ILIAD ~幻影の彼方~
098 改める決意
イクストリームポイント内部。
転移した先の景色は、やはりライズポイントと似ていた。違うことといえば、向こうが黄金色の宇宙だったのに対し、こちらは澄みきった青色ということである。しかし、そんな異界の景色などよりも、セトルたちは目の前の光景に驚愕していた。
「な、なんや……これ……」
大きく目を見開き、しぐれは震える声で呟いた。皆も、それぞれが自分の目を疑っている。彼らが見ているもの、それは――
「巨像の群れ……嘘だろ」
アランの顔が引き攣る。何かの冗談だと思うも、現実にそこには何十体もの超巨大守護機械獣『巨像』が――全て破壊されていた。
「ねえ、何であれが壊れてるのよ。元からかな?」
サニーはもちろん、ここにいる全員が巨像の強さを知っている。蒼霊砲で一度遭遇したとき、全くと言っていいほど歯が立たなかったのを覚えている。一体だけでもどうしようもないそれが、そこに何十体も転がっている。やはりここで何かが起こり、元々こうなっていたのかもしれない。
だが、それをウェスターが否定する。
「いえ、見たところ破壊されたのはつい最近、それも数時間前といったところでしょう。爆発とかではないようですし、切断された痕が残ってますから恐らく――」
「兄さんの仕業だろうね。こんなことできるのは、兄さんしかいない」
セトルもウェスターと同じ考えだった。ここにはワースたちしか入れないのだから、やったとすれば、彼らしかいない。
「これを倒すなんて、あなたの兄さんは化け物かしら?」
「……うん。兄さんの強さは尋常じゃないんだ。正直、僕たちでも勝てるかどうかわからない」
苦微笑して言ったシャルンの言葉をセトルは否定しない。寧ろ肯定して自分の兄の強さを改めて思い知る。暗い顔をしていると、サニーが寄ってきて顔をぐいっと近づける。
「勝つの、絶対に」
「うん、そうだね」
やや弱気になりそうだったセトルを、彼女は一気に立ち直らせた。そんなセトルを見てしぐれが微笑む。
「さ、行こや。もたもたしてると逃げられてまう」
頷き、セトルは前方を向いた。巨像の残骸の先に、永遠に続いていそうな青く透明な床の道が伸びている。この先何がいるかはわからない。もし、まだ動く巨像が襲ってきたら、ワースと会う前に全滅、ということになってしまうかもしれない。そうならないためにも、慎重に急いでセトルたちは進むことにした。
しかし、守護機械獣はいなかった。否、いたのだが、それらは全て破壊されていた。間違いなくワースたちの仕業なのだが、何を思って守護機械獣を一掃したのかわからない。まるで自分たちが辿りつきやすいようにしているみたいである。
そして、何事もなく最深部へ続く転移陣の前に到着した。
「もぬけの殻、だったらどうしましょうねぇ♪」
「ここまで来て何言ってんだ、ウェスター。いてもらわねえと困る」
緊張感のないウェスターの言葉に、アランは嘆息する。
「いるよ」
とセトルが言う。
「前にも言ったけど、僕にはわかる。この先に絶対兄さんがいる」
「流石セトルやな」
褒めるようにしぐれが言うと、セトルは一歩前に出て皆を見回した。
「この先に行ったら、もう引き返せない。兄さんは本当に強い。みんな、無理に戦う必要はないんだ。引き返すなら、今しかない」
それはセトルの最後の確認だった。皆は少しの間沈黙し、そしてウェスターが火口を切る。
「引き返す? ご冗談でしょう。何のために我々はここにいるんですか?」
続いてアランが言う。
「お前一人じゃ絶対に勝てない。でも、みんなで戦えば絶対に勝てる。そうだろ? それに、これは俺たちのための戦いでもあるんだ」
「そう。この戦いが終わらないと、わたしのやりたいことができなくなるから」
と、シャルンも頷いてそう言った。
「うちもアキナ代表として……って言いたいけど、たぶんうちもみんなと同じ気持ちやと思う。セトルを放っておきたくないんや」
「そうよ。セトルって放っといたら一人で戦いそうなんだもん。あたしは、セトルの力になりたい。だから、一緒に戦おうよ」
しぐれとサニーも、それぞれの決心をセトルに告げる。セトルはもう一度皆を見回した。思わず微笑みが浮かぶ。
