New Testament
15
次の日、リニックたちは貴族討伐作戦を実行するための部隊を結成した。名前はトレイク(偶然そこに居た)によって『夜明け部隊』と名付けられた。
「……あんた、普通に意外とネーミングセンスあるのね」
「なんか貶されてる気がする。不思議でならない」
トレイクはそうせせら笑いながら、何処かにまた歩いていった。
「……ほんとうに、なんというか、煙のように現れて煙のように消えていくやつよね」
メアリーはそう呟いて、さらに話を続ける。
「んで、これからどうすればいいのかしら。作戦参謀サン?」
「悪意ありありな質問をどーも。ひとまず、まずはメンバーをどう分けるか決めなくちゃね。集まってもらったのは……九人か。それじゃあ、僕たちを含めたとしたら十二人だから、人数的にはちょうどいいかな?」
今居る場所はトレイクの屋敷にある小さなホールである。ホールはやっさもっさ人が集まっており、何れも皆魔術に優れた人間だった。
「それじゃ、チームはどう分ける? 二班ならば勿論のことリーダーも二人必要だろう」
「それはまぁ……メアリーさんにお願いしますよ。んで、もう一つは僕がやります。そんな感じで」
リニックの言葉は、これから何らかの作戦を遂行する人間とは思えないくらいに軽かった。
メアリーは溜め息をついて、それに答える。
「……確かに巻き込んでしまった私が悪いかもしれないが、そこまで乗り気だと逆に何だかあれだな」
「乗り掛かった船です。やるなら最後までやってやりますよ」
乗り掛かったというよりかは乗せられた方が近いですけれどね、とリニックは最後に付け足し、右腕を空にあげた。
「今からここに居る人たちに問う! 君たちは命をかけても、この星を守ろうと思うか!!」
リニックがそう言うと、ホールは喝采に包まれた。
(でもまぁ、仕方ないかな)
メアリーはそんなことを考え、暫く班分けの様子を眺めていた。
「……決まりました」
リニックのその一言を聞いて、メアリーは漸くそのメンバーを見た。見ると、どのチームも男性が少ない(元々男性の絶対量が少ないというのもあるが)。まぁ、それは逆にメアリーにとっても都合がよかった。しかしながら、作戦全体で考えると……それは違った。
「なぁリニック、ほんとうに大丈夫なんだよな?」
「大丈夫ですよ、きっと」
「きっと、ってなんだ。きっとって」
メアリーが問い詰めるも、リニックは答えない。仕方もないので、メアリーはリニックを信じることにした。
さて、それぞれに着いたメンバーをある程度簡単に説明せねばならないだろう。
まず、リニックチームからである。構成はどのチームも(リーダーを除いて)男一人に女五人という感じになっていた。これははからずもこうなっただけであり、単なる偶然(しかしメアリーは信じていない)である。
ライラス・クラッジウェイドはチーム唯一(リニックも含めると二人目)の男である。得意魔術は『変装』で若干錬金術もたしなんでいるらしい。
ローザ・カルシュダーは治癒魔法を専門としているが、武術となると少し心もとない。
フローラ・パリバルチアは氷属性の魔術に特化しており、またそれらを応用して『アイス・ウェボン』を製作することで魔術を使うことが出来ない人間でも魔術を使うことが出来るという特技(?)も持っている。
レイチェル・ライターウェイは魔術の根本となっている『元素』の流れを視認出来る。そのためか実際の魔術を使うこともままならない。
レイビック・トルクニアは……能力も何もかも不明で、トレイクが差し出した存在である。リニックは今も、彼女にだけは心を許していない。
そして、メアリーチーム。エスティ・リグレッダは『魔符』の製作を生業とする人間だ。魔符とは、致死量の魔術を食らった場合において、幾回か身代わりになってくれる、謂わば御守りのようなものだ。魔符の『強度』こそが、魔力を何処まで保持できるかという容量である。エスティはそれを最大限に出来ることから、魔符の製作では有名であるし、今回選ばれたということだろう。
ピアンカ・レセパルジアはかの舞踏家ライラル・レセパルジアの娘であり、女性ながらもその力は並大抵の舞踏家に負けない程だ。
ラシュア・バーベックは人々の考えが手にとるように解るという。勿論、メインとなっているのは魔術の行使であるので、魔術もある程度は使用出来る。
セルダック・クーチェルはメアリーチーム唯一の男である。しかしながら、長いさらさらとした髪となめらかな肌から(彼いわく、母親譲りの美貌らしい)、女性に間違えられることも多い。変装技術に富んでおり、錬金術の使い手でもある。
フローラ・エスメラルダは火炎魔術の使い手である。火炎魔術に特化しすぎたせいで、それのみしか使えないという欠点もあるが、彼女のそれはもはや欠点を補う程である。
リスティア・ハーバードアは魔導兵器のエンジニアである。彼女自身も魔術は行使出来るが、むしろどちらかといえば、相手が持っている可能性の高い魔導兵器を解析し、それを無力化させるためにメアリーチームにいるのであった。
「……ひとまず、このメンバーで行くとしますか」
リニックが一通りチームのメンバーを眺め、呟いた。
メアリーも既に同様のことを済ませており、それぞれは同じ目標を抱いていた。
目標は貴族ラスパルダッガー家の屋敷にあるという最大の武器である魔導兵器『アブソリュート』を無力化すること。
