東方魔人黙示録
後日談 その三
アルマとパルスィの感情講座をなんとか終えることができた俺とパルスィは地霊殿に講習生達を運んで休ませた。
人数多いから怪物達に何人か運ばせた。すごい罵倒の雨あられだったよ...私泣きそうです。
パルスィが慰めてくれたからもう大丈夫だけどね!! というかもうずっとこのままパルスィに慰められていたい。
まあ、俺とパルスィの時間は絶対に何かしら邪魔されるんですよね〜。うん。今回も来たよ。邪魔者。なんかね? 目の前の空間が歪んだと思ったら目の前に女の子が現れたんだ。霊夢にそっくりな。
色々と違う箇所があったからすぐに別人だと気づいたよ。髪長いし、巨乳だし。どちらかと言うと霊奈に似てる。
「あら、初めて来る場所ね」
「あんた...誰だ?」
「名を聞きたい時は自分から名乗るものじゃないかしら?」
「ああ、悪い。俺は桐月アルマこっちは俺の嫁の水橋パルスィ」
「どうも」
「橋姫がいるって事は幻想郷? でも私の知ってる橋姫と少し違う...なら別世界? じゃあ、なぜ父さんの気配を感じるの?」
何か一人で考え込んでるがどないしたの? そんな風に一切起き上がらず、パルスィの膝枕を堪能しながらダラダラしながら聞いた。
「あのさ〜俺ら名乗ったぜ〜?」
「あらごめんなさい。私は博麗霊歌。こことは違う世界の幻想郷の博麗霊夢の娘」
「あ〜そうなのね〜」
「...あなた。人と話してる時にダラけすぎじゃない?」
「ごめんなさい。こいつはいつもこんな感じだから」
どこか呆れてるパルスィの視線を感じるが俺はこうゆう魔人なんだから仕方ないじゃん。怠惰欲の塊に働けとか死ねって言ってるようなもんだよ?
そんな風にダラけながら怒っているとあちらさんの機嫌も少々悪いように見える。
「流石に人と話す時は起き上がって顔を合わせるものじゃないかしら?」
「まあ人としての常識だとね。俺は魔人。人の常識なんぞ知らん」
と、ちょっとふざけた態度を取ると完全に怒ってしまったようだ。霊歌と名乗る少女から怒りを感じるからさ。
「少々、お灸を据えた方が良さそうね」
「あ〜...これってめんどくさいや〜つ?」
「ええ、いつものめんどくさいやつ」
「はぁぁ...分かったよ。で? 戦うパターン?」
「それがいいのならそれで良いわよ」
「はいはい...じゃあ場所を移すぞ」
全く...なぜ異世界の輩はこうも好戦的なのかねぇ。俺には理解できんよ。
え? 俺のせいだろって? 知らんな。
△▼△
場所は地霊殿の裏側へと変わり、俺は霊歌と向き合っています。
「さあ始めましょうか」
そう言って霊歌が構えるとオーラが変わった。ここまで一気にオーラが変わる人っているんだな。しかも、桁違いの威圧感だ。アブホース達外なる神と対峙してる気分。いや、それ以上かも。
「こっちから行きます」
彼女はどこからか取り出した霊夢の持っている陰陽玉らしき物を手に取った。らしきと思ったのは色が違った。
霊夢のは白と黒なのに対し、あちらさんのは水色と白だ。しかも何処かメカメカしい。
「何それ?」
「これは変形武器「和」私がいた次元のある世界で得た武器よ。これ一つで次元を滅ぼす力はあるわ」
「またまた〜そんなご冗談を〜」
「...冗談を言ってるように見える?」
「......マジかよ」
何故だ。何故別世界やら別次元やらの奴らは次元崩壊や世界消滅級の力や武器を所持してるん? バカなん? そんなもんもっとったら誤って世界やら次元が滅ぶやん!
俺だったらそんなもん絶対に受け取らんし、いらん。
俺はため息をしながら腕を組んだ。霊歌は武器も持たず構えもしない俺の行為に機嫌を悪くしたようだ。
「武器も持たず、構えもしない...どこまでおちょくる気?」
「悪いが俺にとってこれが構えだ。あと武器はもう持ってるぞ」
「...後悔しても知らないわよ」
スペルカードを手にすると高々と宣言する。
「神霊 夢想封印!」
多色の光弾が霊歌の周りを飛び回ると一斉にこちらへと向かってくる。
博麗家のスペルカードは使えるわけね。これは怖い。まあ、やすやすとやられんがな。
やってみたかった技もあるしな!
