東方魔人黙示録

怠惰のあるま

雷の如きドラマー


心について行くこと数分、何処からか体の奥に響くような音が聞こえてきた。

好奇心からか、その音に惹かれてしまったのか、心をおいて音の発信源へと歩いていた。

近づいていくと、歌声も微かに聞こえる。すごく痺れるような声だ。しかも、頭に染みるように音色が刻まれて行く。

とても心地いい曲だ。俺の足は、動きが早くなる。歌声と楽器の音を出している本人に会いたいと思ったのだ。

さらに歩くと、人影が見えてきた。周りに浮いた楽器を叩き、太鼓のような大きい楽器に座り、足を軽くバタバタさせて音を出していた。かかとについているのも楽器の一つか?

シルエットがちゃんと見え始めたとき、俺は驚いた。幽香に、服装や髪色以外が似ているのだ。雰囲気と髪型がとてもよく似ている。しかし、こちらの方が性格は軽そうだ。

「〜〜〜〜♪」

演奏が終わると、疲れたようにふぅ、と息を吐いた。俺はいい演奏だったから、賞賛の拍手をした。

すると、演奏に集中していたからか、こちらに気づいておらずビクッと体を震わすと、こちらを向いた。

「だ、だれ!?」
「あー・・・・通りすがりの半人です」

反応すると、俺の顔を覗き込むように見てきた。俺の顔なんか変か?

「ふーん。もしかして、あたしの演奏聞いてた?」
「ああ、すごくいい音と声だった」
「え?声?」

あれ?無意識に歌っていたのかな?だったら墓穴掘った?

しかし、恥ずかしがるどころか、むしろ喜んでいる感じだった。

「いやぁ!楽器は得意だけど歌声は自信なかったんだ!だから、嬉しくて」

純粋な娘なんだな。にしても、こいつも付喪神か。心と同じ気配?というのかなんというか。とにかく!心と何かが似ているから、こいつも付喪神だ。

「あんた名前は?」
「桐月アルマだ」
「あたしは堀川雷鼓。よろしくね!」

とても元気な娘だ。周りにも太鼓のようなものが浮いているし、太鼓の付喪神なのかな?けど、太鼓っぽくないし、というかこの楽器なに?

「ああ、これはドラムって言って、外の世界の太鼓みたいなものさ」
「へぇ、他にも何か演奏できるのか?」

それとなく聞いてみたが、雷鼓はキョトンとした表情になっていた。おかしなこと聞いた?

我に返ると、戸惑いながら理由を聞いてきた。

「え?で、できるけど、なんで?」
「聞きたいから、ダメか?」
「い、いいよ!その代わり、見返りはもらうよ?」

ちゃっかりしてるな。まあ、あんなにいい演奏だったら、どんな物でもやろうと思える。

その答えに、雷鼓は何処か張り切った様子で演奏を始めた。

演奏を聴くこと一時間、ライブのような感じで聴いていたが、雷鼓は本当に凄いミュージシャンだ。

楽器の付喪神なだけあるな。雷鼓曰くどんなリズムでも乗ることができるとか。絶対音感?

完璧に演奏が終わると、雷鼓が感想を求めてきた。

「どうだった!どうだった!!」
「お、落ち着け。いいと思うし、本当に痺れるような演奏だと思うぞ?」
「そう言って貰えると嬉しい!それで見返りというか〜」

ああ、忘れていた。演奏に夢中で頭の隅に追いやっていた。見返りか、どうしようか?雷鼓欲しい物とかあるのかな?

「雷鼓は何が欲しいものとかあるか?」
「え!?あ、あると言えばある」
「それって何?できるならやるよ」

雷鼓の顔が何処か赤くなっている気がするが、演奏をした後だからかな?

何故か黙ってしまった雷鼓を見つめているが、考え込んだように口を固く閉じている。そんなに言いづらいものなのか?

数秒経ち、やっとその口を開いた。

「あ、あなたが欲しい!!」
「・・・・・はぁぁ?なんで俺!?
「あ、あたしのことを純粋に褒めてくれた人、初めてだから・・・・・」

なぜだろう。俺の先の未来が血に染まっているように見える。金髪の緑眼少女の手によって・・・・・・・・。

すでに背中にナイフを突きつけられている気分です。いや、心臓掴まれていると言った方が、正しいかもね。そんぐらいの発言をこの子はしました。

「ダメ・・・・?」
「嬉しいけど、これ以上俺の寿命を縮めないでください」
「ど、どうゆうこと?」
「多分、そろそろ君にも感じるはずーーーー」

言い終える前に雷鼓の体がビクッと震えた。そして、顔が青ざめた表情になっていた。やっぱりお怒りですよね。

何故、気づいたのかは置いておきます。きっと女の勘って言われそうだから。

「い、今のは?」
「嫉妬の念」
「し、嫉妬?もしかして、あなたってモテモテなのかな?」
「モテモテ???」
(ああ、鈍感なんだ。けど、だったらチャンスはある!)

よくわからないが、ガッツポーズをとっている雷鼓さんが可愛いです。パルスィの方が数十倍可愛いですよ。パルスィ超える女の子なんていない。

あ、そういえば心のこと忘れていた。どうしようか。ほっといてもいいけど、今後の俺の半人生が終わらせられるから行こう。



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