約束の指きり

りょう

第33話

             第33話 あの時と変わらない自分

結局僕は、観覧車の中では答えを出せなかった。どう答えれば良いのか分からなかったからだ。そのまま遊園地を出た後も僕は答えを考えていたが、出る事なくいつの間にか家の近くまで来ていた。
「拓、やっぱり答え出してくれない?私このまま帰るのはやだよ。」
ずっと黙っていた由紀が口を開いた。やっぱり、答えを出さなきゃダメなのか・・。
「ごめん・・。」
「私は二年間、拓がいつか答えを出してくれると信じて待ち続けた。なのに拓は何一つ変わってない。結局答えを出すのを怖がって、逃げてるだけ。」
「・・・。」
確かに由紀が言っている事は正しい。僕はあの時から全く成長していない。何も答えを出せずに、逃げるのが僕だ。それを変えようと思っている。でも出来ない。原因はやはり春香の事だった。以前から彼女が好きだった僕は彼女が何者でも全てを受け止めようと決めた。そして、彼女が死んでいると知って、動揺はしたものの何とか乗り越えた。旅行の夜に告白された時だって、両想いという事を知り、喜んだ。頭の中は春香の事で一杯になった。でも今日由紀に告白されて、僕の心はまた変になってしまった。自分がどうありたいか分からなくなってしまった。だから、二年間も自分を思ってくれた人、死んでもなお思ってくれる人、どちらかを選ぶ勇気は僕には無いのだ・・。普通に考えれば今居る由紀を選ぶ、でも春香からもさらに強い思いを感じる。どうすれば・・。どうすれば・・。
「いつまでも黙ってないでよ。どうせ春香ちゃんが好きだから、どうすればいいのか分からないんでしょ?だったら言ってよ。付き合えないって!私はそれでもいい。たとえ振られても、私は拓を思い続けるから。」
「由紀・・。」
今にでも泣き出しそうだった。振られても思い続けてくれる。今の言葉は僕にとって救いの言葉。それなら答えは出せる。出せるのにそれは・・。
「拓?どうしたの?」
「無理だよ・・。」
「?」
「やっぱり僕には無理だよ!どちらかを選ぶなんて・・。二人とも好きだから無理だよ・・。」
我慢していた涙が一気に流れ出す。僕にどちらかを選ぶなんて無理なんだ・・。二人とも僕は好きだから・・。
「それが答えなの?」
「うん・・。」
僕がそう頷くと、由紀はため息をついた後、こう言った。
「もう、拓ったら・・。そんなに泣いて情けない。分かったわ、それが答えなら私がやる事はただ一つ。」
「やる事?」
「それはさっきも言った通り、拓が私だけを好きになるまでずっと想い続ける事。いくら当たって砕けてもずっと拓を思っているから・・。」
そう言って優しく微笑む彼女に僕の涙腺は簡単に切れてしまった。僕は・・、ぼくは・・。
「うわーん。ごめん由紀~。」
「よしよし。」
由紀にひたすら謝りながら、泣き続けた。そんな僕を見て、由紀は優しく包み込んでくれた。包み込みながら彼女はこっそりこう呟いた。
「好きな人が一人になるまで、私待ってるからね・・。拓・・。」
                                                  第34話へ続く

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