東方魔人黙示録

怠惰のあるま

【封印解除】



「はぁぁ? 魔界だと!?」
「そこにあたし達の救出したい人がいるんだ」

魔界に救出されるような人間なんているか? むしろ、そんな奴がいたら俺はすぐわかると思うんだが魔界って狭いからさ。まあ、だいたい幻想郷の半分ぐらいの広さはあるかな。

「正確には魔界の一角にある法界という場所に封印されている」
「へえ」

法界って確かあの野郎が封印されている場所だよな。思い出したくもないねぇ...待てよ。まさか、あいつの封印を解く気じゃないよな。まあ、その時が来たら......。

「なんか面白そうね。私達も付いて行っていいかしら?」

船の中から出てきたのは霊夢と魔理沙とその後ろに隠れるように早苗がいた。
こいつらいつからいやがった。と言うかどうやって侵入したんだ?

「あんたは確か博麗神社の巫女」
「博麗霊夢よ。よろしくね」
「私は霧雨魔理沙だぜ!」
「東風谷早苗です」

気配はまだ一つあるな。どうやらもう一人盗み聞きしてた奴がいるようだな。俺は気配のある方へと進み気配の本人へ言った。

「こそこそしてないで出てこいよ」
「気づきましたか。さすが魔王ですね」
「ご主人」
「おかえりナズーリン。そして初めまして僕の名は寅丸星と言います」

この寅丸と言う少女。妖怪なのにただならない感じなんだけど。なんと言うか、ものすごい神様と向かい合っているような.........え? 天照? あいつとは比にならないと思うよ。なんだかんだで大神だから。普通の神よりは偉いよ。
それよりも気になることがある。

「寅丸さんよ。この船で魔界に行くのはいいが魔界の瘴気は耐えれるのか?」
「心配は要りません。この船の中には瘴気が届きませんので」

なら安心だ。こいつらはともかく霊夢達は瘴気に対しての耐性を持っていないから心配だったんだ。

「それではムラサ船長。行きましょう」
「りょーかい! 全力前進!!」

村紗の声とともに聖輦船はまた動き始めた。博麗神社の裏手にまで来ると、目の前に大きな穴を作り出した。
穴を潜り抜けると魔界の景色が広がった。なんか、こうやって空から見下ろすと本当になにもないな。魔王としてどうかと思うけど。

「ここが魔界か......面白くないところだぜ」
「俺の故郷を侮辱すな」

魔理沙にそう言うが不服そうな表情。霊夢も同じくつまらなそうな表情をしていた。

「事実なにもないじゃない」
「いいじゃねえか。そうゆうのがいいんだよ」

俺だってなにもないことに多少の不満はあるさ。けど、逆に考えてもみろよ。住人どもが毎日毎日バカ騒ぎや狂乱モードになっていたら嫌だろ? それに治めている魔王の俺が困る。今のままでも魔界を治めるの辛いのにさ、もっとめんどくさいことになるだろう。

「それでナズーリン。宝塔は?」
「それがーーーーー」
「えぇぇ...? なんとかしてくれないか?」
「なんとかしようにも強情なんだよ。それに元はと言えばご主人が宝塔を失くさなければこんなことには..........」
「うっ! そ、それはそうですが........」

さっきから二人でこそこそと........こいつら怪しすぎんだよ。もしかして宝塔のことか? これはまだ俺が預かる。こいつらが何の封印を解くかわかるまでは渡す気は毛頭ない。

「と、とにかく! 宝塔は見つかったんです! それで飛蒼の破片なんですが、あの巫女達が持ってるようです。いいですか? 法界に着くまで彼女らが船から離れないようにしてください」
「わかってるよ...」

進むこと数分で、魔界の一角である法界に辿り着いた。本当にここって狭いなと感じた瞬間でもある。
法界という空間は何もない白い世界とも言える。周りの空気は神聖で、とてもじゃないが魔界の一角にあるとは思えない場所だ。ここに来ると胸糞悪い気持ちになる。

「........かわんねえな」
「来たことあるの?」
「まあ...昔な...」
「みんな上を見てごらん
「上って何もーーーーーっ!!」

法界の上空には、大きな魔法陣が描かれていた。とても複雑な陣に組み合わされていて簡単には解けない作りになっていた。その中心に僧侶が着るような服装をした女性が眠りについていた。封印をされているためなのか起きる気配がしない。

「誰ですかあの人?」
「........聖白蓮と呼ばれる絶対的平等主義者の僧侶だ」
「君は聖を知っているのか!」
「ああ........」

こいつは人間と妖怪の双方から慕われた僧侶だったようだが、俺からしたら最悪最低の悪女以外の何物でも無い。こいつが俺の前に現れなければ、俺の半人生は狂うことは無かったんだ..........!!
今でも怒りであの封印ごと消滅させてやりたいぐらいだ。

「だったら話は早い。君の持っている宝塔を返してくれますか? それは聖の封印を解くために必要なんだ」
「..........今なんつった? 封印を解くだと?」
「はい、そうですが?」

やっぱりこいつらに渡さなくて良かった。俺の当たって欲しくない悪い予感が当たったからな。

「それなら渡せねぇな! あいつの封印を解くのはお断りだ!!」
「ア、アルマ?」

急変したアルマに霊夢達は驚き、寅丸は逆に不思議そうにしていた。

「どうしてだい? 君も封印を解くことに賛成してくれるかと思ったのですが?」
「俺はあいつに殺されかけたんだ!!そんなに封印を解きたければ..........力尽くで奪うんだな!!」

アルマの手から大量の弾幕が放出され寅丸に直撃したかに見えたが、彼女は平然と弾いていた。
何としても封印を解かせたくないのか、彼は弾幕を撃つ手を止めずに撃ち続けた。しかし、何度やっても彼女に弾幕が届くことは無かった。

「くそ.........ふざけるなぁぁ!!」

光を放つとともにアルマの姿が悪魔の姿に変わった。

「何度やっても無駄ですよ?」
「だまれ!」

指を鳴らし寅丸を弾幕で囲んだ。そして、彼女を握りつぶすように手を閉じた。弾幕は合図とともに一斉放火を始めた。
集中砲火が終わり煙幕が辺りを俟って視界が悪くなった。アルマは体力が限界に達し過呼吸に陥っているほどに疲れている。だが、煙幕がはれると寅丸は平然と立っていた。

「ちょっとは..........効いてろよ.....」
「悪いね、倒させてもらうよ。光符【アブソリュートジャスティス】」

寅丸が腕を突き出すと、何本ものレーザーがアルマに直撃した。衝撃で後ろに弾き飛ばされ、船の端にぶつかるとうめき声をあげ船上に倒れた。
寅丸は倒れたアルマから宝塔を奪い取り、見せつけるように目の前に出し笑顔で言った。

「約束通り宝塔は貰うよ?」
「やめ..........ろ........!」

寅丸が宝塔を掲げると霊夢達の懐から飛蒼の破片が飛び出し、魔法陣を貫きガラスのように砕け散った。
砕けた魔法陣のカケラとともに聖白蓮は彼らの前へ舞い降りた。


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