「わかった。じゃあ、行こう」
転移した先の景色は、やはりライズポイントと似ていた。違うことといえば、向こうが黄金色の宇宙だったのに対し、こちらは澄みきった青色ということである。しかし、そんな異界の景色などよりも、セトルたちは目の前の光景に驚愕していた。
「な、なんや……これ……」
大きく目を見開き、しぐれは震える声で呟いた。皆も、それぞれが自分の目を疑っている。彼らが見ているもの、それは――
「巨像の群れ……嘘だろ」
アランの顔が引き攣る。何かの冗談だと思うも、現実にそこには何十体もの超巨大守護機械獣『巨像』が――全て破壊されていた。
「ねえ、何であれが壊れてるのよ。元からかな?」
サニーはもちろん、ここにいる全員が巨像の強さを知っている。蒼霊砲で一度遭遇したとき、全くと言っていいほど歯が立たなかったのを覚えている。一体だけでもどうしようもないそれが、そこに何十体も転がっている。やはりここで何かが起こり、元々こうなっていたのかもしれない。
だが、それをウェスターが否定する。
「いえ、見たところ破壊されたのはつい最近、それも数時間前といったところでしょう。爆発とかではないようですし、切断された痕が残ってますから恐らく――」
「兄さんの仕業だろうね。こんなことできるのは、兄さんしかいない」
セトルもウェスターと同じ考えだった。ここにはワースたちしか入れないのだから、やったとすれば、彼らしかいない。
「これを倒すなんて、あなたの兄さんは化け物かしら?」
「……うん。兄さんの強さは尋常じゃないんだ。正直、僕たちでも勝てるかどうかわからない」
苦微笑して言ったシャルンの言葉をセトルは否定しない。寧ろ肯定して自分の兄の強さを改めて思い知る。暗い顔をしていると、サニーが寄ってきて顔をぐいっと近づける。
「勝つの、絶対に」
「うん、そうだね」
やや弱気になりそうだったセトルを、彼女は一気に立ち直らせた。そんなセトルを見てしぐれが微笑む。
「さ、行こや。もたもたしてると逃げられてまう」
頷き、セトルは前方を向いた。巨像の残骸の先に、永遠に続いていそうな青く透明な床の道が伸びている。この先何がいるかはわからない。もし、まだ動く巨像が襲ってきたら、ワースと会う前に全滅、ということになってしまうかもしれない。そうならないためにも、慎重に急いでセトルたちは進むことにした。
しかし、守護機械獣はいなかった。否、いたのだが、それらは全て破壊されていた。間違いなくワースたちの仕業なのだが、何を思って守護機械獣を一掃したのかわからない。まるで自分たちが辿りつきやすいようにしているみたいである。
そして、何事もなく最深部へ続く転移陣の前に到着した。
「もぬけの殻、だったらどうしましょうねぇ♪」
「ここまで来て何言ってんだ、ウェスター。いてもらわねえと困る」
緊張感のないウェスターの言葉に、アランは嘆息する。
「いるよ」
とセトルが言う。
「前にも言ったけど、僕にはわかる。この先に絶対兄さんがいる」
「流石セトルやな」
褒めるようにしぐれが言うと、セトルは一歩前に出て皆を見回した。
「この先に行ったら、もう引き返せない。兄さんは本当に強い。みんな、無理に戦う必要はないんだ。引き返すなら、今しかない」
それはセトルの最後の確認だった。皆は少しの間沈黙し、そしてウェスターが火口を切る。
「引き返す? ご冗談でしょう。何のために我々はここにいるんですか?」
続いてアランが言う。
「お前一人じゃ絶対に勝てない。でも、みんなで戦えば絶対に勝てる。そうだろ? それに、これは俺たちのための戦いでもあるんだ」
「そう。この戦いが終わらないと、わたしのやりたいことができなくなるから」
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「そうよ。セトルって放っといたら一人で戦いそうなんだもん。あたしは、セトルの力になりたい。だから、一緒に戦おうよ」
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