東方魔人黙示録

怠惰のあるま

【魔人の過去】


星蓮船の上へと着地すると聖白蓮は目を覚ました。

「........ん.........ここは?」
「聖!お久しぶりです!」
「寅丸.........?お久しぶりです」

まだ頭がボーッとしているのか周りをキョロキョロとしていた。

「それでここは?」
「ここは魔界の一角にある法界です。聖が封印され助けるために来ました」
「そうでした。私は魔族に封印されたんでした」

そう言って彼女は船上で倒れていたアルマの方を向いた。

「久しぶりですね、ボウヤ」
「ひじり.........!」

優しそうに微笑む聖にアルマは怒りで目が赤く染まり、歯をギリギリと音を立てるほどに怒っていた。

「そんな怒らないでください、これでも反省してるんですよ?」
「ふざけるな.........!てめえのせいで.........親父は!!」

それは数十年前に遡る.........
まだ小さかったアルマは外の世界にあった今は無き森の中を歩いていた。
そこで聖と出会ったのだ。彼女は歩いていたアルマに接触した。

「君は人間ですか?」
「そうだよ。お姉ちゃん誰?」
「私はただの通りすがりです」

そう言ってニコリと笑ったが、目の奥は何処か恐ろしかった。

「ボウヤはただの人間ではなさそうね?」
「うん!お父さんが魔族なんだ」
「じゃあ、あなたは半人半魔なんですね?」
「うん!」

元気に答えると彼女の目は獲物でも捕らえるかのように殺気を纏っていた。
そして、スッと腰にあったものに触れた。

「ボウヤは危ない力を持ってるわ」
「危ない力?」
「そうよ。そして、その力が被害を呼ぶ前に.........」

手には魔除けの印が施されている小刀が握られていた。
先ほどまでの優しさが消えた聖にアルマは戸惑っていた。

「ボウヤを殺さないと.........ね.........?」

僧侶の小刀が子供に振り降ろされた。

「ひっ!」

振り下ろしたナイフは肉を深く切り裂き、さらに魔族に対しての聖なる力があった。切られたところから肉が砂になり風に舞った。

「おとうさん.........?」

しかし、ナイフはアルマには触れられておらず、彼を庇うように手を広げ間に割り込むように立っている男がいた。その男は今のアルマと顔立ちが似ていた。

「おいおい?.........子供を切り裂こうなんて顔に似合わねことすんじゃないぜ?」
「あなたが、この子のお父様ですか?」

傷をつけられたにも関わらず平然と立っていた。

「ああ、この魔界の王。魔王様だぜ?かっこいいだろ?」
「ふふふ.........余裕ですね?切られたところはそう見えないですけど?」

魔王の切られたところは徐々に砂となり傷が広がって行く。

「ん?こんなもん蚊に刺されたもんだ。」
「そうですか。まあ、別にいいです。私は仕事をしなくては」
「ん〜?まあ、まて。俺も仕事をしなきゃな」

ニコッと笑うと聖に向け指を鳴らした。
すると、何十にも重なる魔法陣が彼女を取り囲むように作られた。完璧に閉じ込められ逃げることが一切できなかった。

「ーーなっ?!」
「息子を殺そうとした奴に制裁しねえと.........な?」

空で陣を組むと魔法陣は光に包まれ聖白蓮とともに消え去った。
ふぅっと一息をついた魔王はその場に崩れるように倒れた。

「おとうさん!」

倒れこんだ父親に駆け寄ったアルマに心配をかけないように笑っていた。

「ん〜?どうした?そんなかなしそうな顔して?」
「だって.......おとうさん.........体がもう!!」

魔王の体は胸から下が砂となって消え去っていた。倒れたのは砂となったためであった。

「お前なぁ.........それでも男か?親父が死ぬくらいで泣くなよ」
「泣くよ!たった一人の家族だもん!」

涙を流した自分の息子に呆れながら、砂になりかけている右手で頭にポンっと手を置いた。

「はぁぁ?お前は馬鹿か.........?一人になるわけじゃねえだろ、大丈夫だ。お前なら立派..................に.........」

言葉が聞こえなくなり、少年は顔を上げるとすでに体が砂とかしていた。
アルマはその場で泣き崩れた。この時、彼の能力は深い怒りと憎しみに飲み込まれ大暴発を起こし、森そのものを消し去った。彼は自分の力が危険だと気づいた。
そして、アルマの姿を見るものは今に至るまでいなかった.........




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