《異世界の主人公共へ》

怠惰のあるま

《異質な生物》との戦い

さて行きますか。
地上への道はエンリが教えてくれました。地上に出たら俺が入った階段のすぐ裏にあった。
あら盲点。
ゾンさんを復活させてーーもちろん記憶改ざん&記憶足し済みーーさっさと街に向かいましょう。



△▼△



ダッシュで戻った俺は異様な雰囲気に包まれた街に到着。
ここら一体から魔物も人間もいなくなり、空は雲が覆っていた。
すっごい強そうなのが出そうだ。俺の期待値MAX。
心をウキウキさせている俺とは裏腹にゾンさんはクラクラ中。
記憶を無理矢理突っ込んだから、すごい頭を痛そうにしてる。
まっ!脳に障害が出るような量は突っ込んでいないから大丈夫!大丈夫!

「うぅ・・・なんか頭がぁぁ」
「大量の情報を突っ込んだからね」
「まあいいけどさ。それにしても、エンリさん生きてたんだ」
「俺もびっくり。あとお前に会いたがってた」
「そう。嬉しい」

ゾンさんもエンリが生きていて嬉しいようだ。中性的だから女の子っぽい。あと気のせいか喋り方も女の子?
ま、今は化け物退治に集中してもらう。
しかし、噂の魔物。全然、姿を表さないな。
実は死んだ?いや、エンリの探知能力はずば抜けてるから大丈夫だろう。
街の中心に進んで行くと突然地面が揺れた。かなりの大きさで立つことすらままならない。
バランスをうまくとっていると俺たちが立っている足場に亀裂が走る。どうやらお出ましのようだ。
亀裂はどんどん広がり、街の中心にまで達すると地面が崩れ大きな穴が空いた。
揺れが収まると穴から何かが出てくる。
穴からはい出てきたのはライオンのような顔を持ち、背中からは羊の頭が泣き喚き、尻尾に蛇の頭があり舌を出しながら獲物を探すように動いている。
どうやら、封印されていたのは巨大な《異質な生物》と呼ばれているキマイラだったようだ。
予想外の大きさにゾンさんは驚きの声をあげていた。

「キマイラってこんなに大きいものですか!?」
「多分、大昔に封印されて少しずつだが封印の魔力を吸い取ってこうなったんだろ」
「にしたってこれは・・・でかすぎる!」

確かにこれは異常な大きさだ。
突然変異でもここまでは大きくならないな。全長十メートルは行くんじゃないか?
ここまでデカイ魔物はゴーレムや巨人系の魔物以外滅多に見ることはないな。
しかし、慌てはしない。いつでもクールに行こうぜ。

「どうするんですか!?」

ゾンさん珍しく焦ってるね。
仕方がない。今回は真面目に戦いをしようか。

「ちょっと頼みがあるんだけどいい?」
「な、なんですか?」
「街から出て遠くまで離れててくれない?それと耳も塞いで置いてね」

唐突な頼みに戸惑いながらも頷き、街の入り口に向かって走り出した。
ストレッチをしながらゾンさんが離れるのを待ち、数分が経過。
よしキマイラさんにはご退場願おうか。
この巨体には効くかどうかはわからないがとりあえずやってみよう。
キマイラに近づくとこちらの存在にすぐに気づいた。
巨体であるのにも関わらずトリッキーな動きをする。目で動きを追うが見失った。
どこに行った?
急に俺のまわりだけが暗くなる。空を見上げるとキマイラの前足が頭上に浮いていた。

「あ、詰んだ」

よけることもできず両手を上げて降参の意思を伝えるが、伝わるわけもなく地面に叩きつけられた。
前足がよかされるとそこにはもはや何の肉片かわからないほどにグチャグチャにされた俺の死体。
骨は砕け散り肉は裂け地面にめり込むほどに強く踏まれていた。回復の余地もない死体と化した俺の意識は途絶えた。
しかし、これでも《死ねない》
うにょうにょと芋虫のように肉片が動き、一つの肉塊となっていく。
さらに周りにある土や石が集まり、足りない筋肉、内臓、骨を形成した。
相変わらず、俺の体は気持ち悪い。
再生完了の体に俺の意識が戻った。
さて、油断しているキマイラさんには死んでもらいますか。
指先に魔力を貯め喉を撫でるように触れる。
久々だけど出せるかな?
大きく息を吸い込み、俺は死の声をキマイラに向け発した。
すると、無機質な声が響いた。

腐敗王の奇声パンデミクボイス発動』

声とは思えないほどの奇声が街全体に響き渡り、声が届いたキマイラは断末魔の叫びを上げる。

叫び声を上げるキマイラの顔が徐々に腐り、腐敗が全身に広がると肉は溶け、立つための足が崩れ落ち、骨だけの生き物となり絶命した。
その姿を見届けた俺の一言はいつも通りだ。

「あーあ・・・死ねなかった」

まあ、これで大丈夫だろ。さて、外にいるゾンさんを迎えに行きますか。
街の外に出るとゾンさんは言いつけ通り耳を塞いでいた。
あの声を聞かれればゾンさんも危ないと思って避難させた。あれはゾンビにも効くんだよね。
ゾンさんに終わったことを知らせるために肩を叩くと、塞いでいた手を離して恐る恐るこちらに顔を向ける。
すると、ギョッと目を見開いた。

「だ、大丈夫ですか!血がべっしょりですよ!?」
「ん?大丈夫だって」
「......あれ?キマイラは?」

キョトンとしているゾンさんに無表情で言った。

「溶かした」
「・・・はいぃ?」

そんな驚かなくてもいいのにさ。
キマイラ如きにやられるわけがないじゃないですか。

「いやいやいや!あの数分間で何があった!」
「それは企業秘密だよ」
「もうわけわかんなぁぁぁい!」

ゾンさんの謎の叫びは、荒れた街に響き渡ったのであった。

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