約束の指きり

りょう

第29話

               第29話 瑞季が望むこと

「それで拓、話って何?」
「・・・・。」
放課後、僕達三人はあの公園に集まった。健も返事はしなかったけど、ちゃんと来てくれたので、僕は一安心しながらすぐに本題に入る事にした。
「今日こうして集まってもらったのは、他でもない瑞希の事で話があったから。」
「瑞希の・・事?」
久しぶりに健が声を発する。その声は本当に弱々しく今にも消されてしまいそうだった。
「そう。この一ヶ月で僕も沢山あったから。」
そう前置きをした後、僕はずっと考えてきた事を話し始めた。
「今見ての通り僕達は、瑞季が死んだ事をずっと引きずっている。それは確かに間違ってはいないけど、それをいつまでも続けていいのかなって。」
「何が言いたいの?」
「小学生の僕達には、あの出来事をそう簡単に忘れられるはずがない。僕だってこれから先ずっと、忘れられないと思う。でも、それを理由に立ち止まり続けていていいのかな?そんなの瑞季は望んでいるのかな・・。」
「・・瑞希の望んでいる事か・・。確かに拓の言う通りかもな。確かに俺達がいつまでもこうして立ち止まってるのは、決して瑞季は望んでないよな・・。」
健が小さな声で答える。今回の件で一番ショックを受けているのは健だけど、一番乗り越えなければならないのも健だ。それを由紀が後押しをする。
「うん。健や拓の言う通りだよね。残された私達がいつまでもショックを受けていたら、瑞希ちゃんはきっと怒ると思う。」
「うん。だからさ、今すぐじゃなくてもいい、ゆっくりその傷を僕達自身助け合いながら、これからも頑張って行こう。」
「「うん!」」
・・・・・
という事が今から四年前僕達にあった。確かにこれだけの年月が経てば、少しは癒えたかもしれないけど、由紀は由紀で少し過ぎかもしれない。
「あのさ二人とも、ちょっといいかな?」
「どうしたの拓?」
先程の言葉にずっと黙っている健に代わって由紀が答える。
「今さ昔の事を思い出していたんだけど、その時にふと思ったんだけどさ。」
「何?」
「僕達あの事件以来一度も瑞季の墓参りに行ってないよね。」
「そういえば・・。」
「だから折角だし今から瑞季の墓参りに行かない?この話はまた後にして。」
                                                 第30話へ続く

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