ルームメイトが幽霊で、座敷童。
幽霊の正体は奇想天外(前編)
「ほれほれどーした? 幽霊如きが云々言ってなかったかな?」
碧さんはもう海馬王明という人間を敵とは認識していなかった。
人間でも妖怪でもカミサマでもない『神憑き』最強の人間を、それすらも、敵とは認識しなかった。
神憑きは『人間界』と『黄泉』に片足づつ突っ込んでいるわけで、つまりは普通の人間と比べて少々特殊な存在であるわけだ。
特殊な存在であるからこそ、幽霊のような存在を特殊だと思わない。
「幽霊が……、ほざくな!!」
「元はと言っちゃえば人間にこーいう力与えちゃったのが悪いんだけどなぁ……。あぁ……」
碧さんはそんなことを言っているが、表情はそこまで暗くはない。要はパフォーマンスであり、相手を騙すための手法だろう。
「なんというかさ……“責任取らなきゃ”いけないね」
――碧さんの背後にあるオーラが明らかに変化した。
「……なんだ? 幽霊のくせに雰囲気が……」
「あんたはまだ私を幽霊だと思っているみたいだね。まぁ、そうか。私の名前は大分前に二代目に継がしちゃったからなぁ……!」
そこで、海馬王明はようやくその違和感に気付いた。
「ま、まさか、貴様……!」
「あぁ、そうさ。まだ理斗は気付いていないけれどさ」
海馬王明の目の前に居たのは、ただの幽霊等ではなかった。
「……わたしは」
そう――ただの幽霊、ではないのだ。
「わたしは、初代アマテラスオオミカミだよ。愚鈍な人間め、よくも愚弄してくれたね?」
◇◇◇
その頃、俺は漸く碧さんの異変に気付き始めた。
「なんだ碧さん? なんか何もしていないのに海馬王明が勝手に竦みだしたぞ……?」
「碧さん、いったい何を仕出かしたんだ……!」
美夏さんと俺はもちろん碧さんに任せきりだから、碧さんにあれしろこれしろなどと命令はしていない。……というか命令なんてしたら地獄に引きずり込まれるんじゃなかろうか。
美夏さんに関しては日本神話最強の存在なのだからそんなことくらいしてもいいと思うのだが――一度も美夏さんが碧さんに命令した姿は見たことがなかった。
しかし質問するタイミングというか――そういうものを失ってしまって、現在に至る。なんというか……我ながら訳が解らない存在である。
「……とりあえず碧さんが何とか足止めしてくれているみたいだな。美夏さん、頼むよ」
「――にしても、こんなので大丈夫なの? 水は火に強いんだぜ?」
「そーいうのは後でいいから、ほらほら行った行った」
渋る美夏さんを何とか所定の位置に行かせたところで、俺はようやく作戦が最終段階に向かったことを確認し、胸を撫で下ろした。
「後は碧さんが何とかしてくれるだけ……だな」
碧さんは幽霊で、かつとある能力を持っている。
しかし、そのとある能力ってもんが今までは強すぎた……ってわけだ。
……でも、今ならそれを百パーセント使っても、大丈夫な状況である。
「碧さん、思う存分やっちまえ……!」
俺はそう呟いて、美夏さんから離れた。
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