比翼の鳥
第16話:精霊
その青い女性は、ふよふよと宙に浮きつつ、こちらの方をぽや~んとした顔で、しかし、表情には微笑みを浮かべながら近寄って来た。浮いて移動とかハイスペックすぎるわ。
浮遊している青づくしの女性は、艶やかで、少し癖のついたボリュームのある髪をまるで、水に浮かべたようにたゆたえながらゆっくりと進んでくる。
服は、ハデハデしさや、いやらしさの無いスッキリとした装飾の物だった。貴族の令嬢が着るような服っていう感じだけど、この服を何と呼んでいいのか俺には分からない…。ごめんよ!女性の服とか全然分からないんだよ!
その女性がこちらに向かうと、俺と女性の間に浮いていた光の球が、一斉に道を作る。それはさながら、王が通る道を家臣が跪いて、見送る様に見えた。
そんな女性を視界に収めつつ俺は、ルナを胸に抱いたまま、上体を起こす。
雰囲気的に、害をなすような感じは受けないものの、用心するに越した事はない。
俺は、内部の魔素を少しだけ循環しつつ、女性の動きを見守る。
「あら~あらあら~。まぁ~。」
俺の前まで来た女性は、口元を手で隠しながらびっくりした様子で、こちらをジッと見ていた。
俺は、その様子を伺いつつ、口を開く。
「初めまして。私は、佐藤翼と申します。こちらで気持ちよさそうに寝ているのが、ルナと言います。この様な恰好で失礼します。」
俺は少し緊張しつつ、自己紹介をした。相手の出方が分からない以上、まず友好的に対話をしたいと思ったのだ。
「これはぁ~ご丁寧に~。わたくしは~ウィンディーネ…と~もうしま~す。」
おう、これは、あのかの有名な水の精霊様?しかし、なんというか独特の間をもつ方だな。
若干発音が違う気がするが、聞いた感じやイメージを総合すると、間違ってない気がする。
「えっと…、もしかして、有名な水の大精霊の、あのウンディーネ様…ですかね?」
俺は勢いで聞いてしまった。
「うふふふ~。そんなに有名では~ないのですよぉ~。お上手ですねぇ~。けど、水の精霊なのは~間違いないです~。」
おうけぃ。ラノベと異世界テンプレに感謝だ。これは分かり易い。
そうか、いきなり精霊様との邂逅とは…流石の異世界。色々なイベントが盛りだくさんだ。
そんな事を考えていると、ウィンディーネ様が
「それにしても~。ツバサちゃんも、ルナちゃんも…とても美味しそうねぇ~。」
などと、とんでもない発言をしてきた。
おいおい、脂の乗った中年捕まえて「ちゃん」付けは止めてほしい。なんか変な気持が芽生えそうだから。
じゃなくて…やばい、俺達エサコース?まじで?
俺が、顔を青ざめてガタガタ震えていると、それを見てウィンディーネ様は更に続けて…
「ツバサちゃんは~、少し苦みがあってぇ~コクの中に~甘さを隠した~大人の味ね♪」
俺、いつの間にか食われてる!?ひぃ!?
「あらまぁ。ルナちゃんは~とっても甘くてぇ~心も体も~暖かくなるような~デザートね♪」
ルナも丸かじり!?
って、あれ?俺達別にどうにもなってないよな?
つまりどういう事なんだ?
俺が訝しがっていると、ウィンディーネ様は察したのか、
「あらあら、まぁまぁ~。ツバサちゃん~?別に本当に~食べちゃうわけでは無いのよ~。」
「んふふふ~」と、とても楽しそうに笑い始めた。
こっちは楽しくないよ!?精霊とはいえ、美人のおねぇさんに、おいしそうって言われたら色んな事を想像しちゃうでしょ!…でしょ?
「この子達も~み~んな、ツバサちゃんたちの~魔力に引かれて~やってきたみたいね~。」
ああ、なるほどね!そうか、ルナの魔力が、この光の球達にはごちそうだったのか。だから、魔力が漏れ出せば漏れ出すほど、光の球達が多くなったのか。凄い納得。
ん?ウィンディーネ様は精霊。俺達美味しそう。光の球達も、俺達美味しそう。つまり?
「えっと、つまり…。この光の球達は、みんな精霊なのですか?」
「せいか~い!ぴぃ~んぽぉ~んぴぃ~んぽぉ~ん♪」
俺は、人生で初めて、腑抜けた音で、正解音を言う人を見たよ。まぁ、このおねぇさん、人じゃなくて精霊だけど。
話を戻すと、つまり、ルナが幸せオーラを振りまいた事で、精霊が寄って来たって事か。
ん?じゃあ、ルナが壊れて暴走したのは、一体どういう事なんだ?
「えっと、ウィンディーネ様、聞きたい事があります。」
「やぁ~ん。ツバサちゃぁ~ん。わたしぃのことは~、ディーネちゃん♪って呼んで?」
なんでやねん!と思わず突っ込みそうになる所をぐっとこらえる。
しかも、最後だけなんか流暢だったし!絶対その間延びスタイルはワザとだろ!
