比翼の鳥
第17話:業
なんだか、色々なものをディーネちゃんに汚されてしまった気がする…。
俺はさめざめと泣きながら、ディーネちゃんの様子を伺った。
「いやぁねぇ~。ツバサちゃん♪おねぇさんはぁ~その位のことわぁ~全然~気にしないわよぉ~。」
「気にしてくれ!頼むから!!」
俺はがっくりと肩を落としながらも、ディーネちゃんと論議を続ける。
「まぁ、特に話す必要もないんでしょうけど…、気分的に嫌なので、声を出します。結局、ルナは精霊力のフィードバックでおかしくなったという結論で良いのでしょうかね?」
先ほどの話を総合すれば、ルナの魔力は、幸せ一杯の幸せオーラだったはずだ。それを精霊が食べ、より大きな精霊力としてルナに変換して返したことになる。
「ほんとうに~、ツバサちゃんはぁ~賢いわねぇ~。おねぇさんは、びっくりよ~?いい子いい子~♪」
俺は、ディーナちゃんに頭を(内外共に)蹂躙されつつ、続く説明を待つ。
何も考えない。考えないんだ。
「ツバサちゃんの~言うとおりぃ~幸せって気持ちがぁ~強く返っちゃったのねぇ~。ルナちゃんのぉ~症状はぁ~幸せ酔いってやつねぇ~。羨ましいわぁ~。うふふ。」
幸せ酔いとか、何の冗談だ…。幸せ太りとかの、気分バージョンか?それって、ただのバカップル状態じゃないのか?…ああそうか…そうだな。あの行動はバカップルの行動だな。うん。なまじ語彙が少ない分、行動で拍車がかかったのか…。ある意味まだ良かったのか?あれで性教育とかしてた日には、どんな大惨事が起こったか想像もしたくない。
…ちょっと勿体無かったとか思ってないんだからね!!
「うふふふ~。ツバサちゃん。エッチねぇ~。」
「だから、人のモノローグ読まないでくださいってば!?」
うかつに変な妄想も挟めないよ!?
結局、幸せオーラを消せば何とかなるって俺の考えは、結果的には正しかったわけだな。しかし、あのルナの魔力やら精霊たちの精霊力やらを、俺一人でよくもまぁかき消せたもんだな?さっきの話を考えると、ルナの放出した魔力以上の精霊力を相殺したってことだよな?素直に考えて、無理じゃね?だって、あの魔力量だよ?あの笑いながら大木をなぎ倒すルナ様だよ?やっと魔力生成がわかってきたばかりの俺に、出来るようなこととは思えないわけだが。
「そこがぁ~ツバサちゃんのぉ~凄いところぉ~なのよ?」
俺の?凄いところ?
って、もうなんか普通に心の中を読まれてるのが当たり前になってるよ!
「そう!ツバサちゃんのぉ~魔力はぁ~とってもぉ~濃ぃ~のよ♪おねぇさん、興奮しちゃうわ!」
そう言いながら、ディーネちゃんは両手で恥ずかしそうに頬を覆って、恍惚とした表情を浮かべる。
その所々、ニアミスしそうな表現やめてくださいよ!
後、興奮すると普通にしゃべれるじゃんよ!!もう普通にしゃべってくださいよ!!
「んふふふ~♪ほんと~ツバサちゃんはぁ~可愛いわねぇ~♪」
スーッと寄って来て俺の額をツンツンするディーネちゃん。
もう、本当に良いように向こうのペースだよ!精霊凄いよ!三十路のニートじゃ太刀打ちできないよ!
俺が、天を仰ぎながらそう絶望していると、
「まぁまぁ~。ツバサちゃんはぁ~それで~いいの!だってね~その純粋なぁ~こころがぁ~魔法の力を~綺麗にしているのよぉ?」
いやいや。俺の心は欲にまみれてますからね?常日頃、煩悩との戦いですからね?これで綺麗とか、世界に対しての反逆ですからね?何より俺が一番俺を信じられないよ!!
「じゃぁ~そういうことにぃ~しておきましょ?ふふふ~。」
ディーネちゃんは含みを持たせてこういうと、
「けどねぇ~?ツバサちゃん?これだけはぁ~覚えておいて?」
ディーネちゃんは急に真剣な、それでいて慈愛に満ちた表情で俺のことを真正面から見つめる。
「魔法はね、あなたの心でその姿を変えるの。その思いが純粋であるほど、イメージが明確であるほど力を強くするの。」
いきなり、今までとは違い淀みなく無くそう語り始める。それは、やっぱりキャラ作ってるじゃない!とか、軽口もいえないような真摯な態度だった。俺も、重要なことなのだと、真摯に受け止める。そんな俺の様子にディーネちゃんは、少し微笑むと更に続ける。
「精霊は、純粋な思いが詰まった魔力を非常に好むの。それは精霊力を得やすいからというのもあるけど、精霊はその思いを受け取る存在でもあるからなの。」
ディーネちゃんは真剣に、その事を伝えてくる。俺は何となく言わんとしていることがわかって来た。
精霊が人の思いを受け取るのなら、逆に人の思いに左右されるのだろう。それは正の感情でも負の感情でも変わらないのではないだろうか?
