桜舞う丘の上で

りょう

第11話 誰かの為に

                    第11話 誰かの為に

1
「へぇ、昨日そんな事があったんだ。」
「うん。」
翌日、その事を桜に話してみた。
「柚木加奈ね・・。その子高校生なんだっけ?」
「うん。僕達の一個下なんだって。学校には来てないらしいんだけど。」
「そうなんだ・・。」
柚木加奈
昨日出会った少女(高校生だったけど)の名前だ。彼女は毎晩あそこで同じ景色を眺めていて、いつも同じ様な事を考えているらしい、
『私も他の人と同じ様に遊んだりしたいんだ。』
と彼女はそう言っていた。叶えたくても叶えられない夢、僕達は何か彼女にしてあげられないのだろうか?
「そうは言っても、私達ができる事なんてないんじゃないの。」
「確かにそうだけど・・。」
彼女は言っていた、リハビリを重ねれば、歩く事が可能になると。でも、リハビリが怖くてずっと逃げ続けているんだって。
「だったらさ、ゆーちゃんが頑張っているところを彼女に見せれば、いいんじゃないかな?それだけでも、きっと勇気は湧いてくると思うよ。」
「勇気を与える・・か。」
今までの僕なら、誰かの為に何かをしようとは絶対にしなかった。自分の事で精一杯だったから。でも今なら。
「よし、頑張るよ僕。彼女の為にもっと頑張るよ。」
よし、新しい目的がまた1つ生まれた。
「でも昨日の練習は、それだけで終わっちゃったんでしょ?」
「それ言わないでよ・・。」
2
そこから連日練習に励み、練習が終わる度に加奈に会いに行った。
「体育祭?」
「うん。折角だから見に来てほしいんだ。」
で、今日は体育祭2日前。まだ体育祭の事を彼女に話していなかったので、僕はある程度の事を話した。
「うーん、行ってもいいんだけど・・。」
「?何か用事があるの?」
「ううん。ただ、思い出しちゃうのが嫌なの。」
「思い出すって何を?」
「それは・・・・。」
その後彼女の口から語られた全ては、僕に衝撃を与えた。そして・・。
「そんなのって・・。」
「結心君?」
「そんなのってないよ!」
「え・・。」
「どうして・・。どうして・・。」
僕の中でまた1つ、新たな決意をさせるキッカケになった。
「どうしてそんな事で、1人の人生を無茶苦茶にされなきゃいけないんだ・・。」
心の底から湧き上がる『怒り』という感情と共に・・。
                            第12話 前夜の訪問者へ続く

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