなんだよ?

「たいちょぉ?魔王を決めるのと拠点作ったのはいいけど、このあとどうするんすか?」
「他の四天王を見つける」
「というと、風と炎と水っすね」
「そうだな」

さてさて、今回はどんな曲者を四天王にしようかなぁ。
まあ、曲者すぎても俺が困る。
パンドラが袖を引っ張ってくるが、どうかしたのか?

「ねえねえ、お兄ちゃんって何歳なの?」
「何歳つったって。うーん...この体になる時は17だったからなあ」
「じゃあ永遠の17歳?」
「そうなるな」
「無駄話してないで四天王候補探しましょうよ」

無駄話って...まあいいけど。残りの三人どうしようか。
できれば【はぐれ】がいいんだよな。
【はぐれ】っていうのは、その種族の中で異端な力を持った奴のことだ。
例えば、ゴブリンは力を持っているが知恵は少ない。
だが、【はぐれ】が生まれると。
人間よりも知恵を持ったゴブリン。
通常の倍の筋力を持ったゴブリン。
異端の能力を持ったゴブリン。
この三種類のどれかが生まれる。これが【はぐれ】だ。
ゴブリンメイジと名称されてる種類もいるが、それが【はぐれ】である知恵を持ったゴブリンから派生した存在だ。ホブゴブリンやゴブリン・亜種もその類い。
しかし、【はぐれ】なんてそう簡単に見つかるわけがなく。
探し始めて数時間、魔王さんは背中の上で熟睡中、流石に子供だね。16歳だけど

「お兄ちゃん...えへへ......」
「どんな夢見てんだよ」
「どう考えてもあんたの夢でしょ」
「マジか」
(こいつ殺されないかな)

ゾンさんから殺気を感じつつ、俺たちは廃墟についた。
廃墟と言っても、そこまで壊れているわけではない。
生活は普通にできそうな感じ、というか今だに誰かが住んでいそうな状態。
ここを拠点にしたかった。無駄に労力使わないですんだろうに...
落胆しつつ、廃墟に一歩近づくと声が聞こえた。

「誰だ!」

声質的に女の子の声だと思う。とりあえず、顔ぐらい見せなさい。

「誰だと言ってるんだ!」
「ゾンビ」
「名前を聞いてるんだ!」

名前ですか。ゾンビって事だけ知っていればいいと思うよ。
どのみち教える名前も忘れてるからね。

「ない」
「同じく」
「私はね!パンドラだよ!お兄ちゃんにつけてもらったの!いい名前でしょ!」

いつの間に起きたんだよ......てか、どんだけ気に入ってんだよ。嬉しいですけど。

「ほらこいつは名乗ったろ?そっちも名乗るのが筋だろう?」

ガサガサと後ろの木の葉が揺れ、そこから声の主が現れた。

「......私はカイネ。エルフと呼ばれる種族だ」

エルフかぁ......人間の姿に似ていて耳が特徴的、莫大な魔力と弓の使い手の種族だ。
あと人間たちには、大半が奴隷ーーほぼ性的な意味でーーとして扱われてたな。
エルフは純潔な種族だから人間のクソ貴族達には超人気らしい。ほんと貴族は嫌いだ。

「なんでエルフがここにいるんだ?俺の記憶だとエルフの村はもっと遠いとこだろ?」

一度だけ近くを寄った時に襲われたことがあったな。その時は、平和的に解決した。
無駄な争いや、敵を増やすようなことはしたくないからな。
場所的には人間がまともに近づけるような場所ではなかった。
エルフの里は遠いところにあって、出れば奴隷にされる危険性があるはずのエルフが、何故ここにいるのかって思うのは普通だと思うな。

「.....追い出された」
「子供か」
「黙れ!」
「落ち着いてください。それで、どんな理由で追い出されたんですか?」

確かによっぽどの理由がない限り、集団意識の高いエルフが仲間を追い出すはずがないよな。
一応聞いてみようか。もしかしたら、【はぐれ】かもしれないし。

「エルフとして持ってるはずのない力を持っていただけで追い出された......しょうがないことだけどな」

エルフとして持ってるはずのない力を持っているって?

