ルームメイトが幽霊で、座敷童。

巫夏希

ゲームの機内は案外快適(中編)


「今まで俺たちはあのホールに居たはずなのに……!」

 そう、確かにそうだった。
 だが、これもまた現実だった。この森も現実だったのだ。

「……あなたたち外から来たの?」
「あぁ」

 こういうのは包み隠さず言った方がいい――と何と無く(では行けないが)思い、命の恩人である彼女にすべてを打ち明けた。
 話を終えると彼女は難しそうな表情を示した。気持ちは解る。俺だって現在の状況にちんぷんかんぷんだからな。

「……別に無理して理解しなくても大丈夫だぞ?」

 信楽さんはここぞとばかりに言葉を呟いた。タイミングが合わなきゃ居ないような扱いを受けてしまうからな。BOCCHI神状態になったらそれはそれで辛いし。

「とりあえず、かいつまんで言うと、あなたたちは外から来た。その理由は『ゲームマスター』に強制送還されたから。私たちの現実の身体は大丈夫なんだよね?」
「保証する」

 そう言うと彼女は顔を綻ばせた。なんというか――正直な子だった。
 でも、信楽さんは一握りの嘘をついた。
 身体が本当に無事だなんて証拠は――実際にはない。だが冷凍保存技術が進歩していることもまた事実である。だけれど、それが身体を『事件』直前の姿のまま保てているのかは……難しいところだ。要は植物状態だから、管理を怠れば身体は痩せこけ、最終的には腐る。
 技術は人々が思う以上には進歩していない。せいぜいその四分の一程度しか進歩しないに過ぎない。その他は進歩しないか最悪は退化している。そいつだと最悪の可能性である。そんなことが起きている、現実もある。だけれどそんなものをどうやればいいか……考えなくてはならない。

「……とりあえず、名前を教えてくれないか? こういう状態が続くとどう呼んでいいのか悩んでしまうからね」
「私は……ここでは『ヒトミ』と名乗ってます。だから、そう呼んでください」

 そう言ってヒトミさんは笑った。よく見れば、水色の髪にそれより少し濃い青のスカーフを被っていた。というか戦闘するには軽装すぎる気がしたが、彼女なりに戦い方があるのだろうし、それに茶々を入れるのもなんだかあれである。

「……どうかしました?」
「い、いや、なんでもない」
「そうですか」ヒトミは小さく微笑んだ。「……ならば、案内しますよ」
「案内?」
「そうです!」

 ヒトミはそう言って、剣を高々と空に掲げた。

「今から行くのは『LTM』……マグナカルタ解放軍(Liberation to Magnacult)の本拠地、『光輝の分水嶺』です」




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