約束の指きり

りょう

第26話

               第26話  過去を乗り越えて

「この一週間で俺も考える事が沢山あったんだ。あの時、俺はお前に相当ひどい事を言ったかもしれないが、あれが俺の気持ちだった。」
一週間振りに再会を喜びながらも、僕達は本題である春香の事を話した。健にも健なりに考える事があって、あの時あの言葉を言ったのは、僕だって分かっていた。
「俺はもう誰かを失うような事が起きなければいいと思っていた。けど春香は既に亡くなっているって聞かされたら、ショックを隠せるはずがない。これじゃあまた、あの頃と全く同じ事を繰り返してるだけで、俺は何一つ成長してなかったんだって・・。」
実は小学校の頃、交通事故で大切な人を失っている。それが自分のせいだと今でも思っている彼は、春香の事も自分の責任だと思っているのかもしれない。けど、それは全く違う。
「健、いつまでもあの事を自分のせいだと思っているつもりなの?あれは全くもって健のせいじゃないし、春香の事は尚更だよ。」
「確かにな。けどよ、昔のトラウマが消えねえ限り、どうしても俺はそう思っちまうんだよ。」
「健・・。」
彼の言葉に何も言えない僕に対して、由紀は違った。
「本当健は馬鹿。いつまでもそんなくだらない事を引きずってるなんて、情けないよ。」
「何だと由紀?もう一度言ってみろ。」
「情けないって言ってるのよ。」
「お前に何が分かるんだよ!そんなにくだらない事なのかよ!」
「そうよ。いつまでも過去に囚われていて、かっこ悪くないわけ?私だって人には言えないような傷を抱えてる。だけど、それを乗り越えたからこそ、今の私が居る。春香だって、自分の死を受け止めて私達に常に笑顔で振るまっている。拓だって・・。」
そこまで言って、由紀は言い疲れたのか、そこで止まってしまった。健はというと、彼女の言葉がかなり響いたのか、ずっと黙ったままだった・・。
(もうあれから、何年が経ったのかな・・。)
健の好きだった人のことは、ハッキリと覚えている。何故なら、僕も好きだったから・・。
(瑞季ちゃん・・。)
彼女、安田瑞季との出会いは今から四年前、小学校四年生の頃の話に遡る。
「あの、良かったら私も、三人の仲間に入れてくれないかな・・。」
夏のある日、いつものように三人で会話している所に、彼女が話しかけてきたのが出会いだった。
                                                  第27話へ続く

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