ルームメイトが幽霊で、座敷童。
巫女の憑物の除霊作業(後編)
朝だったか夜だったかその時間は正確には解らなかった。姉ちゃんに叩き起こされた俺はまだ寝惚けていた。
「安崎さんが大変なんだよ! 急いで納屋に行くぞ!!」
納屋は家の裏にある。納屋とはいっているが、今は只の物置に過ぎない。その言葉を聞いて俺は寒空に飛び出すためジャンパーを羽織り、外に出た。
雪が降っていたのを覚えている。寒かったのはそのせいだろう。俺は空を見上げて……嫌な予感がした。
「大丈夫か? 納屋はもうすぐだ。寒いなら戻っていてもいいぞ?」
それは嫌だった。安崎さんが心配だったからだ。ずっと俺たちを支えてくれた安崎さんに何が……。それを気にかけても、やっぱり安崎さんのあの姿を眺めたかった。見て、安心したかったんだ。
納屋に着いた俺たちを待ち受けていたのは鉄の匂いだった。何故かは解らないが、それが血の匂いってのは直ぐに解った。近付いた。匂いはさらにきつくなる。納屋から……だ。
胸の鼓動がどんどん大きくなっていくのが解った。不安からだが、この鼓動を……押さえ付けられるのは出来ないんじゃないかとも思えてきた。
「開けるよ……っ!!」
扉を開けると更に生臭い匂いが鼻を刺激した。……たぶんこれは人の腐った匂いだろうか。
「安崎さん……?」
納屋の奥には蠢く人影があった。姉ちゃんがまず声をかける。
反応は、なかった。
即ちそれは、既に神降ろしが行われたことを意味しており――。
俺は二人目の大切な人を目の前で失った。
◇◇◇
「なにぼーっとしてんのよ!」
碧さんのビンタで俺はようやく長い回想から復帰した。痛い。
しかし、既に作戦は開始されていて……もうアルテミスの矢は発射まで僅かという刻。余裕すら生まれてしまうのも解るだろ?
「……ったく、ここまで振り回したんだからこれが終わったら神霊班のビルにゲームセンターの併設を注文するよ」
「ついにインベーダーゲームまで飽きたらず、そんなことまで?! もう碧さんオタクじゃねーか!!」
「残念ながらアニメはあんまり見てないのよ? 妖精さんとか心が交換されちゃったりとか決して逃げ出せないMMORPGとか?」
「案外見てるじゃねぇか!」
「でもまぁ、夏は嫌いかなぁ」
「もういいよ! ……ったく、とりあえずゲームセンターの用件はなし! 絶対通らねぇよ!」
「そうかしら? 案外笑い飛ばせるかもよ?」
――アルテミスの矢は、俺たちのそんな茶番を他所に発射準備を進めていた。
「ルームメイトが幽霊で、座敷童。」を読んでいる人はこの作品も読んでいます
-
彼処に咲く桜のように
-
28
-
-
神官マオは鈍器で女神の教えを広げたい
-
0
-
-
許嫁は土地神さま。
-
33
-
-
ソルミア魔獣討伐記〜魔獣になった彼女と共に〜
-
2
-
-
普通の学校に通うちょっと普通じゃない(性格が)高校生たちの恋愛日常
-
6
-
-
妖精の羽
-
6
-
-
砂鯨が月に昇る夜に
-
8
-
-
俺と彼女と小宇宙とが織り成す宇宙人とのラブコメ
-
1
-
-
聖獣物語 〜いざ頂点へ〜
-
4
-
-
寿久くんのスマートフォンは面倒だが超絶可愛い
-
1
-
-
Bouquet of flowers to Messiah
-
6
-
-
迷探偵シャーロットの難事件
-
9
-
-
沈黙の籠城犯
-
6
-
-
名探偵の推理日記〜仏のしらべ〜
-
4
-
-
青春ゲーム!
-
34
-
-
殺しの美学
-
10
-
-
君の嘘は僕を救う
-
5
-
-
僕は間違っている
-
5
-
-
連奏恋歌〜歌われぬ原初のバラード〜
-
11
-
-
命の物語
-
11
-
コメント