ルームメイトが幽霊で、座敷童。

巫夏希

巫女の料理は魑魅魍魎

「……さてと、何を作りましょうか」
「は、はい! 今日は青椒肉絲を作りましょう!」
「むむ、難しくないですかね?」
「大丈夫ですよ! これでも私料理の腕は……!」

 そこまで言うなら料理は班長さんに任せることとしよう。俺は得意料理は茶漬けというくらい料理ができないので助かった。まあ……インスタントのカレーパウチをお湯で入れて沸かして食べる巫女さんもそれはそれで魅力的だが……。

「まずピーマンをざく切りにします」
「はい(え? 短冊切りじゃね?)」
「次に、筍をみじん切りに……ガーリックパウダーをひとつまみ……セミの抜け殻……」
「ストップ!! 今何入れました?!」
「何って……セミの抜け殻ですよ? パリパリしてて美味しいんですよ」
「いやいや、普通の人間は食べませんから!」
「そうですか? でもお兄ちゃんは気絶しそうな勢いで食べてますけど?」
「そうですか……(それは気絶してると言うんですよ)」

 ……とは言えず、仕方ないので俺はそのままにしとくことにした。何、青椒肉絲は所詮炒め物だ。煮込むわけでもないから、セミの抜け殻の味が伝わることなども……ないよね?


**


「はいはーいお待たせしました青椒肉絲でーす!」
「いや待って!! なんで青椒肉絲なのに鍋?! 土鍋?!」
「いや、それのが美味しいじゃないですか。味しみて……」
「そうじゃなくて!!」

 あーもう予想外すぎた!! このままだと全員食中毒か未知の病気にかかって死ぬぞ?! 急いでこれをどうにかしなければ……。

「あーうめー」
「美味しそうな香りだよね。祐希、どうよ?」

 もー食っちゃってるし!! おまえらちょっとは危機管理しろよ!!

「このパリパリがいいね~。なにこれ、春巻きの皮?」
「まあ、そんなもんです」

 さらっと嘘ついたよこの子!! 末恐ろしい!!

「……食べないんですか?」
「女の子の食事を断るとか、男子の風上にも置けない」
「そーだよリト。そんなことしてたらモテないよー。あースープおいしいー」

 ……ちくしょうっ!! おれが押しによわいことを知ってて!! 仕方ねえ!! 男だ!! 食うしかねえ!!
 そう思って、箸を掴み具材を取り、ちゃんと感謝も込めて、青椒肉絲もどきを口に入れた――!!




 ――途端、視界が暗転し、俺はそのままの状態で倒れていった。





 やっぱり、セミの抜け殻はあかんかったんや……いや、もしかしたらそれ以上に何か入れた可能性も……ありえなくはない。

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