約束の指きり

りょう

第41話

                第41話 親友でありライバル

「わあ、すごい。」
私が連れてきたのは、デパート内に最近できたスイーツバイキングだった。彼女はかなりの甘党だというのは、本人も公言していて、機会があったら連れてこようと思っていたのだ。
「少し前に自分で甘党って言ってたでしょ?だからどうかなって。」
「わーい。」
一人はしゃぐ彼女に私は苦笑いした。本当にこの子は、同学年なのだろうか?一日一回は思っている。
「さてと、今日は私のおごりだから沢山食べてね!」
「うん!」
・・・・・・
「ねえねえ、由紀ちゃんは拓の事どう思っているの?」
「え?」
スイーツを食べながら突然春香ちゃんが聞いてきた。
「と、突然どうしたの?」
「何かふと思ったから聞いてみたんだけど、駄目だったかな?」
「そ、そういう訳じゃないけど・・。」
あまりの突然の質問に動揺してしまう。だって、私の目の前に居るのは親友であり、お互い拓の事が好きなライバルでもあるんだから・・。
「私は・・拓の事が好きだよ。」
「やっぱり?私も拓が好きだよ。でも・・。」
そこまで言ったところで春香ちゃんは黙ってしまった。どうしたんだろう?
「どうしたの?春香ちゃん。」
それでも黙っている彼女に、私はどうすればいいのか分からず、彼女が喋り出すまで黙っていた。
「でも・・私はもう拓と一緒に居られない・・。」
「春香ちゃん・・。」
明日で春香ちゃんが居なくなる・・。それは忘れてはいけない事実。
「本当はもっと側に居たい・・。会いたいと願ってようやく会えた人に、たった一ヶ月で別れなきゃいけないなんて、嫌だよ・・。」
春香ちゃんは泣き出してしまう。それに対して私は、彼女にどんな言葉をかければいいか分からなかった・・。二度と会えないなんて私だって考えた事がなかった。だから、言葉を見つける事なんて出来ない・・。
「嫌だよ・・、嫌だよ・・。」
・・・・・
その後まともに食事ができるわけがなく、結局デパートを出ることになった。
「春香ちゃん、大丈夫?」
「うん。少し落ち着いた・・。」
「それなら良かった・・。」
外はすっかり暗くなっており、辺りは街灯の光だけで照らされていた。
「じゃあまた明日・・。」
「うん・・。」
帰り道もほとんど会話をする事なく、私の家の前に着いてしまった。
(また明日・・か。)
彼女にそれを言うのは今日で最後。彼女に明後日はない・・。明日しかない・・。このままで良いのかな・・。
「ちょっと待って春香ちゃん。」
私に背を向けて歩き出した彼女を呼び止める。このまま明日を迎えるのは、心残りになってしまう。だったら・・。
「どうしたの由紀ちゃん?」
「よかったら今日、私の家に泊まっていかない?」
                                                  第42話へ続く

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