「ふふふ♪ツバサちゃん、あなたは本当に聡い。正にその通りよ。純粋な正の感情なら私たちにはこの上ないごちそうになるの。けど、もし、大きな負の感情を精霊が受けてしまったら…その精霊は堕ちるわ。」
俺はその言葉を聞いてゴクリと喉を鳴らす。
「人の隣人である精霊は、人に仇をなす存在へと変化してしまうの。それは悪霊だったり、アンデッドだったり、そういうものに変質してしまうの。」
それは…精霊にとっても人間にとっても悲しいことだ。
「そう。精霊たちもそれは望んでいない。けど、これは精霊の持つ業なのよ。そういうものなの。堕ちた精霊は呪詛を吐きながら人間を襲うわ。それは終わらない永劫の苦しみの中に閉じ込められることを意味するの。」
人の業を精霊も背負うのか…。なんともなくやるせない。
「ツバサちゃん。あなた達は大丈夫。あなた達は私の姿を見ても、精霊たちを見ても悪意をぶつけなかった。むしろ、綺麗な気持ちで私たちを満たしてくれた。精霊たちにとって、綺麗な気持ち、正の気持ちはおいしいごちそうなだけではなく、人間と寄り添って生きる意味そのものなのよ。」
そうか。人間も精霊に助けてもらう代わりに、精霊も人間に助けてもらっているんだな。正に共存共栄か。
「そう。あなたは、ルナちゃんを助けたいと必死に魔力を練って思いをぶつけたわ。その純粋な思いに精霊達が、共感して力を貸したの。凄いことなのよ?あれだけの種類、あれだけの数、すべての精霊を満足させて、尚も濃密な思いの乗った魔力が残っている。これは並の思い、並の魔力では到底出来ないことなの。」
ああ、なるほど。色々腑に落ちた。だから、ディーネちゃんはすぐに俺の魔力の味がわかったのか。そして、俺がルナの幸せオーラを消し去ることができたのは、ここに集まった精霊達が力を貸してくれたからなのか。そりゃそうだよなぁ…。俺一人ごときの力じゃどうにもならんよなぁ…あれは…。
少し、しょぼんとしていると、ディーネちゃんはその様子を見てクスクスと笑った。
「胸をはりなさいな、ツバサちゃん。あなたは…ここに居る全ての精霊たちに親愛の情を抱かせているのよ。そんな存在、古今東西どこを探しても見つからないわよ?」
ディーネちゃんに慰められるとか申し訳ないやら恥ずかしいやら…複雑な心境をその胸中で処理しようとした。
「だからぁ~、ツバサちゃん♪おねぇさんとぉ~い・い・こ・と…しましょ?」
ディーネちゃんが、俺のほうを艶っぽい目で見ながら、そんな事を言ってくる。
なんでやねん!なんでいきなり超展開するんだよ!!
つか、いきなり戻られるとペースがとたんに崩れるんでやめてくれませんかね!?
そんな俺の心を知ってるよね?聞こえてるもんね?何で無視しながら見つめてくるの?
…心持ち、ちょっと上目遣い。何その必殺技。まだ、そんなもん、隠し持ってたんですか!!
…ふっ…冷静になれ、俺。あれだろ?どうせ、またこうやって、俺の期待を誘っておいて、落とすって言う、魂胆なんだろう?もう慣れてきたよ!騙されないぞ!い、いいいいい、いいこと…とか、とかぁ!!俺は、な、何も期待しない!!本当だぞ!!
俺は、一瞬脳内がピンク色の妄想に支配されかけるも、根性で平静を取り戻す。
そんな俺を尻目に、ディーネちゃんがススーッと宙をすべる様に俺の横に近づいてくる。
相変わらず、俺はルナを胸に抱きながら座っているので、身動きが取れない。
つーかルナさんや!そろそろ起きないかね?今日2度目の貞操の危機ですよ!!
ディーネちゃんが俺の横で脚を崩して、女の子座り…ちょっと!太もも見えてますから!
いや、なんで裾をたくしあげるのよ!?流石に目が行っちゃうでしょ!!だって、これでも一応男の子(三十路過ぎ)だもん!!
