約束の指きり

りょう

第1話

         第1話  一日喫茶店アルバイト(1)

夏休みに入った次の日、健から一本の電話が掛かってきた。何だろうと思い電話に出ると、一言目に健はこう言った。
「なあ拓、今から喫茶店でアルバイトしねえか?」
「え?アルバイト?」
「ああ。家の近くに喫茶店があって、夏休み一日限定でアルバイトを募集していてな。来週旅行だから、その足しにもと考えたんだが、どうだ?」
「構わないけど、アルバイトって高校生に入ってからじゃなかったって?」
「そうらしいけど、人手が足りないらしいから、中学生も募集したらしいぜ。」
「ふーん。喫茶店でアルバイトか・・。」
「まあ、お前が何を言っても、申し込んじゃったから意味がないけどな。」
「なるほど・・って、じゃあ何で電話したの?そもそも勝手に申し込まないでよ!これじゃあ、断れないじゃん。」
「そもそもお前に断るっていう選択肢は無い!」
「いやいや、そんなキッパリ言われても困るんだけど・・。」
「とにかく、断れねえから来てくれ。由紀と春香ちゃんも誘っておいたから。」
「はぁ、分かったよ。」
その後集合場所と時間を聞き、電話を切った。
「アルバイトか・・。」
・・・・・
お昼すぎ僕は集合場所である、いつもの公園へやって来た。
「あれ?春香しかまだ来てないんだ。」
「あ、拓も来たんだ。」
「うん。勝手に申し込まれたから、断れなかったし。」
「やっぱりそうだよね。勝手すぎるよ~。」
春香とそんな会話していると、僕はつい先日のデートの事を思い出した。そういえば健と由紀がストーカーしてきたけど、あれって何だったんだろう。まあ、多分面白がってついて来ただけだと思うけど・・。
「あ、そういえば拓。」
「ん、どうした?」
「昨日はありがとう。」
「昨日って、デートの事?」
「うん。私拓と一緒に過ごせてよかった。」
「お礼を言われるほどの事はしてないけど、楽しんでくれたなら嬉しいよ。」
「ありがとう。」
満面の笑顔で言う彼女に僕はドキリとしてしまう。い、やっぱり僕は春香が好きなんだな・・。
「どうしたの拓?にやけちゃって。」
「え、べ、別に何でもないよ。」
「怪しい、何か考えてたでしょ?」
「な、何も考えてないよ。」
「その慌て方だと、何か考えてたわね。例えば・・夕飯の事とか!」
「何で夕飯の事になるの!」
「私はいつもそうだから。」
「春香の事と絶対関係ないよね!」
下らないやり取りをしている内に健と由紀がようやく到着した。
「お、二人とも早いな。」
「ごめんね待たせちゃって。」
これで全員揃った。
「んじゃあ、揃った事だし行くか。」
「「「おー。」」」
                                                  第2話へ続く

コメント

コメントを書く

「その他」の人気作品

書籍化作品