彼らの大きな戦いが、これから始まろうとしていた――。
「……あんた、普通に意外とネーミングセンスあるのね」
「なんか貶されてる気がする。不思議でならない」
トレイクはそうせせら笑いながら、何処かにまた歩いていった。
「……ほんとうに、なんというか、煙のように現れて煙のように消えていくやつよね」
メアリーはそう呟いて、さらに話を続ける。
「んで、これからどうすればいいのかしら。作戦参謀サン?」
「悪意ありありな質問をどーも。ひとまず、まずはメンバーをどう分けるか決めなくちゃね。集まってもらったのは……九人か。それじゃあ、僕たちを含めたとしたら十二人だから、人数的にはちょうどいいかな?」
今居る場所はトレイクの屋敷にある小さなホールである。ホールはやっさもっさ人が集まっており、何れも皆魔術に優れた人間だった。
「それじゃ、チームはどう分ける? 二班ならば勿論のことリーダーも二人必要だろう」
「それはまぁ……メアリーさんにお願いしますよ。んで、もう一つは僕がやります。そんな感じで」
リニックの言葉は、これから何らかの作戦を遂行する人間とは思えないくらいに軽かった。
メアリーは溜め息をついて、それに答える。
「……確かに巻き込んでしまった私が悪いかもしれないが、そこまで乗り気だと逆に何だかあれだな」
「乗り掛かった船です。やるなら最後までやってやりますよ」
乗り掛かったというよりかは乗せられた方が近いですけれどね、とリニックは最後に付け足し、右腕を空にあげた。
「今からここに居る人たちに問う! 君たちは命をかけても、この星を守ろうと思うか!!」
リニックがそう言うと、ホールは喝采に包まれた。
(でもまぁ、仕方ないかな)
メアリーはそんなことを考え、暫く班分けの様子を眺めていた。
「……決まりました」
リニックのその一言を聞いて、メアリーは漸くそのメンバーを見た。見ると、どのチームも男性が少ない(元々男性の絶対量が少ないというのもあるが)。まぁ、それは逆にメアリーにとっても都合がよかった。しかしながら、作戦全体で考えると……それは違った。
「なぁリニック、ほんとうに大丈夫なんだよな?」
「大丈夫ですよ、きっと」
「きっと、ってなんだ。きっとって」
メアリーが問い詰めるも、リニックは答えない。仕方もないので、メアリーはリニックを信じることにした。
さて、それぞれに着いたメンバーをある程度簡単に説明せねばならないだろう。
まず、リニックチームからである。構成はどのチームも(リーダーを除いて)男一人に女五人という感じになっていた。これははからずもこうなっただけであり、単なる偶然(しかしメアリーは信じていない)である。
ライラス・クラッジウェイドはチーム唯一(リニックも含めると二人目)の男である。得意魔術は『変装』で若干錬金術もたしなんでいるらしい。
ローザ・カルシュダーは治癒魔法を専門としているが、武術となると少し心もとない。
フローラ・パリバルチアは氷属性の魔術に特化しており、またそれらを応用して『アイス・ウェボン』を製作することで魔術を使うことが出来ない人間でも魔術を使うことが出来るという特技(?)も持っている。
レイチェル・ライターウェイは魔術の根本となっている『元素』の流れを視認出来る。そのためか実際の魔術を使うこともままならない。
レイビック・トルクニアは……能力も何もかも不明で、トレイクが差し出した存在である。リニックは今も、彼女にだけは心を許していない。
そして、メアリーチーム。エスティ・リグレッダは『魔符』の製作を生業とする人間だ。魔符とは、致死量の魔術を食らった場合において、幾回か身代わりになってくれる、謂わば御守りのようなものだ。魔符の『強度』こそが、魔力を何処まで保持できるかという容量である。エスティはそれを最大限に出来ることから、魔符の製作では有名であるし、今回選ばれたということだろう。
ピアンカ・レセパルジアはかの舞踏家ライラル・レセパルジアの娘であり、女性ながらもその力は並大抵の舞踏家に負けない程だ。
ラシュア・バーベックは人々の考えが手にとるように解るという。勿論、メインとなっているのは魔術の行使であるので、魔術もある程度は使用出来る。
セルダック・クーチェルはメアリーチーム唯一の男である。しかしながら、長いさらさらとした髪となめらかな肌から(彼いわく、母親譲りの美貌らしい)、女性に間違えられることも多い。変装技術に富んでおり、錬金術の使い手でもある。
フローラ・エスメラルダは火炎魔術の使い手である。火炎魔術に特化しすぎたせいで、それのみしか使えないという欠点もあるが、彼女のそれはもはや欠点を補う程である。
リスティア・ハーバードアは魔導兵器のエンジニアである。彼女自身も魔術は行使出来るが、むしろどちらかといえば、相手が持っている可能性の高い魔導兵器を解析し、それを無力化させるためにメアリーチームにいるのであった。
「……ひとまず、このメンバーで行くとしますか」
リニックが一通りチームのメンバーを眺め、呟いた。
メアリーも既に同様のことを済ませており、それぞれは同じ目標を抱いていた。
目標は貴族ラスパルダッガー家の屋敷にあるという最大の武器である魔導兵器『アブソリュート』を無力化すること。
彼らの大きな戦いが、これから始まろうとしていた――。
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