約束の指きり

りょう

第40話

             由紀編 第40話  嫉妬と後悔

「どうしたの春香ちゃん?急に私の家を訪ねてくるなんて。」
夏休みも残り二日となり、いよいよ明日春香ちゃんが居なくなる。そんな日の午後、春香ちゃんが突然私の家に訪ねてきた。
「実は・・。」
彼女からある程度の理由を聞く。
「なるほど、一昨日は健の家に遊びに行ったから、今日は私の家に来たんだ。じゃあ、最終日は拓の家に行くんだ。」
「そうなの。私と由紀ちゃんで二人きりになるなんて、初めてでしょ?」
「確かに言われてみれば、そうかもしれないね。」
「だから今日は、由紀ちゃんと半日一緒に過ごすの。」
まるで子供みたいな言い方だけど、それが春香ちゃんらしいのかな?
「分かった。じゃあ、今日はせっかく天気がいいし、一緒に出かけない?」
「うん。行く!」
という訳で私は、春香ちゃんを連れて近くのデパートへ買い物に行くことになった。
・・・・・・
「それで何を買うの?」
炎天下の中をくぐり抜けて、デパートに着くと春香ちゃんが尋ねてきた。
「それは秘密。」
「えー、どうして?」
「あとで分かるから楽しみにしていて。」
実はというと今日デパートに来たのは、買い物目的じゃなかったりする。他に理由があるのだけど、それは春香ちゃんが関わっていることなので、今は秘密にしておく。
「まずは三階のゲームコーナーに行こう。」
「買い物するきないの?ただ遊びに来ただけ?」
「じゃあ春香ちゃんは行かないのね。それじゃあね。」
「自分から行こうって言ったのに、その扱い方ひどくない?」
「冗談よ冗談。ゲーセンには行くけどね。」
「あ、ゲーセンに行くんのね。」
そんなくだらないやり取りをしながら私は、彼女と居られる残り少ない時間を、とにかく楽しんだ。けど・・。
(さっきから湧いてくるこの感情はなんだろう・・。)
本当は考えたくない。春香ちゃんとこうして二人で買い物が出来るのが、今日が最初で最後・・。今まで、どうして一度も彼女とこうして出かけなかったんだろう・・。理由は何となく分かる気がする。私は彼女に・・。拓と何度も二人で一緒に居た彼女に・・。
嫉妬をしていたんだ・・。
だから・・。私は・・。
「由紀ちゃん、どうしたの?」
ボーッと考え事をしていると、春香ちゃんが心配そうに顔を覗き込んできた。
「あ、ごめんごめん。ちょっと考え事していたの。」
「ふーん。」
ど、どうしよう。急に空気が重くなっちゃった・・。何か明るくなる方法があれば・・。あ、そういえば。
「そ、そうだ。今から行きたいところがあるんだけど、行かない?」
空気を取り戻す為に、明るい口調で言った。あそこなら春香ちゃんは・・。
「どこに?」
「春香ちゃんが絶対喜ぶ所よ。」
私は今日の一番の目的地、彼女が一番喜ぶ場所へと連れて行った。
                                                   第41話へ続く

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