約束の指きり

りょう

第22話

                    第22話  キス

春香の突然の告白に、僕は最初驚きはしたけど、その告白はもう意味を持たない。彼女は死んでいるのだから・・。春香は更に説明を続けた。
「だからね、もしかしたら拓の事を考えたら、本当に現れるんじゃないかなって思ったの
。そしたら案の定・・。」
「あの雨の日に出会えたって訳か・・。」
ここまで聞けば大抵の謎が解けるのだけど、一つだけ分からないことがあった。
「じゃあ一つ聞くけどさ。春香は僕達三人の夢に出てきたことがあるというのは、この前説明したよね?」
「うん。」
「それは春香が意図的にやった事なの?」
「それは違うと思う。さすがの私もそこまでできるわけないし・・。多分、ずっと考え続けていたから、それが直接拓の頭へ通じたんじゃないかな?」
「私と遊んでって?」
「うん。」
確かに彼女が言ってる事は筋が通っている。でも、やはり何かが腑に落ちない。
「春香と出会って少しした後にもう一度あの夢を見たんだけど、あれはどうなの?」
「え、えっと・・。」
どこか言いにくそうな顔を彼女がした為、僕はあえて追求はしなかったが、結局あの夢は何だったんだろうか・・。全く違う事を言っていたような気がするし・・。
大分時間が経ってしまったような気がするので、僕はこの話を締めることにした。
「でも良かった、春香からちゃんと話してくれて。これでまだ黙っていたら、会いにくくなってたし・・。」
「私もちゃんと話せて良かった。自分の気持ち・・」
自分の気持ちか・・。そう言えばまだ話してないな、自分の気持ち・・。
「ねえ拓、ちょっとこっちに向いてくれない?」
「ん?どうしたのはる・・。」
春香に言われたとおり春香の方に向いたその直後、僕の唇には柔らかい何かが重なっていた。
「!」
春香の顔がすぐ近くにある。僕は今、春香にキスされてるの?その後すぐ、春香はそーっと唇を離した。背が小さい分、背伸びをして頑張ったらしく、僕の視界から彼女の顔はすぐ消えた。下を向くと、笑顔でこちらを見ている春香の顔があり、僕に向かってこう言った。
「私の願いを叶えてくれてありがとう。」
願い?友達になったことだろうか?そんな事を考えているうちに春香は、いつの間にか遠くにいた。
「ほら拓、先に戻ってるからね。」
「あ、ちょっと待ってよ春香。」
                                                  第23話へ続く

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