桜舞う丘の上で

りょう

第34話 全ての終わり そして始まり

        第34話 全ての終わり そして始まり

1
二人に呼び出された放課後の屋上にて。
「ねえ結心、何で私達が一緒にじゃなくて個別で呼んだ理由は分かる?」
「理由?」
「あれ? 分からないの? 変だね。一番分かってるはずなのに」
「おかしいね」
二人に詰め寄られて何にも言えない僕。
分かっているさ。告白された本人なんだから。でも、それを言うのが怖い。
「あーあ、黙っちゃった。ねえ結心、私ちゃんと告白できてないけど、ちゃんと答えてほしいんだ。特に愛華はちゃんと告白したんだよ! 好きだって。私も結心の事が好きだし、付き合ってほしい。ずっと側に居て欲しいから、今日チャンスをあげたの。この場でどちらかを選んでもらおうって。分かる?」
「…うん」
「結心お兄ちゃん、私この一年間あの日の答えをずーっと待っていたんだよ。なのにどうして逃げようとするの!」
二人は完全に怒っている。当たり前だ、僕は一年も答えから逃げてきたんだ。二人の気持ちから、怖い事から、全部。
「お願いだから今この場で答えを出して。そしたらまた、三人で遊びに行こうよ。愛華もそう思うよね?」
「うん。私もみんなで遊びに行きたいもん」
「二人とも…」
あの頃に戻れるならこの場で答えを出せる。でもその答えは二人を傷つけそうで怖い。僕にはどちらを選べないから。情けない人間だから。それを言えばいいのに僕は…。
「ごめん二人とも…やっぱり答えは出せないよ…」
また僕は逃げ出した。
2
これには流石に二人も予想外だったのか、怒りを通り越して呆れていた。
「どうして…どうしてよ結心! 馬鹿じゃないの! 馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿! もう知らない!」
それだけ言うと凛々は出て行った。
「はぁ、もう本当に知らないよ結心お兄ちゃん。 ここまで馬鹿だとは思わなかった!」
そして愛華も…。
僕はこの日、大切な物を全て失った。
全てが終わった。
僕は駄目人間になった。
僕はまた、あの辛い人生を味わうことになった。
僕は…。
3
いじめを受け、親からは見捨てられ、僕の居場所はどこにもなかった。それでも生きようとした。前を向こうとした。でも無駄だったんだ。頑張ったって、何にも変わりやしないんだから。それでも少しだけ信じてようかと思った。人は変われるんじゃないかと。だから僕は、高校二年生の春、桜島に転校したんだ。
もう一度だけ自分にチャンスを与えるために。
4
「はぁ」
話は再び今に戻る。風呂で色々な事を考えている内に、時間だけが無駄に過ぎてしまった。
「早く出ないと」
本当は何にも答えを出そうとはしていなかった。でも凛々に何も変わっていないと言われて、心が揺れ動いた。桜島で少しは変わったかと思ったけど、僕は何にも変われていなかったんだ。
だから変わろうと思った。もう一度零から始めようと思った。
僕には今好きな人がいる。だから、今日こそあの時の答えを出せる。
僕はもう逃げたりなんかしない! 
                                                         第7章 完
                      第35話 あの時の答えを へ続く

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