東方魔人黙示録

怠惰のあるま

『二人の大晦日』パルスィの場合

今年も寒い冬が訪れる幻想郷だけど、私こと水橋パルスィは地底にてアルマと一緒に地霊殿でゆっくりとお茶を飲みながら駄弁っています。

「今年も終わるなぁ........」

彼はポツリと呟いたが、そんなに振り返れる一年だったっけ?すごくあっさりとした一年だったような.........

「私たちにとって一年なんてあっという間な気もするけど?」
「いやいや........一年を振り返ってみると意外に長かったぜ?」

本当にそうかしら?むしろ半年も経ってない気分。なんでこんな感覚なんだろう。あれかな地底にいると時間感覚が崩れるのかな?天気とか気温変化とか特にないし況してや季節の変わり目なんてのもない。
ぼーっとそんなことを考えているとアルマがあることを気にした。

「今年の大晦日はパルスィと二人っきりで過ごせるかなぁ?」

私はそれを聞いて今まで彼と二人っきりでいられた時間があったかを思い出してみた。そして、わかった。

「.........無理だと思う」

誰か必ず私たちの間に入ってくるから今年もどうせそんな感じで終わると思う。
アルマもそう思っているだろうし、と思っていたのに帰ってきたのは予想外の答え。

「あれ?いつもみたいに妬ましいって言わないの?」

こいつって鋭いようで鈍いからよくわからない。
だから正直に自分の気持ちを言った。

「最近二人でいる時間が少ないから、たまにはいいかなと思って嫌だ?」
「嫌ってわけじゃないけど.........」

ならなんだと言うのよ、私に素直になれとかいうわりには自分がはっきりしてないからどうかと思う。

「あら、お二人仲良く座ってどうかしたのですか?」

あ、さとり様だ。
どうしたのって、どうせ心の中覗いてたんだからわかってるくせに.........私とアルマの心しか頻繁に覗かないって言ってたし、こっちはプライバシーなんてものがないですよ。

「二人揃って人聞きの悪い.........日課ですよ!」
『なおさらタチが悪い!』
「それで今年は二人っきりで過ごしたいと.........ふむ.........無理でしょうね!」

そんなにバッサリ言わなくてもいいのに............わかりきってたけど、つくづく邪魔が入ると思うのよね。
私達が二人っきりでいる時に限ってなんであんなにも邪魔が入るんだろう?ほとんどがさとり様なんだけども.........
そんなことを考えているとアルマがある提案をした。

「もう逆にあいつらと忘年会でもするか」
「それいいわね」

いっそのこと二人っきりで過ごすという考えをやめればいいんだ。別にあの子達と一緒が嫌ってわけではないわけだし、うんアルマにしてはいい考えするわね。

「それじゃあ私は待ってるからいってらっしゃい」
「お ま え も く る の」

無理矢理、手を引っ張られ地上に連れて行かれました。地上は今寒いから行きたくないのに!
引っ張られている間、ずっと嫌だって言っても珍しく聞く耳を持ってくれなかった。
地上に出た時には諦めて行くことにした。正直、ずっと手を握られている状態が恥ずかしくなって来たから.........それで地上に出て来てみれば毎度のことながらストーカーみたいね、この娘って.........

「たまたまですよ」
「本当かしら?あなたならいつでも見てそう」
「暇あれば見てくる覗き魔だからな」
「今日も素晴らしいお言葉を持ってきたのですが?

本当に偶然映姫に会えたから運が良かったわね。うん、本当に手間が省けてよかった。
わかればいいんですと言ってアルマに向かって振り上げかけていた棒を納めた。
なんとか説教を聞かずに済んだ.........好き好んで聞きたいものではないのよねあれって。時間が勿体無いと思うぐらい長いからあそこまで考えられる彼女がすごいと思う。
さて、こんなところで立ち話をしていても仕方が無いし幽香の花畑に行きましょう。


忘年会をするというわけで食料を調達してくるとアルマは人里に寄るらしい。先に行っててと言われたので先に花畑に向かった。
しかし、あいつのことだから途中で絡まれる心配が浮かんだ。

「心配なら迎えに行ってもいいんですよ?材料とかなら幽香達も持っているでしょうし」
「いいの?」
「はい、私が先に行って二人に伝えておきますから準備も終えておきますので」
「.........ありがとう映姫」

