ルームメイトが幽霊で、座敷童。
独白と神様の一触即発(前編)
「……解ったわ」
しかし。
先に折れたのは他でもない、碧さんだった。
その言葉を聞いて、姉ちゃんはほっと一息ついた。
「ただし」
だが、碧さんの言葉はそれで終わらなかった。
人差し指を突き出して、碧さんは微笑んだ。
「私から一つ、条件があるわ」
「出来る限りのことならば、善処しよう」
「アイス用の冷凍庫がほしいわっ!」
どどん!
碧さんはそんなことを言ったが、そんな効果音をつけるほど重要でもない! いったい何だってんだ、それは!
というか当の本人である姉ちゃんは、『アイス用冷凍庫』というごく一般的な単語に何か意味でもあるのか、うんうんと唸っていた。
「姉ちゃん……きっとそのままの意味だと思うよ?」
「はっ。ま、まぁ、そうだよな! 私もそうだと思っていたよ! アイス用冷凍庫、解った! 経費で落ちるか確認する!」
「そうこなくっちゃ!」
碧さんは姉ちゃんが電話をかけているのを見てガッツポーズした。いや、まだ予算が降りるかどうかを確認するだけだから実際に手にはいるかのチェックをしているだけに過ぎない。
というかもう秋になり、アイスの必要性が殆ど感じられない。それにも関わらず、碧さんはアイス用冷凍庫を所望している。まったく、訳が解らない。
「まぁ……安いもんでしょ。私は百鬼夜行を倒す。あなたはその報酬としてアイス用冷凍庫を宮内庁神霊班の場所に置く。ギブアンドテイクだ。仲良くやってきましょう」
そう言って。
碧さんは俺のもとからゆっくりと離れていこうとした。
「碧さん」
俺は、訊ねる。
碧さんは振り返り、微笑み、
「どうした、リト。私が心配なのか?」
ああ、心配だとも。
特に今回は妖怪のボス、百鬼夜行と戦うのだろう?
もし、もしかしたら……の時があったら。
「もうお前も子供じゃないだろ、少しは場を弁えろ」
それだけを言って。
碧さんは、俺の元から離れた。
もう、振り返ることも、なかった。
◇◇◇
「ふう……」
私はリトたちが見えなくなったあたりまでついて、漸く一息ついた。
だって、あのままいたら泣いてしまいそうだったから。
たぶんリトは、それを察したのかもしれない。私に何かあったら……なんて心配してくれたんだから、優しい奴だ。それを現実の女の子に一パーミルでも向けてやればちっとは違うのだろうけれど、まあ、今はそんなことを話している場合ではない。
「……私は、」
不安だった。確かに私は日本神話では一番の部類に入るカミだろう。けれども、私はそんな強い存在ではない。
だって私は、俗世に憧れて、リトの家に転がり込んだのだから。
俗世での生活は、ほんとうに、ほんとうに楽しい生活ばかりだった。
アイスクリームを食べたり、テレビを見たり、ゲームでリトと対戦したり……そのどれもが、私にとって、素晴らしい思い出だった。
しかし。
先に折れたのは他でもない、碧さんだった。
その言葉を聞いて、姉ちゃんはほっと一息ついた。
「ただし」
だが、碧さんの言葉はそれで終わらなかった。
人差し指を突き出して、碧さんは微笑んだ。
「私から一つ、条件があるわ」
「出来る限りのことならば、善処しよう」
「アイス用の冷凍庫がほしいわっ!」
どどん!
碧さんはそんなことを言ったが、そんな効果音をつけるほど重要でもない! いったい何だってんだ、それは!
というか当の本人である姉ちゃんは、『アイス用冷凍庫』というごく一般的な単語に何か意味でもあるのか、うんうんと唸っていた。
「姉ちゃん……きっとそのままの意味だと思うよ?」
「はっ。ま、まぁ、そうだよな! 私もそうだと思っていたよ! アイス用冷凍庫、解った! 経費で落ちるか確認する!」
「そうこなくっちゃ!」
碧さんは姉ちゃんが電話をかけているのを見てガッツポーズした。いや、まだ予算が降りるかどうかを確認するだけだから実際に手にはいるかのチェックをしているだけに過ぎない。
というかもう秋になり、アイスの必要性が殆ど感じられない。それにも関わらず、碧さんはアイス用冷凍庫を所望している。まったく、訳が解らない。
「まぁ……安いもんでしょ。私は百鬼夜行を倒す。あなたはその報酬としてアイス用冷凍庫を宮内庁神霊班の場所に置く。ギブアンドテイクだ。仲良くやってきましょう」
そう言って。
碧さんは俺のもとからゆっくりと離れていこうとした。
「碧さん」
俺は、訊ねる。
碧さんは振り返り、微笑み、
「どうした、リト。私が心配なのか?」
ああ、心配だとも。
特に今回は妖怪のボス、百鬼夜行と戦うのだろう?
もし、もしかしたら……の時があったら。
「もうお前も子供じゃないだろ、少しは場を弁えろ」
それだけを言って。
碧さんは、俺の元から離れた。
もう、振り返ることも、なかった。
◇◇◇
「ふう……」
私はリトたちが見えなくなったあたりまでついて、漸く一息ついた。
だって、あのままいたら泣いてしまいそうだったから。
たぶんリトは、それを察したのかもしれない。私に何かあったら……なんて心配してくれたんだから、優しい奴だ。それを現実の女の子に一パーミルでも向けてやればちっとは違うのだろうけれど、まあ、今はそんなことを話している場合ではない。
「……私は、」
不安だった。確かに私は日本神話では一番の部類に入るカミだろう。けれども、私はそんな強い存在ではない。
だって私は、俗世に憧れて、リトの家に転がり込んだのだから。
俗世での生活は、ほんとうに、ほんとうに楽しい生活ばかりだった。
アイスクリームを食べたり、テレビを見たり、ゲームでリトと対戦したり……そのどれもが、私にとって、素晴らしい思い出だった。
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