俺が、素敵なふとももに気をとられた一瞬に、ディーネちゃんはそっと俺の耳元に顔を近づけて、
「ツバサちゃん…。わ・た・しとぉ~子作り~しましょ?」
そう、甘く問いかけてきたのだった。
俺はさめざめと泣きながら、ディーネちゃんの様子を伺った。
「いやぁねぇ~。ツバサちゃん♪おねぇさんはぁ~その位のことわぁ~全然~気にしないわよぉ~。」
「気にしてくれ!頼むから!!」
俺はがっくりと肩を落としながらも、ディーネちゃんと論議を続ける。
「まぁ、特に話す必要もないんでしょうけど…、気分的に嫌なので、声を出します。結局、ルナは精霊力のフィードバックでおかしくなったという結論で良いのでしょうかね?」
先ほどの話を総合すれば、ルナの魔力は、幸せ一杯の幸せオーラだったはずだ。それを精霊が食べ、より大きな精霊力としてルナに変換して返したことになる。
「ほんとうに~、ツバサちゃんはぁ~賢いわねぇ~。おねぇさんは、びっくりよ~?いい子いい子~♪」
俺は、ディーナちゃんに頭を(内外共に)蹂躙されつつ、続く説明を待つ。
何も考えない。考えないんだ。
「ツバサちゃんの~言うとおりぃ~幸せって気持ちがぁ~強く返っちゃったのねぇ~。ルナちゃんのぉ~症状はぁ~幸せ酔いってやつねぇ~。羨ましいわぁ~。うふふ。」
幸せ酔いとか、何の冗談だ…。幸せ太りとかの、気分バージョンか?それって、ただのバカップル状態じゃないのか?…ああそうか…そうだな。あの行動はバカップルの行動だな。うん。なまじ語彙が少ない分、行動で拍車がかかったのか…。ある意味まだ良かったのか?あれで性教育とかしてた日には、どんな大惨事が起こったか想像もしたくない。
…ちょっと勿体無かったとか思ってないんだからね!!
「うふふふ~。ツバサちゃん。エッチねぇ~。」
「だから、人のモノローグ読まないでくださいってば!?」
うかつに変な妄想も挟めないよ!?
結局、幸せオーラを消せば何とかなるって俺の考えは、結果的には正しかったわけだな。しかし、あのルナの魔力やら精霊たちの精霊力やらを、俺一人でよくもまぁかき消せたもんだな?さっきの話を考えると、ルナの放出した魔力以上の精霊力を相殺したってことだよな?素直に考えて、無理じゃね?だって、あの魔力量だよ?あの笑いながら大木をなぎ倒すルナ様だよ?やっと魔力生成がわかってきたばかりの俺に、出来るようなこととは思えないわけだが。
「そこがぁ~ツバサちゃんのぉ~凄いところぉ~なのよ?」
俺の?凄いところ?
って、もうなんか普通に心の中を読まれてるのが当たり前になってるよ!
「そう!ツバサちゃんのぉ~魔力はぁ~とってもぉ~濃ぃ~のよ♪おねぇさん、興奮しちゃうわ!」
そう言いながら、ディーネちゃんは両手で恥ずかしそうに頬を覆って、恍惚とした表情を浮かべる。
その所々、ニアミスしそうな表現やめてくださいよ!
後、興奮すると普通にしゃべれるじゃんよ!!もう普通にしゃべってくださいよ!!
「んふふふ~♪ほんと~ツバサちゃんはぁ~可愛いわねぇ~♪」
スーッと寄って来て俺の額をツンツンするディーネちゃん。
もう、本当に良いように向こうのペースだよ!精霊凄いよ!三十路のニートじゃ太刀打ちできないよ!
俺が、天を仰ぎながらそう絶望していると、
「まぁまぁ~。ツバサちゃんはぁ~それで~いいの!だってね~その純粋なぁ~こころがぁ~魔法の力を~綺麗にしているのよぉ?」
いやいや。俺の心は欲にまみれてますからね?常日頃、煩悩との戦いですからね?これで綺麗とか、世界に対しての反逆ですからね?何より俺が一番俺を信じられないよ!!
「じゃぁ~そういうことにぃ~しておきましょ?ふふふ~。」
ディーネちゃんは含みを持たせてこういうと、
「けどねぇ~?ツバサちゃん?これだけはぁ~覚えておいて?」
ディーネちゃんは急に真剣な、それでいて慈愛に満ちた表情で俺のことを真正面から見つめる。
「魔法はね、あなたの心でその姿を変えるの。その思いが純粋であるほど、イメージが明確であるほど力を強くするの。」
いきなり、今までとは違い淀みなく無くそう語り始める。それは、やっぱりキャラ作ってるじゃない!とか、軽口もいえないような真摯な態度だった。俺も、重要なことなのだと、真摯に受け止める。そんな俺の様子にディーネちゃんは、少し微笑むと更に続ける。
「精霊は、純粋な思いが詰まった魔力を非常に好むの。それは精霊力を得やすいからというのもあるけど、精霊はその思いを受け取る存在でもあるからなの。」
ディーネちゃんは真剣に、その事を伝えてくる。俺は何となく言わんとしていることがわかって来た。
精霊が人の思いを受け取るのなら、逆に人の思いに左右されるのだろう。それは正の感情でも負の感情でも変わらないのではないだろうか?
