ルームメイトが幽霊で、座敷童。
視点C:瀬谷マリナの場合 -陸-
にしてもだ。
現代の科学技術でそう簡単にタイムマシンなど作れるものだろうか。
私自身、一通りの大学課程を学びつつもこの世界に飛び込んだ(そのことに関しては大分昔に父親に決められていたものだが、それは今話すべきでないだろう)から、向こうで習った一般的な科学技術やその辺も大体把握出来るし、無論神学に関しても一通りの知識を持っている。
一方のめぐみさんは『カミサマの集会所』として名高い出雲大社の巫女だ。もともと外界と交流することを想定していない――出雲大社の巫女は一部の『外巫女』を除いて出雲大社の外には例外として出る以外にない――から、神学――それも日本には限らず、海外の民族信仰まで――だけを学ぶ。他の知識は必要ない。聞いてみれば、海外の民族信仰などの知識も必要ないのでは? と思ってしまうが、めぐみさん曰くそれも必要らしい。例えば出雲大社にやってくる新しいカミサマがそういうのを少しでも持っていればその知識を加味して対処せねばならない。
そういうわけで、めぐみさんは一般常識ってものが少々欠けている。食べ物に関するマナーは恐らく同年代の人間よりも正しい知識だと思われるがそれ以外が致命的である。まぁ、それでも二年前の事件を境に神事警察に入り、スマートフォンを手に入れて、彼女なりに知識を取り込もうとしているけれど。
話を戻すと、そう簡単にタイムマシンというものは作れるのだろうか。確かにヒッグス-エスメラルダは発見された。それでもタイムマシンの完成にはあと数十年はかかると発表されていた。そんな簡単に時間を移動する装置が出来てもらっては色々と困る。
「一先ずそのデータ、ダウンロード出来ますか?」
「だ、だうんろーど?」
駄目だ、恐らくその単語の意味を理解していない。
「ダウンロードってのはそのデータを自分の携帯に取り込むことで……。あぁ、いいや。ちょっと貸してください」
少々雑にではあるが彼女のスマートフォンを奪取する。そして、『パラグラフ計画』に関するデータを片っ端からダウンロードしていく。
データに保護をかけていなかったから――つくづく思うがここの管理体制はどうなっているんだろうか――ダウンロードは簡単に出来た。生憎ウイルスなども混入されていなかったので、直ぐにめぐみさんのスマートフォン自体をプロテクトする。これで作業は完了だ。
「めぐみさん、あとでスマートフォン見せてください。データを全部そちらに転送したので」
「解りました」
これで一先ず証拠は掴んだ。
さて……次は何をしようかな。
こんなところに女二人を閉じ込めたんだ。それくらいの罰ってもんは受けてもらわなきゃね。
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