「感情 アルマーニイレイザー・散!」
俺の代名詞とも言えるアルマーニイレイザー。その攻撃を一点に向けて放出せずにレーザーをいつもより細くし大量に撃つ! 
威力は下がるが攻撃範囲は広がり攻撃対象も増える! いいねぇ!
大量に迫り来る光弾に何本ものレーザーが一発一発と撃ち落とし、確実に相殺していく。
「やるわね」
「まだまだ! 感情 想いの波動!」
地面に向けて思いっきり打撃を与えると水面で広がる波紋のように地面が波打った。
足場が揺れバランスを崩す霊歌に追い打ちをかます。両腕を異法によって硬化させ剣状に変化。一気に距離を詰めて斬りかかった。
「甘いわ。夢想霊砲!」
その手に持つ『和』から霊力によってレーザーが放たれた。
俺はそれに直撃すると霧散。消滅だね。霊歌はそれを見て驚いている。まあ、目の前で霧散すればね。え? 俺は背後に回ってますよ?
今のは感情を具現化させた俺だ。
七大罪の怪物と違って意思はない。感情が弱すぎるからな。命令はできるから身代わりとして使います。
でだ。背後に回ったんだ。攻撃しますぜ!
「そいつは偽物だぜ〜! 憤怒 怒涛の撃剣!」
全体が真っ黒い大剣を霊歌に向けて振り下ろす。確実に攻撃が当たったはずだった。いや、当たっている。だが、効いていない。
鉄同士がぶつかり合うような硬い音が聞こえるだけ。俺は驚きの表情を浮かべるがその感情を使い攻撃を繰り出す。
「感情 驚愕異例ザー!!」
驚くを力に変えて撃ち放つこの技は感情が強い程、威力と速度が桁違いに上がる。
しかし、そんな不意打ちも効いてる様子はなかった。なぜなら微動だにせず霊歌はそこに立っているのだから。
「嘘だろ...?」
「いい攻撃ね。これが無かったら私もただでは済まなかったわ」
そう言って見せてきたのは腕輪型の何か。その腕輪から感じられる異様なオーラがただの腕輪ではないとわかった。
この異様なオーラは霊歌の持つ『和』にも似ている。
「またチート級の装備か?」
「まあそうかもしれないわ。これは万能武器「シオリ」。『和』と同じく形を変えれる最先端の武器よ。まあどちらかというと守り向けね」
「そいつがお前の頑丈さを際立たせてるってわけか」
まあ、あのシオリって武器が無かったとしても傷を付けられていたかはわからない。それほど霊歌の根本的な力は底知れない。
もしかしたら...霊斗と同等なんじゃないか?
そんな奴が他にもいるとは考えなかったがありえなくもないか。異世界は何があるか分からない。
まあ、今はそんな事を考えている場合じゃないか。ガンガンいくぜ!
「感情 破壊のカタストロフ!」
「形態変化「シキ」」
俺の攻撃が繰り出される前に霊歌の腕輪が形状を変化させた。
彼女の全身を包み込む青い球体状のものとなった。
破壊衝動を込めた真っ黒いレーザーを撃ち、霊歌の球体に直撃させたがその上を滑るように弾かれしまった。
「クソがぁ!」
「今のは形態変化をさせて無かったらと思うと冷やっとしたわ」
霊歌が後ろを振り向き言った。
彼女の背後にあった壁は数メートル先まで抉られた巨大な穴ができていた。
「そんな武装してなくても強いだろお前は」
「あら、過剰評価してるようだけど。私は普通よ?」
「俺の普通とてめぇの普通を同じにするんじゃねぇよ!! 開け! 魔界の門!」
地面を踏みつけ魔法陣を生み出し、俺は巨大な魔界への門を生成した。
禍々しい色をした門はゲル状の何かが蠢き、はっきり言って気持ち悪い。その光景を近くで見ていたパルスィはすごく嫌そうな顔をしている。
「この悪趣味な門は?」
「俺の魔界に通じる門だ。一応、魔王だからな」
「へぇ...あなたみたいな人が魔王。世界を破滅させようとする魔王もいればこんなにもダラケきった魔王もいるのね」
「それは褒め言葉として受け止めておこう」
「それで、この門を開いた理由はなんなの?」
「ちょっと忘れ物があってな」
俺は指を鳴らす。
すると魔界の門が不気味に輝き出した。ゲル状の何かが激しく蠢くとそれを貫く様に長い生き物の様なモノが飛び出した。
鉄同士が擦れ合うような嫌な音を出し、不気味に動くワームみたいなそれは何十匹と門から現れた。
「魔装 鉄蟲。俺の持つ魔装の一つ。これは多種多様の武器の集合体であり、一つの命を持つ蟲さ」
「気持ち悪いわね...」
「なんとでも言えよ。行け!」
俺の声を合図に鉄の擦れ合う音を響かせながら鉄蟲は霊歌に向かって一斉に動き始めた。
動きは見た目に反して機敏に動き、霊歌との距離を一気に縮めると『シキ』に向けて攻撃を与えた。しかし、魔装と言えど『シキ』の異常な防御力の前には無意味であった。
「流石に防戦一方なのも暇よね。穿て『和』! 夢想霊砲!」
霊力の込められた『和』から放たれたレーザーに鉄蟲達が触れると一気に年月が過ぎたかの様に錆びつき朽ち果てた。
「鉄蟲が!?」
「『和』の初期形態『雨』の効力よ。これから放たれた攻撃に触れたものは終焉を迎えるまで時間を消し飛ばす」
「そんな効力。恐るに足らんぜ! 憤怒 黒雷砲!」
「戯言ね。夢想霊砲」
黒い雷を放つが『雨』の効力は触れたもの全てにあるみたいで...俺の攻撃が消え去ったのだ。綺麗さっぱりな。もちろん相殺しようにも時間を強制的に消し飛ばすからできない。なら残される選択肢は...
