他称改造人間になった俺
エピローグ3
どうやら、俺は遺伝子ドーピングというものを受けたらしい。
しばらく説明されたが、よく理解できていない。
当たり前だ。説明する側が理解してないのだから・・・。
「と言うわけだ。なにか質問はあるか?」
そういう彼女の声が虚しい。
いや、もしかしたら、これが彼女のやり方なのかもしれない。彼女のペースに惑わされ、俺は最大の疑問点を後回しにしてるではないか。本来なら最初に聞くべき質問を彼女にぶつけることにした。
「俺を拐った目的というか、改造した理由というか、なんで記憶がないってわかったって・・・」
いかん。声にしてみて始めて気づいた。 俺は完全に現状が把握できてないじゃないか。
「いや、拐ったって私等じゃないぞ。むしろ救出わけでだ」
ん?え?そうなのか? 確かに拐われたわりに全裸なだけで拘束されてるわけではないが。
「まぁ、話せば長くなるし、とりあえず自己紹介しておこうか」とそういうと彼女は身を正した。
「私の名前は柳沢みゆき。よろしく」
そう言うと彼女は右腕を差し出した。 その行為が握手だと気がつくまで少し間ができた。
彼女の右腕を握り、こちらも自己紹介を返そうとして気がついた。
俺の名前はなんだろう?
彼女もそれに気がついたのか。「じゃ、私が名前をつけてやろうか?」と妙に軽い口調だった。
あぁ、当たり前だが、名前があるのが当たり前だったからなぁ。 名前がなくなって名前の便利さが始めてわかった気がする。
「頼むよ。適当に普通の呼び名でも考えてくれ」こういうのは女性のほうがセンスがありそうなイメージ。
「名無しの権兵衛だからゴンちゃんとかどう?」
「却下」
マジか。初対面の男性にキツネみたいな名前を付けるセンスなのか。この柳沢さんは!?
「せめて人間らしい名前で頼む」と哀願してみる。
「人間らしさか。哲学だね・・・。じゃ、哲学と書いて『てつまなぶ』ってのはどう?」
「学だけ採用でお願いします」
まだ、名前らしさはある。
「じゃ、学さん。コンゴトモ夜露死苦!」
ヘラヘラニヤニヤとした彼女の表情から悪意を感じることはある。でも、悪い人ではないのだろう。
「さて、詳しい現状を説明するには、まだ時間が必要みたいだ。また明日にして、休みなよ」
彼女は腰を上げた。
「そうそう。この部屋は防音だからいろいろ気にしなくてもいいよ」
そう言い残し、部屋を後にしていった。
なるほど・・・。 なるほど、なるほど。
一人になって始めて、俺は、彼女がフランクな口調だったのか理解できた。
俺は、知らず知らずの内に気を張っていたようだ。
現実逃避だなんだと言った所で、記憶喪失で、改造人間で、見知らぬ場所で、見知らぬ人といる。
そんな状況で平常心なんて本当は維持できてるわけもなく・・・
きっと彼女は、それを察していて・・・
「結局は、俺の聞きたかった事、はぐらかして出てっちゃたなぁ」
そう言うと、俺は小さく笑った。 小さく笑って、嗚咽を漏らした。
しばらく説明されたが、よく理解できていない。
当たり前だ。説明する側が理解してないのだから・・・。
「と言うわけだ。なにか質問はあるか?」
そういう彼女の声が虚しい。
いや、もしかしたら、これが彼女のやり方なのかもしれない。彼女のペースに惑わされ、俺は最大の疑問点を後回しにしてるではないか。本来なら最初に聞くべき質問を彼女にぶつけることにした。
「俺を拐った目的というか、改造した理由というか、なんで記憶がないってわかったって・・・」
いかん。声にしてみて始めて気づいた。 俺は完全に現状が把握できてないじゃないか。
「いや、拐ったって私等じゃないぞ。むしろ救出わけでだ」
ん?え?そうなのか? 確かに拐われたわりに全裸なだけで拘束されてるわけではないが。
「まぁ、話せば長くなるし、とりあえず自己紹介しておこうか」とそういうと彼女は身を正した。
「私の名前は柳沢みゆき。よろしく」
そう言うと彼女は右腕を差し出した。 その行為が握手だと気がつくまで少し間ができた。
彼女の右腕を握り、こちらも自己紹介を返そうとして気がついた。
俺の名前はなんだろう?
彼女もそれに気がついたのか。「じゃ、私が名前をつけてやろうか?」と妙に軽い口調だった。
あぁ、当たり前だが、名前があるのが当たり前だったからなぁ。 名前がなくなって名前の便利さが始めてわかった気がする。
「頼むよ。適当に普通の呼び名でも考えてくれ」こういうのは女性のほうがセンスがありそうなイメージ。
「名無しの権兵衛だからゴンちゃんとかどう?」
「却下」
マジか。初対面の男性にキツネみたいな名前を付けるセンスなのか。この柳沢さんは!?
「せめて人間らしい名前で頼む」と哀願してみる。
「人間らしさか。哲学だね・・・。じゃ、哲学と書いて『てつまなぶ』ってのはどう?」
「学だけ採用でお願いします」
まだ、名前らしさはある。
「じゃ、学さん。コンゴトモ夜露死苦!」
ヘラヘラニヤニヤとした彼女の表情から悪意を感じることはある。でも、悪い人ではないのだろう。
「さて、詳しい現状を説明するには、まだ時間が必要みたいだ。また明日にして、休みなよ」
彼女は腰を上げた。
「そうそう。この部屋は防音だからいろいろ気にしなくてもいいよ」
そう言い残し、部屋を後にしていった。
なるほど・・・。 なるほど、なるほど。
一人になって始めて、俺は、彼女がフランクな口調だったのか理解できた。
俺は、知らず知らずの内に気を張っていたようだ。
現実逃避だなんだと言った所で、記憶喪失で、改造人間で、見知らぬ場所で、見知らぬ人といる。
そんな状況で平常心なんて本当は維持できてるわけもなく・・・
きっと彼女は、それを察していて・・・
「結局は、俺の聞きたかった事、はぐらかして出てっちゃたなぁ」
そう言うと、俺は小さく笑った。 小さく笑って、嗚咽を漏らした。
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