ルームメイトが幽霊で、座敷童。
虚数課の人員は奇想天外(中編)
「……一応はオカルト関連を扱う部署だからね。こういう書物は集めておかないと、捜査の時に困るんだ」
矢牧さんはそう言ってニッコリと笑った。矢牧さんはなんだか年齢が解りづらい。というか皺一つ見当たらない。年齢は恐らく俺くらいだと思うのだが、外見ってものはいくらでも騙せるからな。
矢牧さんはまあいいとして、今お茶を飲んでのほほんとしている男性は誰だろうか?
「彼はここの課長、信楽瑛仁。君が会おうとしていた人物だよ」
「いやー、大変だったでしょ? ささっ、座ってお茶でも飲もうよ」
信楽さんは名前のイメージに反して(そんなこと言ってはいけないのだけど)、小柄な人だった。俺が百六十あるかないかなので、それよりも背丈は小さい。だが、年を召した人間でもなさそうだ。
とりあえず俺は信楽さんの意見に従って、信楽さんに向かい合うように座った。目上だし初対面だから正座をしようと思ったのだが――。
「あぁ、いいよ安座で。つかれてるだろ? 二つの意味で」
「二つの……意味で?」
「やだなぁ」信楽さんは少しだけ微笑んで言った。「……君の後ろに憑いている幽霊たちのことと、単純に疲労を労っただけじゃないか。それをどうして訝しむんだい?」
「……?」
この胸にある、ざわめきはなんだろう。小さい事ではないか、今言った事と言うのは。……しかし、今の時点では、それ以外に何か大きな事があるはずだった。今までに言った言葉にも何らかの意味を孕んでいるようにも思えた。
「まぁ君の考えている事も解るが、少し話題を変えよう。レセントリィ、『有限会社タイラーステイツ』がコミックマーケット……通称コミケとも呼ばれているイベントの事だな。ネット販売だけでなく、こういうところでも販売する。ただし、問題なのはそこではなく、会社にある。何を販売すると思う?」
「……なんでしょう」
「『perovskite』……。名前を聞けばただの理系ホイホイのファンタジーものだよ。因みにペロブスカイトとは立方体の体心立方構造にある結晶を構成しているイオンが、中心にあるイオンを除いて幾つかの結晶と共有結合していることなんだけれども、流石にそれはあまり関係ないんだ。だからこれは無し。……じゃなくて、『perovskite』は、中身はただのゲームではないんだよ」
「ただのゲームではない?」
「そうだ。ただのスケープゴートだ。そして、それはあるゲームと同じシステムを保持している。かつて、数え切れない人間を死に追いやった呪いのゲーム、ホープダイヤモンド・ゲームと、同じシステムをね」
信楽さんは何故そこまで知っているのだろうか。
ここまで話を聞いた、信楽さんに対するファーストインプレッションがそれである。こんな博識な人は少なくとも、俺は知らない。
「……アカシックレコードですよ」
ぽつり、と。
柚帆さんがそんな言葉を誰に向けるでもなく、言った。
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