「ふふふ♪ツバサちゃん、あなたは本当に聡い。正にその通りよ。純粋な正の感情なら私たちにはこの上ないごちそうになるの。けど、もし、大きな負の感情を精霊が受けてしまったら…その精霊は堕ちるわ。」
俺はその言葉を聞いてゴクリと喉を鳴らす。
「人の隣人である精霊は、人に仇をなす存在へと変化してしまうの。それは悪霊だったり、アンデッドだったり、そういうものに変質してしまうの。」
それは…精霊にとっても人間にとっても悲しいことだ。
「そう。精霊たちもそれは望んでいない。けど、これは精霊の持つ業なのよ。そういうものなの。堕ちた精霊は呪詛を吐きながら人間を襲うわ。それは終わらない永劫の苦しみの中に閉じ込められることを意味するの。」
人の業を精霊も背負うのか…。なんともなくやるせない。
「ツバサちゃん。あなた達は大丈夫。あなた達は私の姿を見ても、精霊たちを見ても悪意をぶつけなかった。むしろ、綺麗な気持ちで私たちを満たしてくれた。精霊たちにとって、綺麗な気持ち、正の気持ちはおいしいごちそうなだけではなく、人間と寄り添って生きる意味そのものなのよ。」
そうか。人間も精霊に助けてもらう代わりに、精霊も人間に助けてもらっているんだな。正に共存共栄か。
「そう。あなたは、ルナちゃんを助けたいと必死に魔力を練って思いをぶつけたわ。その純粋な思いに精霊達が、共感して力を貸したの。凄いことなのよ?あれだけの種類、あれだけの数、すべての精霊を満足させて、尚も濃密な思いの乗った魔力が残っている。これは並の思い、並の魔力では到底出来ないことなの。」
ああ、なるほど。色々腑に落ちた。だから、ディーネちゃんはすぐに俺の魔力の味がわかったのか。そして、俺がルナの幸せオーラを消し去ることができたのは、ここに集まった精霊達が力を貸してくれたからなのか。そりゃそうだよなぁ…。俺一人ごときの力じゃどうにもならんよなぁ…あれは…。
少し、しょぼんとしていると、ディーネちゃんはその様子を見てクスクスと笑った。
「胸をはりなさいな、ツバサちゃん。あなたは…ここに居る全ての精霊たちに親愛の情を抱かせているのよ。そんな存在、古今東西どこを探しても見つからないわよ?」
ディーネちゃんに慰められるとか申し訳ないやら恥ずかしいやら…複雑な心境をその胸中で処理しようとした。
「だからぁ~、ツバサちゃん♪おねぇさんとぉ~い・い・こ・と…しましょ?」
ディーネちゃんが、俺のほうを艶っぽい目で見ながら、そんな事を言ってくる。
なんでやねん!なんでいきなり超展開するんだよ!!
つか、いきなり戻られるとペースがとたんに崩れるんでやめてくれませんかね!?
そんな俺の心を知ってるよね?聞こえてるもんね?何で無視しながら見つめてくるの?
…心持ち、ちょっと上目遣い。何その必殺技。まだ、そんなもん、隠し持ってたんですか!!
…ふっ…冷静になれ、俺。あれだろ?どうせ、またこうやって、俺の期待を誘っておいて、落とすって言う、魂胆なんだろう?もう慣れてきたよ!騙されないぞ!い、いいいいい、いいこと…とか、とかぁ!!俺は、な、何も期待しない!!本当だぞ!!
俺は、一瞬脳内がピンク色の妄想に支配されかけるも、根性で平静を取り戻す。
そんな俺を尻目に、ディーネちゃんがススーッと宙をすべる様に俺の横に近づいてくる。
相変わらず、俺はルナを胸に抱きながら座っているので、身動きが取れない。
つーかルナさんや!そろそろ起きないかね?今日2度目の貞操の危機ですよ!!
ディーネちゃんが俺の横で脚を崩して、女の子座り…ちょっと!太もも見えてますから!
いや、なんで裾をたくしあげるのよ!?流石に目が行っちゃうでしょ!!だって、これでも一応男の子(三十路過ぎ)だもん!!
俺が、素敵なふとももに気をとられた一瞬に、ディーネちゃんはそっと俺の耳元に顔を近づけて、
「ツバサちゃん…。わ・た・しとぉ~子作り~しましょ?」
そう、甘く問いかけてきたのだった。
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