ルームメイトが幽霊で、座敷童。
視点A:瀬谷理斗の場合 -弐-
俺はその言葉を聴いて、殆ど無意識の内に身震いしていた。大量殺戮兵器? 来る大戦? 翠名の言った言葉には難解な単語があった。
「この世の中で殺戮兵器なんて使えばマスコミにバレるんじゃないかしら」
「忠告として言ってるつもりなんだろうが、そんなものは無駄だ。ただしそこまできちりとスケープゴートを用意しておく必要もない。勝手に科学者達が私を守るため、何らかの隠蔽工作を果たしてくれるだろう」
「そんな……そんなことが……!」
「可能、なんだよ。科学者の中には私みたいに犠牲を伴ってでも科学者は技術を開発すべしという人間がいるわけでね」
翠名は笑った。こんな状況で笑う――やはりこいつも異端だった。
「……だって、考えてみたまえよ! 今の時代があるのは先人たちの尊い犠牲があったからこそだ! しかし今、そういうものは人道に反すると禁止されている……! おかしいねぇ……?」
――だからって、今それをする理由には――。
俺がそれを言おうとした、そのときだった。
「……ちょっち、話しすぎたな」
翠名は小さく笑い、呟いた。
「――まぁいい。これで鍵を開けられる。……もしかしたら無理かもしれないが、『日本神話最強のカミサマ』ならば多少貢献はしてくれるだろう」
少しだけ、俺の意識が浮いた気がした。
刹那、俺は強引に意識を身体から引き剥がされた。
「ぐがああああああああああ?!」
「ありゃ? もしかして神憑きの精神も引っ剥がしちゃった系かな?」
笑っていた。
翠名創理はただ何をするのでもなく、笑っていた。
破壊、残虐、非道。
そんな行為をしている人間とは到底思えなかった。――強いて言うなら、新しい玩具を買ってもらった子供のような、恍惚とした表情。
翠名創理はそんな表情を、浮かべていた。
「……まぁいいや。ついでにあんたも連れていこう。なーに、人質ってやつだ。悪いことはしない」
俺の身体はふわりと浮かんでいた。――そして、その下には、また俺の身体があった。
……もしかして、幽体離脱ってやつなのだろうか。こんな状況でも落ち着いていられるのは、何だかおかしいものである。
しかし、幽体離脱をするにも何らかの条件が必要だ。……こんな簡単に幽体離脱させるなど可能なのか?
「ローレンツ力って知ってるかな?」
俺が気になっていた所に、翠名が助け船を出してきた。しかし、ローレンツ力って何だったっけ?
「……解らねぇみたいだな。ローレンツ力とは磁界と電子の速度に関係する力の事でな……。ローレンツ力を操ることは磁界か電子の速さの向きを変える必要があるだろう」
翠名の話は続く。
「電子銃を用いて電子の速度を上げ、かつ強磁界をかける……それにより生み出されたローレンツ力は身体から霊体を引き剥がすことだって可能というわけだ」
……つまり、俺がこの状態になったのは。
「――君がその状態になったのはオカルトではなく科学技術によるものだ。既にオカルトの技術の殆どは科学技術に代替が可能になっている。……終わりなんだよ、もう」
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