「諦めだよねぇ?」
「アルマ!!」
「避けないで死を選ぶのね。バカな人」
「避けるのめんどくさいしな」
「なら...そのまま消えなさい!」
迫る霊歌の攻撃にアルマは一切避ける気配を見せていない。それを見ていたパルスィは助けに行こうと身を乗り出すがすぐに動きを止めた。なぜなら、パルスィの行動に気づいたアルマは彼女に優しく微笑んだのだ。
そして、彼の姿は霊歌の夢想霊砲に飲み込まれ見えなくなった。
パルスィは口を手で押さえ、霊歌は小さくため息を吐くと戦闘状態を解除し、その場を離れようとした。だが、その時だ。
「戦いは相手の生死を確実に確認してから終えるもんだぜ?」
おちょくるような声で霊歌に声がかけられる。その声に彼女は驚きの表情を見せ、後ろを振り返った。
目に入ったのは大鎌を振り被るアルマの姿だった。迫り来る攻撃を第二形態『滴』となった双剣『和』で受け止めた。
「なぜ!? 確実に攻撃は当たったはず!!」
「お前の『雨』の効力ってさ。終焉...所謂死を迎えるものだけに意味のある力だよな? なら俺には効かねぇわな」
「ありえないわ! 魔王だからって寿命はあるはず...! なのにどうして!!」
取り乱す霊歌はアルマの顔を見て寒気を感じた。
相手を嘲笑うようにつり上がった口。光すら灯らない全てを飲み込むような闇の瞳。恐怖を具現化させた様な表情のアルマは低い声で答えた。
「『運命の呪い』に死は存在しない」
「『運命の呪い』...?」
「俺は怠惰の魔王。その時を迎えるまで死を永遠に迎えることはない。数年、数十年、数百年先になろうとな! ギヒヒヒ...!」
「......アルマ」
どこか虚しく、悲しみが込められた笑いをアルマはする。そんな彼をパルスィは泣きそうな表情して見つめた。
霊歌は目の前の魔王の評価を改めた。
「あなたの事を誤解してたようね。自身の運命にどんな形であろうと抗うその姿はとても立派よ」
「そうかい。なら、その魔王様の本気を見せてやるよ」
「なら私もそれに答えるわ」
「昇華 怠惰に塗れし不浄の神!」
「形態変化『雲』!」
霊歌の「和」は双剣の形から今度は弓へと変わる。これが「和」の第三形態その名は『雲』。それをアルマに向けた。
対する魔王は髪の色が黒くなり、ツノもなく普通の人間の姿と変わった。だが、内包されている魔力は尋常ではないほど増えていた。
外なる神の一柱 アブホースの加護を最大限受けた姿だ。
「ここからが本当の勝負よ」
「ギヒッ! 望むところだ」
「分裂 三神一体」
構えていた「和」から何かが分裂すると『雨』と『滴』の二つの姿となった。そして、『雲』から謎のエネルギーによって作られた矢が空に向けて飛んでいく。
数秒後、空に一つ、また一つと点が現れた。それは霊歌が放った矢の雨だ。空に放った矢は空中で分裂し、雨粒の様に降り注いだ。
さらには『雨』からは時を終焉に導く力が込められた夢想霊砲が放たれた。
打つ手なしの状況でアルマは笑う。
「怠惰の極 有象無象の壁! そして、怠惰 レッド・アイド・モンスター!」
足元から灰色の液体が染み出すと降り注ぐエネルギーの矢からアルマを守る様に広がり傘の様になった。肉体に干渉できない『雲』の矢だが感情を具現化させて生み出された灰色の液体に防がれてしまう。
そして、アルマは前から迫る夢想霊砲に紅い弾幕を手のひらに持つと投げた。紅い弾幕と夢想霊砲がぶつかると紅い衝撃波を発し霊歌の攻撃の動きを止めた。
「動きが止まった...!」
「怠惰の衝撃は浴びた者の動きを阻害する。お前には効いてないようだがな」
