桜舞う丘の上で

りょう

第52話 3:1=修羅場

              第52話 3:1=修羅場

1
それから数十分の鬼ごっこを終えて、何とか帰宅。二人のこの世の物に思えないほどの殺気も、何とか消えたみたいだし。
「何かこの世の物に思えないほどだって?」
いえ消えていませんでした。
「本当私が知らない所で何をやっていたのかしらね愛華」
「分からない。でもろくな事していなかったんじゃないの?」
「あ、それはそうかもね」
「本当にごめんなさい」
うぅっ、僕が考えたんじゃないのに、何で謝らなきゃいけないんだ。
「まあまあとにかく二人とも、荷物を置こう」
ここで桜が助け舟を出してくれたので、この場は回避でき…。
「何であんたに指示されなきゃいけないの?」
なかった。
「いやいや凛々、桜はこの家の住人なんだよ? ちゃんと従わなきゃ…」
「結心は黙ってて!」
更に怒られました。何て理不尽な!
「あなたは一体、結心の何なの?」
「私はゆーちゃんの彼女よ」
「彼女ってまさか、この前結心が言っていたのってこの子?」
「いやそれは、少し前から言っているはずだけど」
「私から結心を奪った…」
「奪ったって、言い過ぎだよね?」
「私のお兄ちゃんを…」
「僕はいつから愛華のお兄ちゃんになったっけ?」
ああもう面倒くさい。この場に男一人だけだと、明らかに修羅場にしかならない。三人の間には何かパチパチと音が聞こえるし。
秋久さん達、早く帰ってこないかな…。
2
修羅場は夜になっても続いていた。
「あのさ、喧嘩するのは構わないんだけどさ」
「何よ?」
「僕の部屋でやるのは止めてほしいな」
秋久さん達が帰ってきた後も、こんな空気なのに身が持たない。しかも場所が僕の部屋だから、逃げ場がどこにも無い。何か回避する方法は…。
「あ、そ、そう言えば三人とも」
一つだけあった。
『何よ(ですか)?』
三人の視線が一気に集まる。うわ、怖すぎる。
「あ、明日さ桜島全体で夏祭りがあるんだけど、良かったら一緒に行かない?」
『夏祭り?』
同時に喋るから尚更怖い。
「ど、どうかな?」
恐る恐る三人に聞く。この状況なら、答えは一つだけだと思うけどね。
『行く!』
ほらやっぱり。ただ、一つ面倒くさいのが、
「何であなたがついて来るの? 彼女である私が、ゆーちゃんと二人で行くべきなのよ」
「違うわ。幼馴染である私が」
「あ、お姉ちゃんずるい」
こうなる事だ。
「ねえ、そんなに争うなら四人で行こうよ」
『それはお断り!』
ああ余計面倒くさい事になっちゃった。
これって僕が選ばなきゃいけないパターンだよね?
さて、困ったな…。
答えは決まってるんだけど、二人はどうしようかな…。何かいい方法があれば…。
                              第53話 迷いなき心 へ続く

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