ルームメイトが幽霊で、座敷童。
姉と弟の極小戦争(後編)
「いやぁ、リトも変わらんなぁ」
「そんな何年も会ってない体で話してるけど一週間ぶりだったよな?!」
やはり姉ちゃんは苦手である。女性にある程度の苦手意識があるのは姉ちゃんのせいではないかと思うくらいだ。
「まぁそりゃいいけどさ……。たまには実家帰んなよ。母さんも心配してるし」
「……どうせ母さんは俺が出来損ないとか思ってんだろ? 由緒正しい瀬谷家の伝統“神憑き”が出来なかったんだしな」
「……まさかあんたそんなつまんないことで根腐れてたの? 馬鹿みたい、ほんとに馬鹿よあんた」
「なら、姉ちゃんにはわかんのかよ!」
俺はもう姉ちゃんを殴ってやろうかと思った。神憑きってのは簡単なことで、カミサマが人間に取りつく――主従関係を持つみたいな感じだな――ことでそれが出来るのは四分家のみだ。河上、海馬、陸稲、そして瀬谷だ。彼等はカミサマの力を背に幽霊や妖怪と立ち向かうため、宮内庁神霊班に入るのが当たり前となっていた。しかし、俺がそれを破った。俺のあと河上家の誰かが俺と同じことをしたらしいが、そこまで詳しいことは知らん。
「……まぁいいや。あんた来週こそは帰ってやれよ。なにがあるかは言わなくてもいいよな?」
そう言われて俺はカレンダーを見て――あぁ、あの日だなと思わず呟いた。
「……父さんの十回忌か」
「そうだ。必ず来いよ? ……お前が長男なんだからな」
「……わかってるよ」
俺がそう返事したら姉ちゃんは振り向いて玄関の方に向かってった。おいおい、もう帰るのか?
「まだ仕事が有り余ってるんだよ。お前の手を借りたいくらいだ」
「……暇ではあるけど。そうだ、祐希元気?」
「祐希か……。まぁ色々とあったらしいがまだいるぞ。それも兼ねて会いに行くか」
「……そーすっか」
「なんだ、出掛けるのか?」
「なんでこのタイミングで幽霊さんやってくるんですかね?!」
「おっ、碧さんも久しぶり。これお土産」
「うなぎパイ? でもこれって精力つけるやつでしょ? ……まさかあいつと?」
「いいねー出来たら! ノーベル賞狙えるんじゃない?」
「そんなんでノーベル賞取りたくねーよ!!」
とりあえず姉ちゃんと碧さんは相変わらずチャンネルが同調しやすいらしく、話が合うらしい。俺は強引に碧さんを引き連れて(この際ドアが崩壊した俺のアパートは後回しだ)、姉ちゃんのスポーツカーに乗り込んだ。
「ちょっち急いでっからシートベルトちゃんとしてなー」
「……は?」
刹那。
俺は舌を噛み千切ってしまうかと思った。
恐ろしい速度(たぶんスピードメーカーは振り切れていた)でスポーツカーは発進、夜の街へと繰り出した。
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