約束の指きり

りょう

第4話 桐島春香

                   第4話   桐島春香

そんなやり取りをしていく内に、お互い打ち解け合う事が出来た。相変わらず彼女は怒ってばかりだけど…。
「そう言えば自己紹介をしていなかったよね。僕は柏崎拓也。君は?」
かれこれ一時間経っているのに、お互いの自己紹介をしていなかった。それもどうかと思うのだが、怒ってばかりの彼女に尋ねる余裕がなかったのだ。
「え?名前?どうして言わなきゃいけないの?全く知らない人なんかに」
「一時間以上一緒にいる人に、全く知らない人って失礼じゃない?まあ、言ってる事は間違ってないけどさ」
ため息をつきながら僕はそう言った。うーん、やっぱり打ち解けていなかったか…。
諦めた僕は何もすることがなかったので、読書を始めることにした。彼女とはいうと、部屋のど真ん中で大の字になっと寝転がっていた。この態度、僕が間違えているだけで、本当は小学生ではないのかな?
数十分後
「桐島春香よ」
突然彼女は自分の名前を名乗った。あんなに文句を言ってたくせに…。
「え?何か言った?」
本当は聞こえていたのだが、わざと聞き返してみる。
「だから、私の名前は春香。それに私こう見えて中学生で、決して小学生じゃない」
「え?中学生?」
中学生には見えない。わざわざ年齢詐称してるのかな彼女。
「何その意外みたいな反応?」
「だって背は低いし、顔立ちも幼い上に、公園でお母さん、お母さんって一人で泣いてるような子が、中学生には見えないよ」
「なんか私大分馬鹿にされてない!」
僕がそんな事を言うと、春香は涙目になっていた。心弱いんだな…。でも、言っている事は本当みたいだし、中学生なんだろう。まあ、そんな事より…。
「何でこんな中学生を家に入れてるんだろう、僕」
「こんなとは失礼な!」
僕はおかしな中学生と知り合ってしまったらしい。困ったもんだ。
「はぁ~」
「自分から連れて来ておいて、何でため息ついてるのよ」
早く雨止まないかな。僕は空にそんな事を祈ってみた。
                                                     第5話へ続く

コメント

コメントを書く

「その他」の人気作品

書籍化作品