東方魔人黙示録

怠惰のあるま

《衝撃の一言》


力尽きた俺は少し眠りにつく。
目を覚ます頃には、みんな感情が戻っていた。
少し無言の空間を感じてから、俺は彼女らに謝った。
弾幕を受ける覚悟をしていたが飛んできたのは泣きながら飛びつくフランだった。
状況を少し理解できていない俺の頭をコツン、と幽香の傘で小突かれる。

「ぼーっとしてないで行くわよ?」

人の頭を叩くなよ。
立ち上がってお返しに幽香の髪をグシャグシャにすると、何故か何もされなかった。
むしろ、喜びの感情を感じる。
撫でられるの好きなのか?
そして、チャッカリと俺の横には荷造りされた荷物が。

「リリスさんが置いて行きました。魔王様によろしくと言っていました」

まったく...余計なお節介を焼くのが好きだな。

「思ったけど霊夢達は?」
「あなた魔界の瘴気あるの忘れてる?」

そうか。だから人外ばかりがそれってるのか。
瘴気があったことすっかり忘れてた。

「ああ、そういえばあったな」
「あったなって......」
「俺にとっては瘴気は心地いいんだよ」
「さて、ちゃちゃっと帰るわよ」

この人の言う通り、ちゃちゃっと帰ることにしようか。
数歩進んで後ろを振り返る。

「......てかお前誰だよ!」
『いまさら!?』
「あら?一度あってるわよ?あとあなたのこと助けたし」
「はぁぁ?」
「ほら空から落ちた時」

空から落ちた時?
そんな体験をしたのは春異変の時に魔理沙を追って空に向かい、文のせいで墜落したと思ったら変な目だらけの裂け目を通って、妖夢達がいた白玉楼に落ちた時だよな。
もしかしてあの裂け目って......

「あの時の裂け目ってお前の力か。じゃあ、お前が紫か」
「そういうこと」
「じゃあ、あの力を使えばちゃちゃっと帰れるだろ?」
「あら私もそう言おうと思ってたのよ」
((なんかこの二人似てる.....))

紫の能力で作ったスキマをくぐり、俺と妖夢は博麗神社の前階段出るようにしてもらった。
俺は家に帰るようなものだけど妖夢は何故残ったの?

「気まずくなった時に助け舟でも出そうかと」

ほう。
気まずいってなんですか?俺は知らないなぁ。
神社への階段を勢い良く駆け上がり鳥居をくぐり抜けると人影が視界に入った瞬間、その人影から弾幕を放たれた。
防ぐ術もなく直撃を喰らい後ろに倒れる。撃ったのはやはりこの人。

「おかえりアルマ。それはいきなりいなくなった罰」

ツンとした表情で俺を睨む霊夢さんです。

「す、すみません...」
「アルマー!!」

俺の名前を呼ぶ方を見るとどう言うわけか空から魔理沙が今まさに乗っていたであろう箒から飛び降りて俺の上から降って来るのですが...
これはやばい。

「何やってんだぁぁぁ!?」

俺が、ではなく魔理沙がだ。
あんな高いところから飛び降りて妖怪ならまだしも人間の魔理沙が無事で済むわけがない!
ダイブ接近した魔理沙をお姫様抱っこの要領でキャッチ。
衝撃が俺を通じて境内の石畳にも走り亀裂が生まれた。
なんとかキャッチ成功。

「おかえり!」
「た、ただいま...!」

しかし、魔理沙は多少軽いとはいえあんな高さから勢いよく降って来れば重力は何倍にもなる。
うん。足腰に大ダメージ。
バタッ!
後ろにゆっくりと倒れ魔理沙にのしかかられる形となった。
心配そうにする魔理沙が俺の身体の変異に気づく。

「あれ?アルマの姿が変わってる」

俺の頭からは魔界で見せた悪魔と人間の間の姿のままだ。

「そういえば、戻らないんですか?」
「俺は魔人として生きていくって決めたからな。もう隠す意味もないだろう?」
「ふぅん。悪魔の血も混じってたのね。どうりで人間離れしてると思った」

そして、何かを考え込むように手を顎に添える霊夢。
魔理沙は俺のツノを目晒しげに見つめる。

「だからツノが生えてるのか!」

キラキラと目を光らせ触り始めた。
案外受け入れてくれるんだな。
いままで隠してきたのが馬鹿らしくなってきた。
幻想郷ってそこまで気にするところじゃないのかもな。
まあ、神とか妖怪など多種多様な種族が入り混じる幻想郷に魔人がいたっていいよな。

「それに今の方がかっこいいぜ!」
「そ、そうか?」

魔理沙の一言に照れていると霊夢が手をパンパンと叩いた。

「はいはい。それよりも帰ってきてそうそう悪いけど。あなたを神社に置けないわ」
『・・・・え?』



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