私は来た道を急いで戻り人里に走った。

人里に着くと博麗の巫女と話している彼がいた。やっぱり絡まれてる、油断している彼の襟を後ろからグイッと引っ張った。

「はぁ.........妬ましい」
「パ、パルスィ?先に行ったんじゃ.........」
「絡まれてるかもしれないから戻ってみたら案の定.........」

彼は申し訳なさそうに顔を下に向けた。まったく少しは断ることを知ってほしいわ.........そんな優しいところが妬ましい。

「そんなわけで悪いけど連れて行くから」

博麗の巫女は一瞬ムッとした表情になったが諦めた様子で言った。

「.........まあいいわ、今年はなんとかなると思うから、じゃあ良いお年を」

そう言って巫女は神社へと戻って行くのを見て、アルマの襟を離すとまだ項垂れていたので彼の前に手を差し出した。

「ほら、行こう?」

そう言うと彼は笑いながら私の手を掴んだ。
その後は難なく花畑まで行くことができた。それと人里を抜けるまでの間に通りすがった人達にニヤニヤとされた気がするけど、気のせいかしら?
花畑は雪が積もっても力強く咲いていた。さすが幽香の育てた花たちね。

「なんか久しぶりに来た気がする」
「あの事件以来ね」

ジェラシーハザードは本当に嫌な事件だった。それのおかげで少しだけ素直に慣れた気がする。まあ、本当に少しだけ.........
そろそろ家の中に入ろうと進むとアルマの手を掴んでいた手が動かなかった。彼を見るとなぜか絶望的な顔をしていた。どうしたのか疑問に思っていると、彼は私にあることを聞いた。

「なあ、あいつらが準備してるんだよな?」
「ええ、そうよ」
「メシも.........?」
「.........あ」

私もすぐに彼と同じく絶望的な顔をしたと思う。彼は勘弁してくれ.........とつぶやいていた。

「私が注意していなかったばっかりに.........ごめんなさい.........」
「いやパルスィのせいじゃない.........俺もこうなるって予想してなかった.........」
『はぁぁ.........』

恐る恐る扉を開けて中を覗くと彼が急いで中に入って行った、私も急いで入ると予想外の光景が広がっていた。なぜか幽香達三人が床に倒れていた。
いったい何が原因か探しているとテーブルの上にあった、ある物体に目がいった。心配そうにしている彼にテーブルの上の物体のことを教えると叫んだ。

「自滅かよ!!」

彼女達は自分達で作った料理を食べて気絶していた。なんと言うかミイラ取りがミイラになる?という感じかしら?

「とりあえず永遠亭に運びましょう、このままほっといても危ないし」
「そうするか.........」

ともかく彼女達を永遠亭に運んだところキノコの毒にやられていたらしい、原因はだいたい想像できてたわよ?けどこんな展開になるとは思いもしなかったわ。
とりあえず幽香達は鈴仙達に任せて私達は地底に帰ることにした。そういえば、地上に何をしに来たんだっけ......?

地底に戻り地霊殿に行くとさとり様達は宴をしていた。お空やお燐はすでに酔いつぶれていた。勇儀は相変わらず豪快にお酒を飲んでいた。

「あら、おかえりなさい。忘年会はどうしたのですか?」
「三人がダークマターを食って倒れたから中止」
「あらあら.........じゃあ私達と年越ししましょうか」

今年も毎年のようにこの人達と年を越すのか.........それもいいか。あ、でも今年はこいつがいるから違うか。

誰かが襖を開ける音が聞こえ目が覚めた、いつの間にか寝ていたようで私は畳の上で横になっていた。
周りを見るとあいつがいなくなっていた。なんとなく襖を開けると彼が一人、座りながら天上を見上げお酒を飲んでいた。

「相変わらずお酒.........強いのね?」

声を掛けるとこちらを振り向いた彼は少し驚いていた。彼の顔はお酒を飲んでいなかったように少しも赤くなっていなかった。

「パルスィか、寝てたんじゃないのか?」
「誰かさんがいなくなった時に起きちゃった」

冗談で言ったつもりだったのだけど、彼は少し申し訳なさそうだった。

「それは悪かった」
「気にしてない、それにこうして二人っきりになれたから」

彼の横に座って天上を見上げた。

「.........そう言えばさ」
「なに?」
「俺の名前をちゃんと呼んだことないよな?」

そうだったかしら?確かにあまり呼んだことなかったかも、気にしてなかった。

「呼んで欲しいの?」
「まあそりゃ.........ね?」
「ふーん.........」

少しだけ静かな空気が流れた。

「ねえアルマ?」
「ーーー!.........なんだ?」
「あなたが妬ましいわ」
「.........はぁぁ!?」

【あなたが私を変えてくれるのが妬ましいわ】

アルマは理由を聞いてきたけど私は微笑みながら話を濁した。彼はずっと聞いてきたけどこれは私だけの秘密にしておこう。
そして、年を越した.........

「あけましておめでとうアルマ」

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