「…ディーネちゃん。教えて下さい。先程、ルナが精霊に取り囲まれたら、とたんに様子がおかしくなったのですが、何かお心当たりはありませんか?」
俺は、何かを捨てつつも、大人の対応をする。
「うふふ~。ツバサちゃん、いい子ねぇ~♪」
何故か頭を撫でられる…。大人の…対応…。頑張れ俺!
俺が色々複雑な気持ちを持て余していると、うぃんでぃ…面倒だ。ディーネちゃんは、
「それはね~。精霊はぁ~、魔力を受けてぇ~その魔力がぁ~気に入るとぉ~その人にぃ~力を~与えるのよぉ~。」
力を与える…。抽象的な表現だな。具体的にはどうなるんだろうか?
そう考えていると、更にディーネちゃんは続けて、
「力っていうのはぁ~、その魔力とぉ~同じような種類の~力を~強くして~返してくれるのよぉ~。」
つまり…増幅器みたいなもんか?炎の魔力を渡して、それが精霊の好物ならば、更に大きな炎の力で返してくれる…そういう事か。
ん?なんでそんな事が出来るんだ?増えた分、精霊にとっては自分の力のロスにつながらないのか?そんな生き方してたら魔力が枯渇してしまいそうなイメージがあるのだが…。
「ふふふ~。何でぇ~力を増やせるか~って事よねぇ~?それはねぇ~魔力とぉ~精霊力がぁ~同じもので無いからなのよぉ~」
このおねぇさん、何で俺の考えてる事分かるの!?そんなに顔に出てたか!?
俺は戦々恐々しつつも、今言われた事を、咀嚼し、仮説を立てる。
今の話を聞くと、魔力と精霊力と言う二つの力がある事が分かる。
そして、その2つは似て非なる力であると仮定する。
更に、今までの会話から、精霊は魔力を食べる事が分かる。
精霊力っていうのは、出て来た会話から察するに、精霊の使用する力なのだろう。
つまり、魔力を精霊力に変換している?そして、精霊が魔力を気に入った際に、魔力を提供してくれた本人に力を渡すと言っているのだから、それは精霊力を渡すって事か。
つまり、魔力1を使用して出来る精霊力はそれ以上ってことか。どのくらいの変換効率なのかは知らないが…。
ふむ、それは上手く使えば、永久機関とかできそうな勢いだな。凄いな異世界。
そして、俺はその仮説を確認しようと口を開く。
「つまり…」
「ぴんぽぉ~ん!ぴぃんぽ~~ん!!大正解~~!!拍手~~!!」
俺まだ何も言って無いよ!?何でよ!?ってまさか!!
「せいか~い!」
その言葉を聞いた瞬間、俺はガックリと項垂れたくなった。
ディーネちゃん!!人の心を読むのはやめてくれぇええええ!!!!
俺は心の中で涙を流しながら絶叫した。
浮遊している青づくしの女性は、艶やかで、少し癖のついたボリュームのある髪をまるで、水に浮かべたようにたゆたえながらゆっくりと進んでくる。
服は、ハデハデしさや、いやらしさの無いスッキリとした装飾の物だった。貴族の令嬢が着るような服っていう感じだけど、この服を何と呼んでいいのか俺には分からない…。ごめんよ!女性の服とか全然分からないんだよ!
その女性がこちらに向かうと、俺と女性の間に浮いていた光の球が、一斉に道を作る。それはさながら、王が通る道を家臣が跪いて、見送る様に見えた。
そんな女性を視界に収めつつ俺は、ルナを胸に抱いたまま、上体を起こす。
雰囲気的に、害をなすような感じは受けないものの、用心するに越した事はない。
俺は、内部の魔素を少しだけ循環しつつ、女性の動きを見守る。
「あら~あらあら~。まぁ~。」
俺の前まで来た女性は、口元を手で隠しながらびっくりした様子で、こちらをジッと見ていた。
俺は、その様子を伺いつつ、口を開く。
「初めまして。私は、佐藤翼と申します。こちらで気持ちよさそうに寝ているのが、ルナと言います。この様な恰好で失礼します。」
俺は少し緊張しつつ、自己紹介をした。相手の出方が分からない以上、まず友好的に対話をしたいと思ったのだ。
「これはぁ~ご丁寧に~。わたくしは~ウィンディーネ…と~もうしま~す。」
おう、これは、あのかの有名な水の精霊様?しかし、なんというか独特の間をもつ方だな。
若干発音が違う気がするが、聞いた感じやイメージを総合すると、間違ってない気がする。
「えっと…、もしかして、有名な水の大精霊の、あのウンディーネ様…ですかね?」
俺は勢いで聞いてしまった。
「うふふふ~。そんなに有名では~ないのですよぉ~。お上手ですねぇ~。けど、水の精霊なのは~間違いないです~。」
おうけぃ。ラノベと異世界テンプレに感謝だ。これは分かり易い。
そうか、いきなり精霊様との邂逅とは…流石の異世界。色々なイベントが盛りだくさんだ。
そんな事を考えていると、ウィンディーネ様が
「それにしても~。ツバサちゃんも、ルナちゃんも…とても美味しそうねぇ~。」
などと、とんでもない発言をしてきた。
おいおい、脂の乗った中年捕まえて「ちゃん」付けは止めてほしい。なんか変な気持が芽生えそうだから。
じゃなくて…やばい、俺達エサコース?まじで?
