他称改造人間になった俺

チョーカー

エピローグ1

 さて、オルレアンのうわさという都市伝説を知っているだろうか?
 とあるブティック、小さな服飾関係の店で試着室に入った女性が行方不明になり、海外へ売られてしまうという話だ。 噂が噂を呼び、ついには警察が調査するまで発展したようだ。
 もちろん、悪質なデマであり、警察が調べても何も出てこなかったオチだった。
 この話を聞いた時、まさか自分が服屋の試着室で拉致られるとは思ってもいなかった。
 そう、拉致られたのだった。いとも簡単にあっさりと拉致られた。
 1200円のズボンを片手に試着室に入った俺は、ズボンを履き替えようとした。
 その瞬間、正面の壁にある鏡が扉のように開き3人の腕に抑えられた。
 1人目に口を塞がれ、2人目は腕を抑え、3人目は体を持ち上げられた。
 あまりにも非日常的な状態に思考が停止し、まったく抵抗できず鏡の扉に引き込まれてしまった。
 これが俺の最後の記憶・・・
 ではなく、最初の記憶になる。

 目が覚めると女性が立っていた。 整った顔立ちをしている。
 綺麗な黒髪と黒目だが、若干色素が薄い気がする。もしかしたら海外の血が混じってるのかもしれない。一言で言えば美人さんのだが、ニヤニヤと悪い表情をしている。
 「やぁ、目がさめたのかい?」
 妙に爽やかで作った声で話かけてきた。
 あぁ、と簡単に返事を返すことしかできなかった。まだ頭がぼやけてるらしい。
 ぼやけた頭だが、ぼやけた頭なりに状況を確認してみよう。
 今の俺はベットに寝かされている。 布団の下は・・・全裸だ。
 部屋は薄暗い。日が暮れてるわけではなく、そういう作りになってるようだ。
 そして、目の前には女性。 20代くらいだが、下手をしたら10代の可能性もある。
 薄暗い部屋で全裸で女性と二人きり。 しかも、前後の記憶が曖昧ときてる。
 これは非常にヤバイ状態ではないか!
 「で、記憶のほうはどうなんだい?」
 彼女の一声で俺の現実逃避は一刀両断された。そう、どうやら今の俺には記憶がないようだ。
 正確には、何者かに連れさらわれた瞬間の記憶しか残っていない。
 あまりにも現実に気がついた時、泣き叫んだり、パニックになるより、俺は現実逃避を選んだようだ。
 何も答えられない俺に対して、ニヤニヤ、へらへらと彼女は表情を変えない。
 はっきり言って不気味だ。 そもそも、なんで俺が記憶喪失なんてわかったんだ? 
 そんな俺の心中を察したのか「よし説明してやんぞ」といきなりフランクな口調で語り始めた。
 「あんたは改造人間だ」
 「・・・・・・」
 あぁ、誰か助けてくれ



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