他称改造人間になった俺

チョーカー

エピローグ2

 「改造人間?」と聞く俺。
 「そう改造人間」と言う彼女。
 再び「改造人間?」と聞く俺。 再び「そう改造人間」と言う彼女。
 それで話が止まってしまう。
 言葉は通じるが話が通じないというのは恐ろしい経験だ。
 そう言った漫画家がいたが、それを実感するとは思ってもいなかった。 
 たぶん、彼女は俺を精神的に痛めて遊んでいるのだろう。彼女のニヤニヤとした表情は変わらない。
 「すいません。もっと詳しく教えていただけないでしょうか? お願いします」
 俺の言葉に彼女はご満悦したのか、「そーかー そーかー」とポケットから紙切れを取り出した。どうやらメモのようだ。
 「えっとだな。改造人間って言ってもサイボーグのように人体を機械化するわけではない」
 「機械じゃない?改造人間なのに?」
 「待て待て、私はメモを読んでるだけだから質問するな。答えれないし、答えるつもりもない」
 そう言われると、どうしようもない。俺は黙って聞くことにした。 
 「まぁ、個人的な意見を言えば改造人間とか、戦闘員として使うなら機械化は不都合な点が多いからな」
  あっさりと前言撤回して答えてくれた。というか、当たり前のように言ってたが戦闘員なのか。
 「そうなんですか?」
 「そりゃそうだろ。人間の動きを再現できるほどの精密機械が戦闘の衝撃に耐えれるとは思えない。なにより、そんなに簡単に人間を機械化できる技術力があるなら大国は軍事兵器にロボット兵でも大量生産するよ」
 確かにそうかもしれない。記憶をなくなったり、改造人間と呼ばれたり、今の俺はファンタジーへの仕切りが低くなってるのかもしれない。 まぁ、原因は目の前の女性だが。
 「じゃ、なんで改造人間なんて呼ぶんだ?」
 「ん?今、それを説明してる途中じゃないか?ちゃんと聞いてたのかい?」
 「・・・・」
 うぜぇ。
 「君は遺伝子ドーピングって聞いたことあるかい?」 
 「いや全然。ドーピングくらいならわかるけど」
 単純にスポーツ選手が禁止薬物を使うことだよな? もしかしたら、別の意味もあるかもしれないけど。
 「人間の筋肉にはサテライト細胞という細胞が存在していて、トレーニングなどを行うとサテライト細胞からIGF-1が分泌され筋肉が発達するという仕組みだ。ここまではわかるか?」
 「いや、正直にいうとイマイチわかっていない」
 「さっきも言ったが、メモを読んでるだけだから私も理解していない。雰囲気でわかったつもりになれ」
 なんか、彼女はキャラが定まっていないなぁ。
 俺はそんな無関係な事を考えてた。もちろん、現実逃避だ。 

 

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