ILIAD ~幻影の彼方~
118 繋ぎとめた世界で
――セトル。
あたしたちのあの戦いから、一年が経ったわ。
セトルは、結局帰って来なかったよね。でも、あたしは消えちゃったなんて思ってないよ。いつまででも、待ってるつもり。
でも、セトルのおかげで世界は救われたんだよ。
今、あたしたちノルティアンも、アルヴィディアンも、そしてハーフも、みんながみんな力を合わせて頑張ってる。
しぐれはアキナの次期頭領だってさ。フラードルで話した通りだね。
ウェスターは軍には戻ってないみたい。でも、世界復帰には全力で力を貸してるよ。
ノックスは……よくわかんないけど、やっぱり世界を放浪してんでしょ。
正式に王女と認められたシャルンは、ハーフの差別をなくすために世界を奔走中。アランもその手伝いってことでアスカリアにいないのよ。
なんだか知らないけど、アランには軍から声がかかってるみたい。アランの実力があれば将軍になることも夢じゃないってさ。その将軍が二人もいなくなっちゃったから、ウルドさん一人で大変みたい。
あたしは、結局アスカリアで平凡に暮らしてる。みんな頑張ってるのに、って言わないでよ。あたしだってそれなりに頑張ってるんだから。
この前だってミセルが――――。
――。
✝ ✝ ✝
届くことのない手紙を書いていたサニーの下に、ドアを勢いよく開けて父・ルードが、酷く慌てた様子で部屋に入ってきた。
咄嗟に手紙を机の引き出しに隠すサニー。そこには書き溜めた沢山の手紙が詰められていた。
「どうしたの、パパ?」
「サニー! さっきイセ山道で――――」
その後言った父の言葉に、サニーは驚愕し、家を飛び出した。
彼女は走る。
表情に驚きと歓喜の色を全面的に表して、走る。
ただひたすらに、父親の言っていたイセ山道に向かって。
今日は道に迷わない。迷ってなんかいられない。
だって、だってそこには――
父に言われた場所に辿り着いたサニーの前には――何もなかった。
息を切らし、肩で息をする。
――何もない。誰もいない。
もしかしてからかわれたんじゃ……。そう思った。
パパに聞いた話では、この辺りに光の柱が落ちたって……。
何度辺りを見回しても、やはり、何もないし、誰もいない。
「あは、あはは……」
力なく、酷く残念そうに、彼女は笑った。
(そうよね。そんなこと、あるわけないよね)
パパの様子からして、からかいではなかったと思う。だったら、たぶん見間違えだろう。
そう思い、彼女は踵を返した。帰ったらパパを怒鳴りつけてやる。と、その時――
じゃり、と彼女の後方で誰かが立ち止まる音がした。
(誰? まさか……ううん、でも――)
振り向くのが怖い。もし違ってたら。そう思うと、振り向く勇気が湧いてこない。このまま走って逃げてしまおうか、と考えた時、後ろの人物が声を発した。
「――ただいま(・・・・)」
「!?」
彼女の中で恐怖が去り、確信が生まれる。体が震える。瞼が熱くなる。目から液体が漏れる。
――こんな顔は見せられない。
彼女は服の袖で涙を拭き、小さく息をついて自分を落ち着けせ、そして、言う。あの日、あの日に交わした約束。何度も夢に出てきた、その言葉を――
「――おかえり、セトル!」
あたしたちのあの戦いから、一年が経ったわ。
セトルは、結局帰って来なかったよね。でも、あたしは消えちゃったなんて思ってないよ。いつまででも、待ってるつもり。
でも、セトルのおかげで世界は救われたんだよ。
今、あたしたちノルティアンも、アルヴィディアンも、そしてハーフも、みんながみんな力を合わせて頑張ってる。
しぐれはアキナの次期頭領だってさ。フラードルで話した通りだね。
ウェスターは軍には戻ってないみたい。でも、世界復帰には全力で力を貸してるよ。
ノックスは……よくわかんないけど、やっぱり世界を放浪してんでしょ。
正式に王女と認められたシャルンは、ハーフの差別をなくすために世界を奔走中。アランもその手伝いってことでアスカリアにいないのよ。
なんだか知らないけど、アランには軍から声がかかってるみたい。アランの実力があれば将軍になることも夢じゃないってさ。その将軍が二人もいなくなっちゃったから、ウルドさん一人で大変みたい。
あたしは、結局アスカリアで平凡に暮らしてる。みんな頑張ってるのに、って言わないでよ。あたしだってそれなりに頑張ってるんだから。
この前だってミセルが――――。
――。
✝ ✝ ✝
届くことのない手紙を書いていたサニーの下に、ドアを勢いよく開けて父・ルードが、酷く慌てた様子で部屋に入ってきた。
咄嗟に手紙を机の引き出しに隠すサニー。そこには書き溜めた沢山の手紙が詰められていた。
「どうしたの、パパ?」
「サニー! さっきイセ山道で――――」
その後言った父の言葉に、サニーは驚愕し、家を飛び出した。
彼女は走る。
表情に驚きと歓喜の色を全面的に表して、走る。
ただひたすらに、父親の言っていたイセ山道に向かって。
今日は道に迷わない。迷ってなんかいられない。
だって、だってそこには――
父に言われた場所に辿り着いたサニーの前には――何もなかった。
息を切らし、肩で息をする。
――何もない。誰もいない。
もしかしてからかわれたんじゃ……。そう思った。
パパに聞いた話では、この辺りに光の柱が落ちたって……。
何度辺りを見回しても、やはり、何もないし、誰もいない。
「あは、あはは……」
力なく、酷く残念そうに、彼女は笑った。
(そうよね。そんなこと、あるわけないよね)
パパの様子からして、からかいではなかったと思う。だったら、たぶん見間違えだろう。
そう思い、彼女は踵を返した。帰ったらパパを怒鳴りつけてやる。と、その時――
じゃり、と彼女の後方で誰かが立ち止まる音がした。
(誰? まさか……ううん、でも――)
振り向くのが怖い。もし違ってたら。そう思うと、振り向く勇気が湧いてこない。このまま走って逃げてしまおうか、と考えた時、後ろの人物が声を発した。
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彼女は服の袖で涙を拭き、小さく息をついて自分を落ち着けせ、そして、言う。あの日、あの日に交わした約束。何度も夢に出てきた、その言葉を――
「――おかえり、セトル!」
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