ルームメイトが幽霊で、座敷童。
洗脳と神憑きと開発目的(後編)
「えっ?」
急に煙に巻かれてしまったので、俺は思わず狼狽えてしまった。だってそこでぼやかすとは思わなかったんだもの。りと。
「詩を詠んでいる場合じゃないのは解っているな?」
解っています。解っていますとも。
しかしながら、少しばかり気になるものもある。
「何だ? 言ってみろ」
「どうして姉ちゃんはそれを知ってるんだ? 俺が調査を開始したのはついこの間だぜ?」
「確かにそうだ。“お前が担当した”のはな」
と、いうことは。
俺が担当する以前から、この事案を誰かが担当していたということになる。
「俺が前任だ。そして主任補として現在もなお捜査している」
やってきたのは(最近出番の少ない)大沢さんだった。 
「小声で何言いやがったてめぇ」
「いいえ、なんでも。……ところで、どれくらい前から捜査を?」 
「うーんと、多分半年前からかな。俺の前は殉職しちまったものでな」
「殉職、ですか」
殉職。
まさか自分がその言葉を、生きている内に人から聞けるとは思わなかった。 
「殉職と堅苦しい表現を使うものの、実際のところそんなものじゃない。……何だと思う?」
「何でしょうね。……殺された、とか?」
「もっと糞みたいなやり方だ。そうだな、『洗脳』って表現が近いかな」
「洗脳……?」 
「不思議か? そりゃ不思議に思うだろうな。聞いた時は俺だって耳を疑ったからな」 
しかし、洗脳だなんて。
ここは一応警察である。それがどんな形であろうとも、警察であることには変わりはない。
その、警察が。
簡単に洗脳れてしまう? そいつは少し、やはり信じがたい出来事であった。 
「……辛気臭い話になってしまったな。少し、話を戻そう。奴らの実態について、だ」 
「知っているのか?」 
「伊達に捜査してない。……『スタジオ・タンジェント』の実態について話す。高木義堅は勿論のこと、他のメンバーも彼の中学の頃からの同級生らしい。その主要メンバーは四人。高木義堅、蜷局英輔、針咲千夏、そして海馬王明だ」 
「海馬……、まさか」 
「そうだ。神憑きの一族だよ」
大沢さんは、そう言って苦笑した。 
神憑きとはオカルトの地位では最高の人間であるとされている。少なくとも、妖怪人間とか霊体を合体させた『神人』とかと比べてはならない。あくまでも、『人間』のなかでは最高である。
その、最高の中で海馬姓の神憑きとは、『海の神』を代々憑かせていたらしい。資料には確か『ワダツミ』を憑かせているとか書いてあったかな。 
「……神憑きの一族がそんな犯罪に関わっているとなると、日本政府は焦ったわけだ。メンツってもんがあるからな」 
「しかし、名前が解っていれば捕まえればいいんじゃ? 海馬姓の人間はまだ居るでしょう?」 
「居るよ。だが、それでも、難しいんだ。『ワダツミ』さえ捕らえればなんとかなりそうだがなあ……」 
大沢さんは確か神憑きでもなんでもない。
もっと言うならば、二年前まではこういうオカルトに関わっていない、普通の人間だったらしい。
だが、今は関係ない。ただの先輩であることには、オカルトに関わってなかったからとかそんなのはお門違いなのだ。
急に煙に巻かれてしまったので、俺は思わず狼狽えてしまった。だってそこでぼやかすとは思わなかったんだもの。りと。
「詩を詠んでいる場合じゃないのは解っているな?」
解っています。解っていますとも。
しかしながら、少しばかり気になるものもある。
「何だ? 言ってみろ」
「どうして姉ちゃんはそれを知ってるんだ? 俺が調査を開始したのはついこの間だぜ?」
「確かにそうだ。“お前が担当した”のはな」
と、いうことは。
俺が担当する以前から、この事案を誰かが担当していたということになる。
「俺が前任だ。そして主任補として現在もなお捜査している」
やってきたのは(最近出番の少ない)大沢さんだった。 
「小声で何言いやがったてめぇ」
「いいえ、なんでも。……ところで、どれくらい前から捜査を?」 
「うーんと、多分半年前からかな。俺の前は殉職しちまったものでな」
「殉職、ですか」
殉職。
まさか自分がその言葉を、生きている内に人から聞けるとは思わなかった。 
「殉職と堅苦しい表現を使うものの、実際のところそんなものじゃない。……何だと思う?」
「何でしょうね。……殺された、とか?」
「もっと糞みたいなやり方だ。そうだな、『洗脳』って表現が近いかな」
「洗脳……?」 
「不思議か? そりゃ不思議に思うだろうな。聞いた時は俺だって耳を疑ったからな」 
しかし、洗脳だなんて。
ここは一応警察である。それがどんな形であろうとも、警察であることには変わりはない。
その、警察が。
簡単に洗脳れてしまう? そいつは少し、やはり信じがたい出来事であった。 
「……辛気臭い話になってしまったな。少し、話を戻そう。奴らの実態について、だ」 
「知っているのか?」 
「伊達に捜査してない。……『スタジオ・タンジェント』の実態について話す。高木義堅は勿論のこと、他のメンバーも彼の中学の頃からの同級生らしい。その主要メンバーは四人。高木義堅、蜷局英輔、針咲千夏、そして海馬王明だ」 
「海馬……、まさか」 
「そうだ。神憑きの一族だよ」
大沢さんは、そう言って苦笑した。 
神憑きとはオカルトの地位では最高の人間であるとされている。少なくとも、妖怪人間とか霊体を合体させた『神人』とかと比べてはならない。あくまでも、『人間』のなかでは最高である。
その、最高の中で海馬姓の神憑きとは、『海の神』を代々憑かせていたらしい。資料には確か『ワダツミ』を憑かせているとか書いてあったかな。 
「……神憑きの一族がそんな犯罪に関わっているとなると、日本政府は焦ったわけだ。メンツってもんがあるからな」 
「しかし、名前が解っていれば捕まえればいいんじゃ? 海馬姓の人間はまだ居るでしょう?」 
「居るよ。だが、それでも、難しいんだ。『ワダツミ』さえ捕らえればなんとかなりそうだがなあ……」 
大沢さんは確か神憑きでもなんでもない。
もっと言うならば、二年前まではこういうオカルトに関わっていない、普通の人間だったらしい。
だが、今は関係ない。ただの先輩であることには、オカルトに関わってなかったからとかそんなのはお門違いなのだ。
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