ルームメイトが幽霊で、座敷童。
視点B:河上祐希の場合 -参-
あれから二時間は経った。だけど、未だに手がかりは見つかっていない。
これは由々しき事態であることには間違いないんだけど、なんだかなあ、一つだけ気に食わない点があるんだよ。
「おい、ヴンダー!!」
「な、なんだよいきなり?! びっくりするだろ!!」
「びっくりもくそもないわ、さっきから寄り道ばかりして。殺されたいか?!」
「まぁ、今は俺と同じ概念上にいるから天地がひっくり返ってもそんなことは無理なんだけどね」
ちくしょう、あんたに正論を言われるとイライラする!!
「まぁ、気楽に行こう。あと二十二時間もある」
「もう二十二時間しかないんだよ!!」
「そう慌てるなって。……既にある程度の目処はついている」
「だったらそれを……!」
「冷静に話を考えようぜ。時間はたっぷりあるんだ。俺が見つけた情報なんて直ぐに話し終わる。悪い話を俺が持ってくると思うか?」
「……解った、話を聞こう」
「お前が話が解るやつで助かったぜ」
よっ、まあ座れや、とヴンダーが言ってきたので僕はそれに従うことにした。カッカしても仕方はない。今はヴンダーが持ってきた情報に頼る他ないのだから。
「……『パラグラフ計画』ってのは知ってるか?」
ヴンダーから言われた単語に僕は素直に知らない、と答えた。嘘をついてもどうしようもないし、嘘をつこうにもその名前だけでは情報が少なすぎる。
ヴンダーの話はそんな僕を他所に続く。
「パラグラフってのは……まぁ、段落とかそういう意味だな。相当な機密計画らしくてそれほど情報も得られなかった」
「何でもいい。とりあえず持ってる情報を全て話してくれ」
僕の言葉に呆れたのか、ヴンダーは溜め息をついた。
「これだから君はいつもそうだ。……少し息を抜こうという気にはならないのか? せめて人の話を待つくらいは、さ」
この状況で何を言っているのかとは思ったが、ヴンダーが言っていることは正論である。だから僕は黙ることしか出来なかった。
「そうだ。……それでいいんだよ。まぁいい、話を続けるか」
「承前は終わったか?」
「パラグラフ計画が制定されたのは二〇〇〇年のことだ。世界は二〇〇〇年問題の解決に取り組み、新世紀を迎えるころだったかな。そこで秘密裏に制定されたらしい。根底にあったのは……人口問題だ」
人口問題。
確か二〇五〇年迄に世界人口が百億を越え、食糧難になると学者が言っていた、あのことだろう。
しかし、あれは最終的に解決したはずではなかっただろうか?
「本当に解決したか?」
「あぁ、バイオテクノロジーやロボット技術、更には火星や月にも開拓をして食糧難を脱したと去年あたり政府が発言しただろう。……まさかそれが間違っているのか?」
「そうではないし、そうだとも言える」
ヴンダーは僕のこの反応を待ち構えていたのか、笑っていた。ちくしょう、元に戻ったら封霊銃五、六発は撃ってやる。
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