「どんな力なんだ?」
「エルフは風を操れるのは知っているだろ?」
「ああ、それで弓矢を使っているんだろ?」
「けど、私は小さい頃から風を操れなかった」

風を操れないエルフ確かにエルフとしてはあまり使えない状態だな。
弓も下手とは言えないが、普通のエルフより劣るな。でもそれだけ追い出されるか?戦えないだけで他のこともできるだろう。

「けど、私は違うものを操れた。数年前に村長が風邪をひいたんだ」
「どうした急に」
「まず聞いてくれ。村長も若くなかった。風邪をひくだけで死にそうだった。私はどうにかできないかと思い、村長の手を握ったんだ。そしたら、先ほどまで死にかけていた村長が急に元気になったんだ」

風邪が治ったってことか。こいつが触っただけで病気が治ったってことになるな。
治癒能力がずば抜けて高い【はぐれ】なのか?いや、それだったら追い出されるはずがないよな。

「その直後だった。私にお礼を言いたかったのだろう。村長の息子が渡しの手を握った瞬間、その息子が急に倒れ、風邪をひいたんだ」
「は!?」
「私は風を操るのではなく。病である風邪を操れたんだ」

な、なんてややこしい能力だよ。
風邪を操るとかシャレにもならねえな。急に風邪をうつされた息子も苦しかっただろうな。
ゆっくりと風邪のウイルスに感染されれば、多少は耐えれるだろうが、急に風邪にさせられたら細胞が耐えれなかっただろうな。

「村長の息子は助かったよ。ただの風邪だったからね。そのこともあって、みんなも村長も私を責めはしなかった」

ここまで聞けば、こいつが里を追い出される理由ない。気をつければ、誰も危険な目に合わないと思うけどな。
まだ、続きがあるみたいでエルフは話を続けた。

「だが、今から数か月前の話だ。村長は、また病にかかったんだ。しかも今度は不治の病だった。治るわけもない病気にみんなが泣いた。私も村長には小さい頃から面倒を見てもらっていたから、悲しかった。しかし、私は思った。風邪を操れたから他の病気も操れるのでは?っと......」
「まさか」
「そう。成功した。村長は元気を取り戻して、私の手を握った。すると、どうだ?村長の容体は、また悪くなり床に倒れたんだ。私は急いで村長の手を握った。そして、何事もなく元気になったんだ。その姿を見て、みんなは思ったんだろう。私の能力は危険だって......そのあとは早かったよ。村長は私を追放した。私はすぐに従った。これ以上みんなを危険な目に合わせたくなかったから」

なるほど、こいつは異端の力を持った【はぐれ】で、触った相手の病気を自分の中に所持し、もう一度触ると所持している病気を移すことができるのか。
確かに危なすぎる。知らぬうちに体の中に病気を所持していて、他の人にでもうつったら危ない。
このエルフには悪いが、生きててはいけない能力だ。

「村を追い出された後、色々と試して見た。そして、わかったことは、生き物を病気にさせたり、うつさせたりすることができること。病気を治すことはできないと言うこと」
「じゃあ、不治の病はまだ残ってるのか?」
「ああ、残っている」
「へぇ......じゃあ、俺に任せろ」

俺の言動にきょとんとしているカイネを尻目に、俺は手を握った。
カイネは急いで離そうとするが、俺は許さずにずっと握った。

「あ、あんた死ぬ気か!」
「だったら嬉しい」
「ば、バカなのかおまえは!?」

数秒が経ち、俺の中の何かが入り込む感覚があった。例えるなら、血管に無理矢理、異物を注入された感じだ。
くらっとめまいを感じるとともに、吐き気や頭痛、寒気、吐血などいろいろな症状が現れた。
カイネがもう一度、俺に触ろうとしたがゾンさんにそれを止めさせた。
心配そうに見つめるパンドラに笑いかけ、俺の体は強制的にうつされた病気に耐え切れず、運動を停止した。
そして、俺の体は地面に伏した。