俺が、顔を青ざめてガタガタ震えていると、それを見てウィンディーネ様は更に続けて…
「ツバサちゃんは~、少し苦みがあってぇ~コクの中に~甘さを隠した~大人の味ね♪」
俺、いつの間にか食われてる!?ひぃ!?
「あらまぁ。ルナちゃんは~とっても甘くてぇ~心も体も~暖かくなるような~デザートね♪」
ルナも丸かじり!?
って、あれ?俺達別にどうにもなってないよな?
つまりどういう事なんだ?
俺が訝しがっていると、ウィンディーネ様は察したのか、
「あらあら、まぁまぁ~。ツバサちゃん~?別に本当に~食べちゃうわけでは無いのよ~。」
「んふふふ~」と、とても楽しそうに笑い始めた。
こっちは楽しくないよ!?精霊とはいえ、美人のおねぇさんに、おいしそうって言われたら色んな事を想像しちゃうでしょ!…でしょ?
「この子達も~み~んな、ツバサちゃんたちの~魔力に引かれて~やってきたみたいね~。」
ああ、なるほどね!そうか、ルナの魔力が、この光の球達にはごちそうだったのか。だから、魔力が漏れ出せば漏れ出すほど、光の球達が多くなったのか。凄い納得。
ん?ウィンディーネ様は精霊。俺達美味しそう。光の球達も、俺達美味しそう。つまり?
「えっと、つまり…。この光の球達は、みんな精霊なのですか?」
「せいか~い!ぴぃ~んぽぉ~んぴぃ~んぽぉ~ん♪」
俺は、人生で初めて、腑抜けた音で、正解音を言う人を見たよ。まぁ、このおねぇさん、人じゃなくて精霊だけど。
話を戻すと、つまり、ルナが幸せオーラを振りまいた事で、精霊が寄って来たって事か。
ん?じゃあ、ルナが壊れて暴走したのは、一体どういう事なんだ?
「えっと、ウィンディーネ様、聞きたい事があります。」
「やぁ~ん。ツバサちゃぁ~ん。わたしぃのことは~、ディーネちゃん♪って呼んで?」
なんでやねん!と思わず突っ込みそうになる所をぐっとこらえる。
しかも、最後だけなんか流暢だったし!絶対その間延びスタイルはワザとだろ!
「…ディーネちゃん。教えて下さい。先程、ルナが精霊に取り囲まれたら、とたんに様子がおかしくなったのですが、何かお心当たりはありませんか?」
俺は、何かを捨てつつも、大人の対応をする。
「うふふ~。ツバサちゃん、いい子ねぇ~♪」
何故か頭を撫でられる…。大人の…対応…。頑張れ俺!
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「それはね~。精霊はぁ~、魔力を受けてぇ~その魔力がぁ~気に入るとぉ~その人にぃ~力を~与えるのよぉ~。」
力を与える…。抽象的な表現だな。具体的にはどうなるんだろうか?
そう考えていると、更にディーネちゃんは続けて、
「力っていうのはぁ~、その魔力とぉ~同じような種類の~力を~強くして~返してくれるのよぉ~。」
つまり…増幅器みたいなもんか?炎の魔力を渡して、それが精霊の好物ならば、更に大きな炎の力で返してくれる…そういう事か。
ん?なんでそんな事が出来るんだ?増えた分、精霊にとっては自分の力のロスにつながらないのか?そんな生き方してたら魔力が枯渇してしまいそうなイメージがあるのだが…。
「ふふふ~。何でぇ~力を増やせるか~って事よねぇ~?それはねぇ~魔力とぉ~精霊力がぁ~同じもので無いからなのよぉ~」
このおねぇさん、何で俺の考えてる事分かるの!?そんなに顔に出てたか!?
俺は戦々恐々しつつも、今言われた事を、咀嚼し、仮説を立てる。
今の話を聞くと、魔力と精霊力と言う二つの力がある事が分かる。
そして、その2つは似て非なる力であると仮定する。
更に、今までの会話から、精霊は魔力を食べる事が分かる。
精霊力っていうのは、出て来た会話から察するに、精霊の使用する力なのだろう。
つまり、魔力を精霊力に変換している?そして、精霊が魔力を気に入った際に、魔力を提供してくれた本人に力を渡すと言っているのだから、それは精霊力を渡すって事か。
つまり、魔力1を使用して出来る精霊力はそれ以上ってことか。どのくらいの変換効率なのかは知らないが…。
ふむ、それは上手く使えば、永久機関とかできそうな勢いだな。凄いな異世界。
そして、俺はその仮説を確認しようと口を開く。
「つまり…」
「ぴんぽぉ~ん!ぴぃんぽ~~ん!!大正解~~!!拍手~~!!」
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