ルームメイトが幽霊で、座敷童。
地下の組織の不透明感
アドルフさんは人工進化研究所のドアをノックした。もちろん寂れたドアよろしく誰かが出てくるわけもなかった。
「……開いてる」
ドアノブを捻ると、開いていた。――誰もいないということだろうか?
「とりあえず行ってみる……か?」
アドルフさんは俺達に同意を求めた。
そして俺達は小さく頷き、アドルフさんを先頭に中へ入っていった。
中は暗くて何も見えない……というわけではなく、立方体の部屋の壁に一つづつ、計四つの明かりがあった。ただ、明るさ的には普通の豆電球ではないと思う。
「……気持ち悪い部屋だな。研究所の施設は愚かろくな明かりもありゃしない」
「ここってほんとに研究所として登録されてたんですよね?」
「あぁ、二〇一七年現在も『研究所』として登記されているし、研究の為の補助金も貰っているらしいな」
「……なんで?」
「実は二年前にここを家宅捜索したんだ。罪状は研究所の研究を高く買い取った企業の社長が研究所の所長を経由してインサイダー取引をした、ってことでな」
それは初耳だった。
「さっきの時に何故言ってくれなかったんですか?」
言ったのは祐希だった。
「……隠していたことは済まない。だがあまり重要な情報でもないように思えてな」
「――まぁ、ここで喧嘩をしても仕方がないです。さっさと済ませましょう。ここにあるのってのは猿の手だけですよね?」
めぐみさんが尋ねる。なんというか話数を重ねるにつれキャラが増えて、かつ俺の出番が少なくなってるのは気のせい……だと信じたい。
「だと思うがな」
アドルフさんは忌々しげに呟いた。
しかし階段か何か無いものだろうか。壁が黒い(電球で照らされた部分も黒いということはそういうことである)せいかこの部屋が無限に広がっているように錯視してしまう。
壁に寄りかかり、天井を見る。何度も調べたがここに追加の明かりがなく、スイッチも見当たらない。――つまるところ、八方塞がりである。
しかし。
ここで俺はふと思い付いた。
「なぁ、美夏さん。少し気になる点があるんだが」
「どうしたの?」
美夏さんは今、碧さんと同様に精神を三次元(四次元ともいうらしいが)空間に具現化していた。それでも、神憑きなど『こちら側』の人間以外には見えないようになっている。ご都合主義、ってやつだ。あまり追及することもないだろう。
「……『アマテラス』って漢字は『天』を『照らす』ものなんだよな?」
「その通りだ。疑似太陽を構成し、そのエネルギーを用いて悪を焼き尽くす。地獄の業火と比べても、あちらの方がまだ生温いだろう」
「……ちょっとここを明るくすることとか出来ない?」
俺は無理を承知で美夏さんに尋ねた。
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