「な、なんで止めたんだ!!」
「いや、大丈夫ですよ?」
「何が大丈夫なんだ!見ろ!無残にし......んで...?」

カイネが見た光景は異様と言う言葉しか思いつかないだろう。
病気で死んだはずの死体が、グチャグチャと動き、肉が裂け骨が露出し、白骨死体と化した。
しかし、そこで終わらず周りの土が白骨死体に纏わり付き、先ほどと同じ四天王に姿になると肉になった。
そして、何事もなかったかのように立ち上がり、首の骨を鳴らしあくびをした。

「あー.........死ねなかった」
「不治の病でも死ねないとか。さすが死の概念が消える呪いですね」
「嬉しくねえ......」
「な、なんなんだお前は...!」

先ほどの俺の復活のグロテスクシーンを見て、腰が抜けたカイネは地面にペタっと座り込んでいた。
なんだお前はと言われてもねぇ......

「ただの不老不死の四天王だけど?」
「四天王......?」
「そうだ。まあ、まだ一人だけどね」

あはは.........と笑うとカイネはちょっと笑ってくれた。
カイネさんにこれからどうするか聞いてみると、ちょっと悩んでいた。
所持していた病がなくなったからな。これからは、もう生き物を触っても大丈夫だろう。
それにしても、生き物に害を与える力か......使えそうだな。
俺は多分、周りから見ると不気味な笑みを浮かべていただろう。
パンドラとゾンさんの顔が引きつってた。

「生き物に迷惑をかけないようにするために、生物がいないところに行くことにするよ」
「また、ボッチになるのか?」
「ぼっちって言うな!」
「一人ぼっちなら一緒に来る?」

パンドラさん?なにを言ってんだい?そう簡単にいくわけないでしょう?
確かに、俺はこいつの力がほしいから仲間にしたいなぁ......とは思ったよ?
けど、そう簡単に納得するわけが無いでしょう?エルフだよ?プライド高いエルフさんだよ?

「いいのか?」
「え?」
「いいよねお兄ちゃん!」

パンドラさん?断る理由がなさすぎるんですけど。
まあ、パンドラさんの純粋無垢のおかげで結構な戦力が仲間になった。ラッキー。

「その代わり、お前には四天王をやってもらうからな」
「いいけど、なんで四天王なんか集めてるんだ??」
「えーっとね!」

パンドラが必死に説明する姿をゾンさんと見ながら和み中。
大体の内容を聞いて、カイネさん驚愕の顔。まあ、そりゃあそうかもね。

「つまり、君が新しい魔王......?」
「そうだよ!それでお兄ちゃんは四天王だよ!ゾンビさんはその部下さん」
「ほ、ほんとに?」

俺を見て言うな。そいつを魔王にしたのは俺だが、この子をなめるな。
だから、そんなありえないだろみたいな顔をして見るな。
そいつの魔力は歴代魔王で一番だぞ。
とりあえず納得したカイネは、ある提案をしてきた。

「いいよなってあげる。その代わり」
「その代わり?」

そう言って、俺の手を握って嬉しそうな顔をして言った。

「こいつ私にくれないか?」
「は?俺?」

いや、意味がわかりません。俺くださいって何?俺一応生きーー死に者?

「よく見たら、こいつゾンビのくせに結構いい男だし、それに私を助けてくれたから......どうだい?」
「俺を物扱いすな!」
「お兄ちゃんはだめぇぇ!!」

俺に腕を引っ張るようにパンドラが掴んで来た。
いいぞパンドラ!言ってやれ!俺は物じゃない。
死に物だと!あ、死に者だと!

「お兄ちゃんはあたしの物だもん!」
「わかってたよ!畜生!!」
「いい加減しんでください」
「そう簡単に死ねないから困ってんだよ!!」

俺ってなんでこうも個性的なやつを選んじゃうんだろう。俺って人の性格見る目ない。

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