今宵、真紅の口づけを

少年の決意

 嬉しかった。
 姿を見たとき、身体が震えた。
 自分がどれだけ会いたかったか、改めて痛感した。



 紅い瞳が大切な人間の命を奪った。
 その日のことは、家族を奪われた時と同じで忘れる事などできない。
 毎晩夢に見て、目覚めて、吸血族を憎む心と、もう会えないアーツを思い出して涙した。



 でも。
 そんな中でも、やはり会いたいと思った。
 あの金色の髪の毛を撫でて、真紅の瞳を見つめて、可愛らしい笑顔を見せて欲しいと思った。
 憎しみ以上に存在する愛情に、俺は勝てなかった。



 馬鹿だといわれるかもしれない。
 他の人間が聞いたら、俺は気がふれていると思われるかもしれない。
 それでもかまわない。
 そう思うくらいに求めていた。



 エレオノーラを。



 どんな姿でも、エレオノーラは俺にとっては大切な存在だから。
 青い瞳でも赤い瞳でも、あの笑顔の中にある清らかな心は変わらない。
 どこまでも純粋で澄み渡る空のように綺麗な心は、人間でも魔族でも、変わらないから。
 そんなあの子が好きでたまらないから。



 この先、神が許してくれなくても。
 共にありたい。
 いや。
 離れない。
 何があっても、絶対に。

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