「怠惰に呑まれるほどヤワな精神はしてないわよ! もう一度喰らいなさい!」
三つに分かれた『和』を動かそうとする霊歌だが、ピクリとも動かず地面に転がった。まるで動く事を拒む様に。
「『和』が機能しない...!?」
「お前には効かないがその武器には効果があったみたいだな!」
「感情のない武器に怠惰を生み出したってこと...? そんなの不可能よ!!」
その言葉にアルマは不敵に笑う。
「悪いな。今の俺は不可能を可能にできるんだよ!!」
心臓を具現化させた大鎌を取り出し、振り下ろすと寸止めのところで霊歌の首筋に当てた。
「勝負ありってやつだ」
「...そうね。私の負け」
「と言ってもお前が俺を殺す気で来てたら俺は負けてたがな」
「あなたは自分を卑下し過ぎよ。そんなに強い力を持っているのに自信を持ったら?」
「あ〜無理。そんな事したら戦闘狂共が戦いを挑んでくるし」
「......やっぱりあなたは怠惰過ぎるわ」
それが俺ですから。
△▼△
霊歌を連れて地霊殿に戻ると何故か霊斗が出迎えていた。そして、霊歌が霊斗に近づいていった。
「お父さん! やっぱり居たんだ!」
「霊歌じゃないか。どうしてお前がここにいるんだ?」
「たまたま世界を移動したらここに行き着いてアルマと勝負してたの」
「なるほど。アルマの怠惰姿に腹が立って勝負を挑んだな」
「な、なんでわかったの...?」
「お前が嫌いなタイプに当てはまり過ぎてるからなアルマは」
おいおい。俺が怠惰過ぎるって? 褒めても何もでんぞ。
「褒めてねぇよ」
「心を読むな。百歩譲って心を読んでいいのはさとり様だけだ」
「それもどうかと思うが...?」
「もう慣れたんだよ」
あの人が勝手に心を読むことはもう慣れたよ。これ以上、追求するだけ俺がストレスで死ぬ。死なんけども。
「それで霊歌。またすぐに他の世界に行くのか?」
「いいえ。私はここの世界に移住するわ」
「はぁぁ!?」
「あなたのこれからを見てたいし? それにこっちの世界の橋姫。私が居た世界の橋姫とは比べ物にならないくらいに強い理由も知りたいから」
「そんなに私は強くないわよ」
十分強いと思うよ。なんだかんだで他の世界の強者と渡り合えるんだからね、君。
「そうゆうわけだからお父さん!」
「わかったよ。俺は反対しない。アルマ。霊歌もお願いしていいか?」
「別にいいが...」
「私もってことは他にもいるの?」
「破月の奴だ」
「え!?」
なんか破月さんがいることに驚いてる気がする。まあ、いいや。そういえばあいつら動けるようになったかな?
「幻真達は?」
「まだ寝てるよ。相当体に来てるみたいでな」
「なんでだよ。一話終える頃には復活できるだろ?」
「それはお前だけだ!!」
 
え? 違うの?
みんな不便な身体してるな。俺が理解不能みたいな顔をすると霊斗がワナワナし始めた。怒ってるん?
「その顔が気に食わねぇ...!」
「そんな怒るなよ〜ハゲるぞ」
「うるせぇ!! ったく...ん? おいアルマ」
「なんすか?」
「お前は一話終われば完全回復するんだよな?」
「そうですが?」
「じゃあ...ボッコボコにしても次の回では回復してるんだよなぁ〜?」
あれれ...? すごい嫌な予感がするんですが...!?
「というわけで...ボッコボコな?」
「勘弁してください」
「嫌だね。夢想霊砲!!」
俺は迫る霊斗の攻撃を前に思った。
ああ、コメディのキャラっていつもこんな役なんだよね。
そして、地底で大爆発が起きると共に今回は終わる。
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