約束の指きり

りょう

第34話

                       第34話 夏祭り

八月も後半になり、夏休みも残りわずかとなったある日、いつもの四人で僕の家で夏休みの宿題を片付けていた。
「あれ、春香は宿題終わったの?」
「う、うん。夏休み始まってすぐに終わったよ。」
「いいよなぁ。」
「で、でしょ。」
勿論春香が嘘を言っているのは、健も由紀も分かっている。春香は死んでいるのだから、宿題なんてあるはずがない。春香自身は頑張って会話を合わせようとしているけど・・。
「そういえば、明日近くの神社で夏祭りやるんだよね。」
「そういえばそうだな。」
「夏祭り?」
「うん。春香は行った事ないの?」
「あまりない。本当に小さい頃だったと思う。」
それなら覚えているわけないか・・。僕はそう思った。友達があまり居なかったって言っていたから、一緒に行く人が居なかったんだろう。だったら・・。
「じゃあ明日、みんなで行く?夏祭り。」
「え?」
「そうだな。宿題さえ終われば、行けるしな。」
「うん。行こうよみんなで。夏休みの思い出を残そう。」
「いいの?」
「うん。みんなで夏休みの思い出、作りたいでしょ?」
「うん!」
夏祭りに行くのは春香の為でもあるけど、僕達四人での思い出を作りたい。今の時間を沢山楽しみたい。だから・・。
「よし、意見が一致したし宿題をさっさと終わらせよう。」
『おー!』
・・・・・・
次の日の晩、僕と健は春香と由紀よりも先に神社に到着した。
「遅いな二人とも。」
「うん。」
もう既に三十分待たされている。何をしているんだろうか・・。
「ごめん待たせた二人ともー。」
それから更に十分後、遠くから由紀の声が聞こえて来た。
「あ、来たね。」
「ああ。」
声がした方を見る。その先には走ってくる二人の影が見えた。
「お、おい。拓・・。」
「う、うん・・。」
走って来たのは春香と由紀なのだが、その格好が・・。
「浴衣だ・・。」
「浴衣だね・・。」
二人の格好が浴衣だった。
「ごめんね二人とも待たせて。浴衣を着付けていたら時間がかかっちゃった。」
「はぁ。はぁ。由紀ちゃんに浴衣着付けてもらっちゃった。」
これは・・。
『か、可愛いー!』
あまりの綺麗さに僕達は同時に叫んでしまった。
「ど、どうしたの。二人とも?」
                                                   第35話へ続く

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