ルームメイトが幽霊で、座敷童。

巫夏希

屋敷と武士道と西瓜畑

「おやおや、こんな遠いところまでよくお越しいただけました……大変でしたでしょう?」

 ええ、確かに都会おれのまちから電車で乗り継ぎして二時間かかってしかもそのあとバスで三十分も乗ってましたからね。大変でしたよ?

「うーん、そうですね。少しだけ……」
「私はそうでもないかなー」

 お前は関係ないだろっ!! だってふわふわ浮いてたし!!

「あーどうも、俺、いや僕が今回の担当させていただきます、瀬谷です」
「瀬谷くんね、覚えたわ」

 覚えるの早いなこの人。すげえおばあちゃんっぽいのに。いい感じに白髪と茶髪が混じっていい感じの女優っぽいのに。なんか三十人くらいの親戚がいて、警視総監と旧知の友っていう人っぽいのに。

「……さて、ご案内するわ。ここは古く忍者屋敷としてなっててね、迷っちゃうのよ」
「はあ、そうですか」

 というわけなので、俺はそれに従うことにした。というか碧さんすっごい暇そうだけど、まさかそんなにスマフォがいじくりたいんで?

「あっ、私の名前は城東佳苗。佳苗さんとでも呼んでくださいな」

 老齢な淑女、佳苗さんは嗄れた声で言った。頼り甲斐がある。碧さんとは違うね。

「何か言ったか?」
「……何も」

 俺は誰にも聞こえないように、碧さんの嫌味をはねとばした。そうでもしないと呪い殺されるからな。いや、割りとマジで。
 まあ、この忍者屋敷。入る前からおどろおどろしい気配がするのにはかわりはないんだけどな――。


**


「いいですか? 幽霊ってのは現世になにかやり残しちゃったことがあるんですね。んで、それを俺が“対話”して聞き取ります。そんで、そのやり残しちゃったことをここで解決させます。すると、幽霊ってのはあっという間にあの世に逝っちまいますんで。わかりましたか?」
「……なんだか意外とあっさりしてるのね」
「ええ、よく言われます」

 俺は手順を教えた。手順を教えるのは当たり前のことだが、教えるのがめんどくさいくらい簡単なのだ。何をすればいいかって? それは簡単だ。『幽霊と対話する』ことだ。だが、悪霊になりゃなるほど対話が難しくなってくる。そのときはどうすればいいかって? ……そのときの碧さん、ってわけだ。

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